72. 今日はお仕事の依頼です!
前回のお話 : お母さん……
「ブロックルさーん。こんにちはー。」
ブロックルさんの工房に着いて。
いつもの窓から覗き込んで、今日は声をかけました。
今までは大体ここから見てるだけの方が多くて、話しかけられなければ話さない日もあったくらいでしたが。
今も今でブロックルさんは、キンキンカンカンといい音を響かせながら、綺麗な火花を舞わせているんですけど。
今日はブロックルさんの工房に向かう途中、ナッビさんに会ったので挨拶をしたら、一緒に行きたいって言われたのもあるし……
なにより! ムクとロラのお家がないので! なんとかしなくてはなのです!
だからしかたないのです。
お仕事の……邪魔をしたいわけでは……ないのですっ!
――キンッ! コンッ!
「ああ……嬢ちゃんか。どうした? 珍しい……。」
――キンッ! コンッ!
「えっと、今日はちゃんと用があって……」
――キンッ! コンッ!
「なんだ? フェアランドについてなら話しただろう?」
――キンッ! コンッ!
「えっと、そうじゃなくて、今日は2つ用事があってですね……」
――キンッ! コンッ!
「用事……? 珍しいこともあるもんだ。だが、見ての通りだ。もう少し待ってくれ。」
――キンッ! コンッ!
「はーい! ありがとうございます!」
そうして、しばらくブロックルさんの仕事ぶりを見学しました。
やっぱり綺麗ですね。
――
それからしばらくして。
――ジュッ!!
「……ふん。ま、焼入れまで済んだ。入ってきたらいい。」
「はーい! ありがとうございます!」
ブロックルさんからお許しが出たので、入口に回ります。
「あ、ナッビさん! 入ってもいいって!」
「あ……は、はい……!」
ナッビさんは、道端の木陰に座っていたのですが……
何やら表情が硬いですね? 動きもちょっとカクカクしてます。
――コンコンコン
「おう。入れって言ったんだ。ノックなんかいるか。」
ノックをしたら、中から声がしました。
「お邪魔しまーす!」
「あ……し……失礼いたしますっ!」
ナッビさんと一緒に入ります。
「んん? 見ない顔だな……? アルヴ族か?」
ブロックルさんは、ナッビさんを見ながら、グンッと眉間にシワを寄せていました。
「あ、そうなんですよ。ナッビさんです!」
「はん。そうかい。……で、用事ってのは何だ?」
「えっと、まずひとつは、ナッビさんがブロックルさんに会いたいって、一緒に行きたいって……」
「は……はい! ナッビ・グニパと申します! 以前はアルヴの王家仕えの兵士でしたが、亡命との運びになりましたので……。
異能の事もあり、宝飾品を手掛けようかと思っておりましたところ、まさかドワーフの方がいらっしゃるとお聞きしまして! 是非にお話でもお聞かせ願えないかと思いました次第で……!」
「ほぉん……。ナッビ……グニパか……。なるほど。……まぁそういう話なら、後で聞いてやる。」
ブロックルさんは、腕を組みながら、何だか難しい顔をしていました。でも多分、それはわりといつも通りですね。
「あ……ありがとうございます!」
ナッビさんは、深々と頭を下げていました。聞いてもらえるみたいでよかったですね!
でも……やっぱりなんだか、すごく礼儀正しい人ですね。
王館で働いてたからかなぁ?
そういえば、お母さんもすごく丁寧だもんね。
「で、先に嬢ちゃんのもう一つとやらを聞こうか。」
おっと! どうやら私の番のようです!
「あ、えっと……一昨日、ゲイル部隊の哨戒任務のお手伝いに行ったら……ちょっと色々あってですね? 王様からご褒美をもらえる事になって……。
で、ルクを、リトと合わせて2羽もらったんですけど……お家にお家がなくって……。
で、ブロックルさんにお願い出来ないかなぁーって。」
と、頑張って説明したら、ブロックルさんはとても珍しく、目をまんまるにしていました。
「……ゲイル部隊で、戦功を挙げて、王に褒美を貰った……という事か?」
「あ、はい。そんな感じです……」
「……くっ……はっはっはっ!! そんな事してやがったのか……! くくく……!」
なんだかブロックルさんはまたまた珍しく笑っていました。
何か面白かったかなぁ? 私、真面目にお話したんだけどな……?
「くかか……。まぁそういう話なら、分かった。その口振りなら、ルクはもう連れてきてるのか?」
「あ、はい。そうなんですよー。今、多分お庭で……」
「そうか……。分かった。」
そういうと、ブロックルさんは立ち上がりました。
「すぐに行ってやろう。」
「え? いいんですか?!」
「ああ。これも、そこまで急ぎの仕事じゃあないからな。」
と、ブロックルさんは、さっきまで叩いていた……多分剣? を親指でさしました。
「あ……えっと! 最近狩りとか行ってなくて……。交換品が……。あ! でも多分、ヴィヨンの毛皮ならもうすぐ……」
「ああ……それは大丈夫だ。王に言うからな。」
「え?」
「褒美の一環だとでも言って、素材でも貰うわい。」
ブロックルさんは、そう言ってにんまりしました。
今日は珍しい表情がいっぱい見れましたね!
「……おい、ナッビとやら。」
「は、はい!」
「お前さんも手伝え。」
「は……か……かしこまりました!」
「裏にそれ用の材料がある。行くぞ。」
「は、はい!」
「あ、私も手伝います!」
「あぁん? 嬢ちゃんに運べるか?」
「大丈夫ですよー! こう見えて結構鍛えてるので! こう、ビュッて動いたり出来るんですからね!」
「……そうかい。動きは……まぁ荷物にゃ関係ないが……。まぁ、手伝えるんなら来な。」
「はーい!」
そうして、3人で工房裏の資材小屋に向かいました。
これでムクとロラのお家が出来ますね!
お読みいただけまして、ありがとうございました!
今回のお話はいかがでしたか?
並行連載作品がある都合上、不定期連載となっている現状です。ぜひページ左上にございますブックマーク機能をご活用ください!
また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!
ご意見ご要望もお待ちしておりますので、お気軽にご感想コメントをいただけますと幸いです!




