暴風、最後の牙
氷と炎が、同時に炸裂した。
共鳴、完全同期。
グレイスの第三覚醒。
セラフィナの第三覚醒復元。
二人の本気。
氷炎極光が一直線に走る。
ゼノへ直撃。
爆発。
風盾を貫通。
胸を裂き、地を抉る。
土煙が舞い上がる。
兵士たちが息を呑む。
「……やったか」
煙が晴れる。
そこに――
ゼノは立っていた。
胸が焼け、血が流れている。
片膝をつきながらも、笑う。
「……これほどとは」
ゆっくりと立ち上がる。
風が揺れる。
だが先ほどの広域制圧ではない。
一点集中。
自らの肉体へ。
残存魔力、全解放。
空気が軋む。
皮膚が裂ける。
「王都はどうでもいい」
視線は二人だけ。
「貴様らを殺す」
姿が消える。
次の瞬間。
グレイスの目前。
“貫通圧”。
氷盾が砕ける。
炎が押し返される。
拳が迫る。
「終わりだ」
「軌道、下がる!!」
リシェルの水が足元を滑らせる。
僅かに逸れる。
致命は外れたが、
衝撃でグレイスが吹き飛ぶ。
セラフィナが庇う。
風が二人をまとめて飲み込もうとする。
押される。
出力は互角。
だがゼノは命を削っている。
長引けば不利。
グレイスが歯を食いしばる。
(ここで終わらせる)
一歩踏み込む。
「セラフィナ!」
「ええ!」
距離ゼロ。
感情一致。
氷輪が再回転。
紅炎が爆ぜる。
今度は拡散しない。
極限一点収束。
リシェルが震える手で水を流す。
「中心、右に歪み!」
氷が固定。
炎が内部で爆ぜる。
氷炎穿孔。
ゼノの胸を、今度こそ完全に貫く。
風が逆流する。
魔力が崩壊する。
膝が折れる。
それでも視線は逸らさない。
「……王」
城壁上へ、視線が向く。
「見ているか」
崩れ落ちる。
暴風、完全停止。
沈黙。
王都防衛戦、勝利。
セラフィナの光が消える。
グレイスの氷輪が消える。
共鳴解除。
リシェルが座り込む。
その時。
城壁最上部。
石塔の影。
紫雷が走る。
テンペスト・グラード
西の王。
最初から最後まで、見ていた。
ゼノの最期も。
蒼と紅の極光も。
三色の融合も。
王は怒らない。
ただ静かに呟く。
「よくやった」
視線はグレイスへ。
「第三覚醒……氷」
そしてセラフィナへ。
「炎は、やはり貴様か」
一歩踏み出す。
石が雷で焦げる。
圧が一瞬だけ戦場に降りる。
グレイスが顔を上げる。
“何か”を感じる。
だが、姿は見えない。
次の瞬間。
王の姿は消えている。
ただ焦げ跡だけが残る。
戦争は終わらない。
次は――王。
嵐が動く。




