番外編 地球鎮守府兵器論
ナムジンとメイド時代のヤガミとの間に生まれた隠し子と、ナムジンとの会話で、『チキュチン』世界の兵器と戦略の解説を行う予定ですが………。
第一話 エレヒ宇宙工廠にて
エレヒ宇宙工廠。
ここで太陽系の宇宙船の凡そ半分、軍用艦のほぼ全てを製作している。
小型艦は工廠内の巨大な船渠で。大型艦は宇宙空間で建造される。
自動化された工廠内では、現在小型の巡視艇の組み立てが行われており、巨大な機械の腕がうごめき、大きな部品を繋ぎ合わせている。
エレヒ司令官ナムジンは、火星よりの催促の連絡を受け、期日に納品できるか確認するために、指令室から出張ってきた。
「トトしゃま〜! トトしゃま〜!」
作りかけの船を見上げるナムジンの足元に小さな男の子が駆け寄ってくる。
「おお、コトシロ! 来たのか!」
ナムジンは途端に相好を崩し、コトシロと呼ばれた男の子を抱き上げ、グリングリンと頬ずりをした後、更に上まで掲げあげ、肩車をした。
「一人で来たのか! 聡いぞー! わはははははははー」
「トトしゃま〜。バスやって〜」
ナムジンの角を掴んだコトシロは、甘えた声でナムジンにねだる。
「いよぉ〜し! しっかり掴まっておれよ〜! しゅっぱつーしんこー! ぶうぅぅ〜ん! あはははははー!」
ナムジンは高笑いしながら、肩車のまま、走り回ったり、クルクル回ったりしている。
「きゃー!はははははー!」
コトシロは大喜びでナムジンの頭に抱き付く。
「しかし……、『かか様』はどうした? お前を外宮から出して一人にするとは……。外でこんな姿見られでもしたら……」
「うふふふ、だいじょうぶ大丈夫! ……どうしてだ?」
「ん?」
「どうしてだ?」
「謎掛けか? んー、判った! 『39』か『54』と一緒に来たんだろう!」
「ぶうー! ちがいま〜す。それに『39』のおねーちゃんはもういないよ!」
「そうかー! ……じゃあ、なんでだろう? かか様何処かに隠れてるのかな〜。さあ、トトしゃまに答えを教えておくれ」
「今日はね、『ママ』と来たのー!」
キャッキャと笑いながらコトシロは答える。
「え?」
ナムジンの動きがピタリと止まる。
恐るべき勢いでクルクル回り、(角があるので、首だけを回せない)辺りを見渡す。
「お邪魔でしたか? 聖上」
「ひいぃ!」
背後の至近距離でタキリの声がしたので、ナムジンは少女のような悲鳴を上げる。
「あ! ああ! マイハニー! ヒュッ! ヒュ的な午後のひと時を、いかがお過ごしですか?」
ナムジンは、額に玉のような汗を浮かべ、目玉はキョロキョロと助け船を探したが、残念ながら目の前の船は、納期には間に合いそうだが、艤装を済ませていないので、眼前の嫁を撃退することは望めなかった。
「今日はヤガミさん非番で、島へ遊びに行くと申しておりましたので、コトシロのお守りを買って出ました。懐かしいわねぇあなた。……アジスの小さい頃を思い出すわ……」
───ヤガミ……。あの、ど○○れ○○○め! よりによってタキリに頼むとは!
「さあ、コトシロ。トトしゃまから降りなさい。ママ様が抱いてあげますよ」
優しく微笑みながらタキリはコトシロに両手を伸ばす。
「いや! トトしゃまといるの!」
コトシロはナムジンにしがみつく。
「まあまあ!聞き分けのない事…。仕方がありません。ママは先に外宮に戻ります故、トトしゃまと帰ってらっしゃい」
タキリはそう言うと、踵を返し工廠の出口へと向かう。振り返る瞬間、龍をも射殺しかねない、ガスダイナミックレーザーのような視線をナムジンに送った。
「なあ〜にが『ママ』だ……」
去りゆく背中に吐き捨てるようにナムジンは呟く。
「継母故……」
遠くのタキリの背中が、揺らめいたと見えた瞬間、ナムジンの背後にいつの間にか戻って来た。
「ひいぃ!」
背後の至近距離でタキリの声がしたので、ナムジンは再び少女のような悲鳴を上げる。
「ママ……にんじゃ?」
コトシロも慄く。
「忍法ではありません。合気道です。…聖上も、たまには武道など『いつもやっている運動』以外の体の動かし方を試してみてはいかがかしら。……では、失礼」
タキリはお茶目な笑顔で、カーテシーをきめると再び出口へと向かった。
「『縮地』を使う王妃とか、……あり得ん! コトシロを押し付けて行きよって」
懲りもせずナムジンは呟き、後ろを振り返るが、そこには誰もいなかった。




