45. スヴァルトの王様はちょっとおかしいかも知れないです。
前回のお話:やわらか格闘術!
草原の村から移動する事、三日。
私達は無事スヴァルトの王都に着きました。
途中、何度か野生動物に襲われましたが、ゲイル部隊の皆さんは強く、騎乗槍術で軽く撃退していました。槍術、良いですね。私もちょっと覚えたくなりました。
私の武器、ダーインスレイヴは、どんな武器にも変化します。今の所、短剣、剣、弓、連弩くらいしか使ってないので、もったいないですよね。滞在許可が取れたら、ヒルドルさんに頼んでみようかな。
さて、そのスヴァルトの王都ですが。何というか、想像とは大分違っていました。
アルヴの王館は、意識がはっきりしている状態で過ごしたのは僅か一日で、自室からも出なかったので、全然印象には残っていないのですが……。とにかく樹!という記憶だけはあります。
それに対して、スヴァルトの王都は、石造りの城壁に囲まれた小高い山に街が造られているという感じです。
そして、その山頂に聳えるお城はというと……
何故だか和風建築の様な感じでした。
ゲイル隊の皆さんは、洋風の甲冑を着込んでいたのに……
どういう世界観なんでしょう……?
でも、ヒルドルさんの槍は、刃の部分が笹の葉みたいな形をした、和風な感じのデザインだった様に思います。全長は随分短いみたいですが……。
うーん……。たまたまの一致なのかなぁ……?
もしかしたら、私みたいに日本から来た人もいるのかも?とはいえ、そんな人がいたとしても、年代的に考えたら多分400年以上前の人なんでしょうけど……。
400年というと……エルフ的にはそこまで長いという感覚じゃないかも知れないですね。
人間に例えるとして、ゼロを一個とった感じだとすると……40年。人間感覚で40年かぁ。私にしてみたら大分長いなという感じがしますが……。
「ユウナ殿、マリーカ殿。ここが王城だ。」
「ええ。存じております。」
「わぁー!大っきいなぁー!」
下から見上げてた時より、目の前に立つと大きさがはっきり分かりました。堀もあって、橋もあって、何だかカッコいいです。
「そうか。マリーカ殿は、一度来た事があるのだったな。王にも拝謁したのか?」
「いえ。私は従者でしたので。」
「なるほどな。ならば、少しだけ補足しておこう。
貴殿らはもう理解しているだろうが、我らが王は、強き者を好まれる。必要以上に下手に出る必要は無いぞ。特にマリーカ殿は、謙遜が過ぎる。」
そういう作法はちょっと自信が無かったので、それは嬉しい情報です。あと、確かにお母さんは謙遜がすごい気がしていました。ヒルドルさんから見ても、やっぱりそうなんですね。
「では、このまま案内しよう。先んじて隊の者が報せに行っているからな。」
ヒルドルさんの後について、お城の中を進みます。
1階部分は、石垣の石壁が剥き出しの造りで、半分程土間になっていました。奥に幾つか部屋がある様でしたが、中央階段で上に進みます。
階段も廊下も板張で、よく磨かれているようで輝いていました。土足で大丈夫なんですかね……?
「ここで靴を脱いでくれ。脱いだらこの棚に。武器の類いはここだ。」
謁見の間……なんですかね。案内された部屋の前で、靴を脱ぐ事になりました。武器の携帯も出来ないようです。まぁそりゃそうですよね。
そこから先は、廊下も畳になっていました。確かに土足はマズイですね。すぐに傷みそうです。
畳……。何だか懐かしいなぁ……。あんまり時間は経っていないとは思うけど、なんだかそんな感覚になりました。
部屋の前は、扉というよりは、やはりというべきか、襖なんですが……
明らかに金属が貼り付けてあります。襖二枚分の狭い入口です。内側に窪んでいる所を見ると、中からは閉じれるんでしょうね。
「ラーズ様!ゲイル部隊長ヒルドル!アルヴ族の御二方をお連れしました!」
「入れ。」
「はっ!」
ヒルドルさんが襖を開けてくれます。
中に入ると、畳の香り。奥行はかなりあります。
奥の方は、三段階で床が高くなっていました。
スヴァルトの王様は、一番高い所に座っていました。
背もたれ付きの、立派な木製の椅子です。彫刻がオシャレな感じですね。花……かな?
部屋の中央辺りに、畳の色の違う場所がありました。
あの辺に行けばいいのかな?
という事で、部屋の中央で止まります。
「余がスヴァルト王、ラーズ・スヴァルト・アウルヴァングである。発言を許可する。名を名乗るが良い。」
「はい。マリーカ・ミュルクです。」
「ユウナです。」
「ふむ。して、アルヴの者よ。何用で参られたかな?」
ラーズ王は、堂々とした出で立ちで、筋肉質、褐色で銀髪銀眼の、整った顔立ちをしていました。年齢は……分かりません。エルフは本当に分かりません。
それにしても、アルヴ族も皆整った顔立ちをしていましたが、スヴァルト族も、今まで見た所では、やはりそうみたいです。
「はい。旅人証発行のお願いと、スヴァルト国の滞在許可……いえ、亡命を希望いたします。」
「ふむ。ゲイル隊より報告は受けておるが……。
詳しく聞かせよ。」
「はい。では、包み隠さず全てお話いたします。」
そう言ってお母さんは、私の出自、これまでの扱い、新王妃に狙われた事、そしてお母さんの事も、本当に全部を話してしまいました。
「ほう……。そのような事がなぁ……。」
ラーズ王は、興味深そうに頷きながら聞いていました。
「ユウナ姫よ。お主、ヒルドルに土をつけたそうだな。」
「あ、はい。姫……じゃないですけど……。力試しで、まぁ……何とか上手く出来ました。」
「ふむ。寿命の事は、もったいないが……どうだ?我が息子か、余に嫁がぬか。選ばせてやるぞ。」
「え……?普通に嫌です。」
何でそんな話になるんですかね。私は武器術を訓練して、リト達と合流して、フェアランドに行くんです。
大体、私2歳なんですけどね?前世と合わせても15歳ですよ。どんな年の差婚ですか。
「なんだ?不服か?余に嫁げばスヴァルト王妃であるぞ?
それに、我が息子もまだ見てもおらんだろう。見てから決めても遅くはあるまい。」
「私は、村人で旅人になるんです。ヴァルコイネン家とは何の関わりも無いんです。ここに居るマリーカ・ミュルクの娘です。王妃だとかになんて、なりたくありません。」
「ふむ……。そうか。それは残念だな。まぁ良い。
マリーカよ。亡命であったな。そういった者共の住む地区が王都にある。そこで暮らすが良い。」
「はい。御高配ありがとうございます。」
「アルヴ族も憐れよな……。樹のせいで、自由を奪われる。
旅人証は、後日届けさせる。下がってよいぞ。」
「はい。失礼します。」
「失礼します!」
こうして、二度目の引越し先が決まりました。
それにしても、変な王様でしたね。
私に嫁に来いだなんて。絶対嫌に決まってるじゃないですか。何言ってるんでしょうね。
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