70. ご褒美……?
前回のお話 : ビュッフェがぁ〜
せっかくノーリ王子から解放されたので、やっと美食天国に行ける! と、張り切っていたのに……
なんだかまた呼び止められてしまいました。どうなっているのでしょう……。
そんな私はちょっとしょんぼりなのです。
あぁー。みんな……待っててねぇ……。
私、また来るからね〜。
うぅ……。
「な、何かご用でしょうか……?」
呼ばれて振り返ると、見知らぬ女性でした。
スヴァルト族らしい、銀髪の銀眼で、整った顔立ちです。
背はそんなに高くなくて、私より少し高いくらいですね。
黒い上品な和風の服装です。
「はい。ユウナ姫様、ラーズ王がお呼びです。」
「え……」
え……えぇ〜〜?! な、なんでぇ〜〜……?!
さっき舞台でお話したよね?! まだ何かあるの〜?!
「ご案内致します。どうぞこちらへ。」
「あ……は、はい。」
上品な感じの女性は、キビキビとした感じです。連絡事項です! みたいな。
これは、断るという選択肢がないということですね……。
しかたなく、私は女性のあとについていきます。
私も立場上、亡命という形でこの国にはお世話になっているので……
しかも、ラーズ王からは働く必要はないと、毎週食料や生活用品を届けてもらってもいます。
だから、王からの呼び出しと言われたら……断れないんですけどね……
それにしたって、別に今じゃなくていいのにー! もー!
あれ……? とりあえずついてきてるのですが……
さっきはラーズ王、舞台奥の椅子に座っていましたが、今は違う場所にいるんですかね?
どうやら違う方向に案内されているみたいです。さっき登った階段ではないですね。
そのまま女性についていくと、パーティー会場から出てしまいました。どこに向かってるんだろ?
会場から出て、木の床の廊下を抜けていくと、鉄の板が貼ってある襖がありました。
以前、謁見の間に行った時にあった感じの襖ですね。
「ラーズ王。ユウナ姫様をお連れいたしました。」
襖の前で女性は中に声を掛けました。
「うむ。入れ。」
「承知いたしました。」
女性はサッと襖を開き、
「どうぞ。」
と、こちらを向きました。
覚悟を決めて、中に入ります。
「……失礼します。」
中に入ると、奥にラーズ王が座っていて、その前にソファがありました。和風の洋室みたいな感じですね。
そして、そのソファに座っていたのは……
「ナッビさん?!」
私の声に振り向き、ナッビさんはペコリと軽く頭を下げていました。
「おお、ユウナ姫よ。来たか。こちらに座るがよい。」
「あ、はい。」
ラーズ王に促され、ナッビさんの隣に座ります。
「ユウナ姫よ。」
「はい。」
ラーズ王は、なんだか真剣な顔をしていました。
「このナッビという者から、1年程前のアルヴ国の内情を聞いた。」
「はい。」
「この者が、どうやら賊どもにいいように使われていたらしいという話も聞いた。」
「はい。」
「捕まえた賊どもからの証言は取れたゆえ、周辺被害についても今後調査はする事になるが……」
「はい。」
「ひとまず、このナッビという者にも亡命という形を取らせようと思うが、どうだ?」
……?
どうだ……? ってなんでしょう……?
…………
「……え?! 私に聞くんですか?」
「ん? ユウナ姫が捕え、ヒルドルに渡したのだろう?」
ラーズ王は、何を言ってるんだ? とでも言いたげな顔をしていました。
それはそうなんですけど……。
それに、私だって亡命だとか、そうしてもらえたほうがいいなぁとは思いますけど……。
えぇ〜……? 普通に答えちゃって大丈夫なのかなぁ……?
ううぅ……
「そ、そうです……けど?」
おそるおそる肯定してみました。
「うむ。なればこそ聞いておるのだ。敗者の生殺与奪権など、勝者の特権であろうが。」
生殺与奪権……? って、生きるか死ぬかを決めるってこと? 私が?!
えぇぇ……? そんなルールなんですか?!
「あ、じゃ……じゃあですね……ナッビさんも亡命させてあげてください! あ! それに! ナッビさんは、職人さんのお仕事とか出来るはずなので!」
「うむ。異能の話であるな。聞いておる。ユウナ姫がそれでよいのであれば、早速そのように取り計らおう。」
そういうと、ラーズ王は2回手を叩きました。
「はっ!」
先程の女性が、スッと現れました。忍者みたいですね。
「この男の処分は決まった。先程の話、聞いておったな? 急ぎ手配せよ。処遇は先の通りに。」
「はっ! かしこまりました。」
「では、ナッビとやら。貴重な話だった。後はゆるりと我が国で達者に暮らすがよい。」
「……! ラーズ王! 感謝の念に絶えません! そしてユウナ様、ありがとうございました……。」
ナッビさんは、少し泣いていました。
きっと、母様のことで大変で、スヴァルト国に来てからの1年間も大変だったんだろうな。
案内の女性に連れられて、ナッビさんは部屋を後にしました。
「して、ユウナ姫よ。」
え……? まだなにか……あるんですか?!
「は……はい。」
「此度の褒美の件だがな。」
ほ……褒美? あ……さっき言ってた……
「何か所望の品はあるか?」
「え……」
えぇぇ?! 欲しいもの? 欲しいもの……欲しいもの……
あ!
「えっとですね! 今、私とリトは、ゲイル部隊の厩舎に居た乗り手のいなかったルクを借りてるんですけど……その子たちが欲しいです! あの、もう名前も付けちゃってて……だから……」
チラッとラーズ王の顔を覗いてみたら、なんだかさっきまでの真剣な顔じゃなくなってて……
ポカンと口を開けていました。
「……ユウナ姫よ。」
「は、はい!」
「そんなものでよいのか?」
「え、は……はい! そんなものというか……とっても懐いてくれてて……!」
「いや……そうではなくな……」
ラーズ王は、なんだかため息混じりでした。
「いいか、ユウナ姫よ。此度の功績とはなんだ? 申してみよ。」
功績……? 頑張ったこと、だよね?
「えっと……ゲイル部隊の人たちを助けました……?」
「なんだ、わかっておるではないか。それがどういう事か、お主は理解しておるか?」
「えっ……?」
「一人前の戦士を育成するのに、どれ程の歳月、労力が掛かるかということだ。お主の力がなければ、何人犠牲が出たかも分からぬ。下手をすれば、ヒルドルくらいしか生き残れぬやも知れなんだ事態であるぞ?」
「は……はぁ。」
「それ程の事なのだ。ルクの1羽や2羽で足る話ではない。どうだ、何かあるか?」
えぇ〜? 強いて言うなら……美食天国に早く戻りたい……かなぁ?
うーん……。どうしよう……。何も思いつかないよー!
「どうした? 何をそんなに悩んでおるか。」
「えっと……と、とりあえずですね、まだせっかくのご馳走があんまり食べれてないので、戻ってもいいですか……?」
おそるおそる聞いてみたのですが……
「な……? くっ……はーっはっはっは! 分かった分かった。今日のところはそれでよい。また考えておけ。 」
なんだか、ラーズ王に大笑いされてしまいました。
「あ、はい。色々ありがとうございます。では、失礼します。」
そうして私は、美食天国に向かって走るのでした。
着物なんで、風にはなれないんですけどね!
お読みいただけまして、ありがとうございました!
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