貴方と過ごす未来への選択……
久しぶりに訪れたその場所は前回訪れた時と変わりなく、どこまでも続く白い雲の上のような空間に無数の浮遊物が漂っている。
広い広いこの空間を埋め尽くす大小様々な霊魂の上を通り過ぎて私は真っ直ぐに地球からの霊魂が集まる受付へと駆け込んだ。
「はい!次のかた!番号札三十万二千六百番の方!」
「すいません!」
順番を割り込むように受け付けの着物の女性に声を掛ける。
始めてあったときはとても巨大に見えた女性は、今や同じ大きさに見えるから不思議だ。
「はい、輝夜神様貴女がこの輪廻の廟にいらっしゃるとは珍しいですね」
「お仕事の邪魔を申し訳ありませんが、本日亡くなった魂の中に田中悠絆と言う方は居ませんでしたか?
「田中、悠絆さんですね、少々お待ちください……あぁいらっしゃいますね、まだ受付はしておりませんが」
良かった、間に合った。
「もし彼が来たら受付をせずに待たせておいて下さい、それから創造主様に至急お目通りを!」
それから程なくして私は懐かしい部屋へと通された。
部屋を仕切るよう壁のように常に水が瀑布のように流れているが、不思議と水音はない不思議な部屋。
相変わらずキラキラと光を反射して色を変える水壁が美しい。
瀑布は既に上がっておりそこには厚底眼鏡を掛けた締切まじかの漫画家のような女性が机に齧り付いていた。
あれ、創造主様?
初めてお会いした時の美女はどこいった……。
「いらっしゃい、どうしたの? 貴女がここへ来るなんて」
「創造主様にお願いがあってまいりました」
私の言葉に書類から顔を上げると椅子の背もたれにより掛かるように背筋を伸ばし、首を左右に傾けて、凝り固まった筋をパキパキと鳴らしている。
「さて話を聞こうかね」
「神になるには百万回の輪廻転生が必要で間違いありませんか?」
「うむ、そなたのような創造主の直参は持てる権限も多いからね、条件も厳しくせざるをえないんだよ」
「例えば、神ではなく神の使徒に召し上げるのに条件はありますか?」
「使徒……人形を取れるだけの転生を越えていれば可能だよ」
「やった! 創造主様ありがとうございます!」
「ふふふっ、神生は長く大変だ。 良い使徒を捜しなさい、またおいで愛し子よ」
笑顔で見送ってくれた創造主様に暇を告げて受付に戻ると、そこには見覚えのある印を胸元に付けた魂が所在投げに佇んでいた。
「悠絆君、迎えに来たよ」
私は神の知識に従って悠絆君の魂に祝福を乗せて口付けると、魂に光が差し込み悠絆君の姿に変わる。
「輝夜様……」
「一緒に帰ろう? 私達の第四宇宙へ」
使徒となった悠絆君と手を繋ぎ愛する双子達の元へ戻り、悠絆君にカムイとミナを紹介すれば悠絆君は二人の身体を抱きしめた。
それからは家族四人で私が手がけている惑星を回している。
たまに因幡の白兎を連れた天照大神様が惑星を回っては気に入った獣を拾ってきて、惑星間を渡る際に途中で落っことしてきたり、逃げられたり、輪廻の魂を他の星へ転生するように書類にイタズラしたりとまぁアクシデントはあるものの、概ね順調だ。
成長したミナが惑星の一つで出逢った男と恋仲になり妊娠した際には、カムイと悠絆君がキレて危うく星を滅ぼしそうだったが、なんとか乗り越えた。
神の血が薄くなってしまった孫は一緒に暮らすことが出来なかったため、今は男親と暮らしている。
そのうち異世界を繋ぐ扉を造ろう。
人々が自由にそれぞれの世界を行き来出来るように、自分達で界渡りの技術を解明できるようにアチラコチラに知識のかけらを保管しよう。
私達は皆が幸せに過ごす世界をこれからも見守っていく。
完
*****
注意書き
本作品の全ての権利は作者『紅葉くれは』に帰属します。無断転載はおやめ下さい。
魔法の言葉は天安門事件
お読み頂きありがとうございました。