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地球鎮守府  作者: 山内海
番外編
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番外編  魔人相坂のブチキレ・エヴリデイ  第一話 『考え事』




 エレヒ在住の元地球人、相坂あいさか正典まさのりは、怒りの沸点が超低い、みんなのコンビニ『サンキュウ』エレヒ港湾局前店の店長である。

 

 今日も今日とて、

 ブレイン・フラワー・ガードナー、レムル人『シルヴィ・ヴァルカン』と、

 ポンコツロボット三等兵、『ソクラテス』、

 

 シフトが被る三人で、仲良く働いています。

 

 

 ブチキレ魔人相坂。

 さてさて、今日は何にブチ切れる?



 

 

『ウィーン』


「いらっしゃいませー! (にこり) サンキュウにようこそ! (ペコリ)」 


「イランカラプテー! (ビー)産休へようこそ!(ガタン)」



 入店したアプサラ人の客に挨拶する魔人相坂。

 ソクラテスが続いて挨拶をする。

 しかし、彼の挨拶は、笑顔のつもりなのか、バケツ頭の目っぽいところから赤外線ビームを発射し、その後、バクンとものすごい勢いで頭が床に接触するほど折れ曲がるという、かなりおかしな物だった。


「…………ソクラテス……お前クビな。明日から来なくて良い」 

  

「NO! 店長! 改正派遣労働法!」


 相坂は手にしたモップで、二つ折れのソクラテスをバックヤードに押し込もうとする。


「あら〜、だめよ〜、マサさ~ん。コレでも、ソクラッツェヌウスの接客は、他星のお客様には好評なのよ〜」


 戦う二人を尻目に、にこやかな接待で、いま入店したアプサラ人の接客を終えたシルエットは、二人に向き直る。


「アウ! ヴァルカン先輩ティヌス!」

  

 二つ折りから復活したソクラテスは、相坂から逃れるようにシルヴィの後ろに隠れた。 

  

「でもでも〜、目から怪しげな怪光線出したり〜、腰からポッキリ二つ折りになるお辞儀は〜、あびないから止めようね!」


 シルヴィはソクラテスの頭をいい子いい子する。

 

「ううう、ヴァルカン女史!! 優しさがフルメタルボディに染み入ります。蝉の声。それに引き換え、店長と来たら……、ガ、ッ、カ、リ、デ、ス。ワタクシヴァルカン女史の家の子になります!」


 シルヴィの陰からひょっこり頭を出し、その頭を赤色灯のようにクルクル回して、ソクラテスは相坂を威嚇する。


「え〜、なる〜? でもでも〜、私のうちの子って事は〜、ゆくゆくはマサさん家の子にもなるって事で……!!! きゃ〜! 何言わせるのよ〜! ソクラコンティ〜!!」


 シルヴィに引っ叩かれて、ソクラテスの首が曲がりバケツ頭が傾く。


「うん。ソクラテス。お前いまクビ。即刻暗黒宇宙へ還れ。シルヴィは冷凍庫入ってろ」


 相坂は爽やかな笑顔で言い放つ。


「ウヒィー! ファッショなぶる!!」


「大体なあ、なんだあの挨拶は? いつになったら『いらっしゃいませ』が言えるんだ!? 毎回毎回わざとらしく間違えやがって! お前、絶っ対、楽しんでるだろ! 『イランカラプテー』って何語だよ! どこの星の挨拶だ! ボケがぁ!! 大体なぁ、シルヴィが甘やかすからつけあがるんだ。」


「愛情持って育てないとねぇ。ほら、私も〜。こ、こ、子供が欲しいし〜」 


 シルヴィは脳内未来予想図を紐解いているのか、ニヘラニヘラした顔で想像の世界に旅立つ。


「て、店長マスターも、もっと広い心で……みたいな?」


 シルヴィが妄想世界に旅立ち、庇護を失ったことに気付いていないソクラテスは、まだ減らず口を叩く。


「『みたいな?』じゃねーよ! 修理に出してやる。って云うか俺が直してやる! おーいシルヴィ! トンカチ持ってこい!」


「…………」


 シルヴィは上の空だ。


「おい! シルヴィ!」


「…………」

 

「おい!!!」

 

 相坂に肩を掴まれ、耳元で叫ばれ、やっと現実世界に戻って来た。 

 

「!!! あっ、ゴメンナサイね〜。『ちょっと考え事してて聞こえてなかったのよ〜』」


  

  

  

『ブチン』





「シルヴィ。お前今なん云った?」


「え〜?」  


「シルヴィ。ちょっと来い。今何つった?」


「え〜? だから〜、『ちょっと考え事してて〜聞こえなかった』って〜」


「シルヴィ。じゃあ、『考えるの止めてみろ』 ほら。ここで、俺の目の前で、考えるのを止めてみせろ!」


 両肩を掴まれ逃げることができないシルヴィは、目を泳がせながら逃げ場所を探す。


「え? え? え〜っと、あの、あの〜。………う〜ん、………ぷ〜。……」


 目を瞑って深呼吸したり、口をポカーンと開けて放心したりして、シルヴィは必死に何も考えないようにしている。

 

「ぷっ!」


 横で見ていたソクラテスは、シルヴィの百面相に思わず吹き出すが、相坂は笑っていない。


「なあ、シルヴィ。人は考える事を止められないんだ。禅僧だって、考えないように修行するんだ。つまりな、さっきだってお前には俺の声が届いていた。当たり前だ。普通に会話していた時から、位置関係だって周りの音だって変わっていないんだから。『ちょっと考え事してて聞こえてなかったのよ〜』ではない。今お前が証明したように、頭の中は常に考え事を抱えているのだから。だから、『聞こえていたけど返事をするまでも無いと思った』と言うべきなんだ!!」


 片手で肩を抑え、もう片手の人差し指でシルヴィの鼻の頭を突っ突いて、相坂は言い放った。物凄いドヤ顔だ。

 

 

「……………パクッ」


 シルヴィはしばらくされるがままだったが、急に鼻面に突きつけられていた指を咥えた。

 

「わっ!!」


 相坂は慌てて飛び退く。

 

「んも〜。マサさ〜ん。理屈っぽ〜い! ごめんねぇ〜。寂しくなっちゃったんだもんねぇ〜。大丈夫よ〜、マサさんが一番。ほ〜ら、イイコイイコ〜」


 シルヴィは相坂に抱き付き、背伸びして両手で相坂の頭を抱えると、優しく撫でた。  

 

 

「仕事中はくっつくなって言ってるだろう。それから『店長』と呼べ!」


 撫でられながらも相坂は言う。 

 

「今更でしょ〜マサさ〜ん。えへへ〜」


「そうですよ、マ、サ、サー、ン」


 相坂に後ろから抱き付いたソクラテスに相坂は蹴りを入れた。  

 

 みんなのコンビニ『サンキュウ』エレヒ港湾局前店。

 基本的にお客は少ない。

 

  

  

  

   

 

 今日の反省会。 

 

シルヴィ 「マサさんの怒りのポイントは未だにわからないよ〜」


ソクラテス「ワタクシ随分酷いこと言っておりますが、そう云うのは店長、踏みとどまるんですよね。いつも爆発するのはシルヴィ女史の一言」


シルヴィ 「マサさんは〜、いつも私で爆発ヨ!」

 



 

同棲の、

甘い響きに誘われて、

赴く先は血の海か。


次回 地球鎮守府『番外編 魔人相坂のブチキレ・エヴリデイ 第二話 『アザトース・ギル・シルヴィ・ヴァルカン』』


「『女』が『家』に居付いたら、それは『嫁』なんだもん!!」

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