王の格
雷が落ちる。
ただの雷ではない。
質量を持つ紫電。
氷が受け止める。
砕ける。
炎が迎撃する。
飲み込まれる。
衝突の余波だけで城壁が崩れる。
兵士たちは動けない。
「近づくな!!」
隊長の叫び。
だが誰も前へ出られない。
本能が拒絶する。
あれは人ではない。
災害だ。
王――
テンペスト・グラード
一歩踏み出す。
それだけで地面から巨大な樹槍が噴き出す。
グレイスが凍結。
セラフィナが焼却。
だが焼いた瞬間、雷が走る。
爆発。
二人が同時に吹き飛ぶ。
「がっ……!」
「くっ……!」
王はまだ構えない。
腕も振らない。
視線すら動かさない。
「遅い」
次の瞬間。
姿が消える。
グレイスの背後。
拳。
氷壁展開。
粉砕。
肋骨に衝撃。
地面に叩きつけられる。
セラフィナが怒りの炎を放つ。
直撃。
だが王の体表で霧散。
紫雷鎧。
傷一つない。
「熱量はある」
王の掌が開く。
超圧縮雷。
至近距離。
セラフィナが防御する。
炎盾。
貫通。
爆発。
地面に転がる。
兵士たちが震える。
「……無理だ」
「勝てる相手じゃない」
王はゆっくり歩く。
二人に向かって。
リシェルが立ち上がる。
震える足。
「……下がって、二人とも……」
水が集まる。
最大出力。
だが。
王が視線を向けただけで、
空気が弾ける。
紫雷の衝撃波。
リシェルに直撃。
「きゃ――」
吹き飛ぶ。
石壁に叩きつけられる。
血が散る。
動かない。
「リシェル!!」
グレイスが叫ぶ。
王は一瞥する。
「弱い者は退場だ」
冷酷。
感情すらない。
兵士たちは畏怖で動けない。
近づけない。
誰も助けに行けない。
戦場の中心に立てるのは、
蒼と紅だけ。
王が二人を見下ろす。
「これが差だ」
雷が落ちる。
樹海が広がる。
地面が裂ける。
氷と炎で応戦。
だが押し込まれる。
出力が違う。
格が違う。
グレイスの第三覚醒が揺らぐ。
セラフィナの炎が不安定になる。
王はまだ本気ではない。
それがわかる。
それが絶望。
「どうした」
王の声は静か。
「共鳴とやらは、その程度か」
二人が膝をつく。
息が荒い。
血が滴る。
周囲は静まり返る。
王が右手を掲げる。
空が割れる。
超広域雷撃が収束。
今度は避けられない。
終わる。
その瞬間。
グレイスの瞳が揺れる。
怒り。
恐怖。
守れなかった記憶。
レオル。
リシェル。
セラフィナ。
「……まだだ」
氷輪が、再び回転を始める。
セラフィナが横を見る。
「グレイス……?」
王がわずかに目を細める。
「ほう」
嵐がさらに強まる。




