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紅炎戦記  作者: えみり


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重なる背中

暴風域の中心。


セラフィナが前に立つ。


グレイスを庇うように。


炎が荒れ狂う。


だが不安定だ。


共鳴は発動している。


けれど感情が揺れている。


怒り。焦り。恐怖。


出力が上下する。


ゼノの風が押し込む。


「未完成」


風刃が炎を裂く。


セラフィナの腕が切れる。


血が落ちる。


それでも退かない。


「下がって、グレイス」


彼女は振り返らない。


守る側に立っている。


グレイスは立ち上がる。


だが身体が重い。


氷の制御が乱れる。


ゼノが両手を広げる。


空気が一点に収束する。


周囲の風が吸い込まれる。


呼吸が苦しい。


巨大な圧縮風球。


先ほどとは比べ物にならない。


「終わらせる」


撃ち出される。


空間が裂ける音。


セラフィナが炎を最大出力で放つ。


押し返せない。


炎が削れる。


後ろにグレイス。


避けられない。


その瞬間。


水の奔流が割り込む。


リシェル。


「二人とも、伏せなさい!!」


巨大な水壁。


風と激突。


水が蒸発し、爆発。


リシェルの身体が押し込まれる。


膝をつく。


それでも両腕を広げる。


「……私は、仲間よ」


風が貫通しかける。


水壁に亀裂。


ゼノがさらに圧を上げる。


「無駄だ」


その姿。


その背中。


血を流しながら立つ。


グレイスの視界が揺れる。


――あの日。


瓦礫の中。


笑っていた少年。


「グレイス、お前と出会えて良かった」


レオルの背中。


守ろうとして、倒れた。


守れなかった。


また、守れないのか?


リシェルが振り返る。


少しだけ笑う。


「……今度は、私の番でしょ」


水壁が砕ける。


風刃が迫る。


その瞬間。


グレイスの中で、何かが切れる。


「やめろ」


低い声。


空気が凍る。


足元から氷が爆発的に広がる。


地面が一瞬で白く染まる。


暴風が凍りつく。


ゼノの目が初めて大きく開く。


「……第三覚醒」


氷が空間を支配する。


圧縮風球が凍結。


砕け散る。


グレイスの瞳が深い蒼に染まる。


背後に巨大な氷輪が展開する。


冷気が戦場を沈黙させる。


「もう、誰も失わない」


その言葉に。


セラフィナの心臓が強く打つ。


彼が立っている。


自分を守ろうと。


誰かを守ろうと。


あの日と同じ。


でも今度は違う。


彼は、強い。


その想いに。


炎が応える。


紅がさらに深くなる。


封じられていた第三覚醒の紋様が浮かび上がる。


共鳴。


完全同期。


炎と氷が絡み合う。


蒸気が天を裂く。


セラフィナの瞳が真紅に輝く。


出力、完全復元。


「一人じゃない」


二人が並ぶ。


距離はゼロ。


感情は揃っている。


不安定さが消える。


ゼノが構え直す。


だが風が乱れている。


支配権が揺らぐ。


氷が風を固定する。


炎が風を焼き切る。


二属性が暴風域を侵食する。


「……なるほど」


ゼノが静かに笑う。


「これが本命か」


氷刃と紅炎が同時に放たれる。


戦場が白と赤に染まる。


三人の魔力が衝突する。


王都の空が震える。


第三覚醒 × 共鳴進化。


完全形態。


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