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地球鎮守府  作者: 山内海
タサリオンの冥王
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第四十五話 透明なレッドカーペット あるいは幕間 主要人物外見紹介

第四十五話 透明なレッドカーペット あるいは幕間 主要人物外見紹介




 星陵高校正門前、そろそろ登校門限も近い8時40分。


 登校組の生徒達が、心臓破りの坂道をヒイヒイ言いながら登ってくる。

 星陵大学付属幼稚園のバスが、ちびっこを満載してゆっくり進んでいくのを、恨めしげに睨み付けながら。


 正門の前にあるロータリーには、正門からまっすぐ延びて心臓破りの坂へと続く道と、方や学生寮や魔獣の森へ、もう片方は星陵大学方面に向かう道が、交差している。


 正門手前には地球人生徒の風紀委員会が整列し、服装検査を行っている。


 星陵高校の制服は男子はいわゆる学ランで、黒いオーソドックスなものである。

 女子はセーラー服でこちらも奇抜さなどはない。


 外星人には一応着ることが出来るのであれば、なるべく着ましょう、くらいの緩い校則がある。

 何せ、体躯体格が千差万別なので、制服もオーダーメイドになる。

 オーダーメイドになると、やはり個々人の趣味趣向が反映された物が出来上がる。


 例えば、星陵高校の悪魔こと『襟堂エリドゥアギラ』の場合。

 一応学生服風のものを着ているが、学ランのボタンは三つしかなく、ズボンの裾はボロボロで、下駄をはいて、しかも毛皮のマントを羽織っている。


 馬にそっくりな『ブーケ人』がセーラー服を無理矢理着て、カッポカッポと歩く様は、動物虐待のようだが、本人達はいたって気に入っているらしい。


 とにかく、かなり自由な外星人の制服が羨ましい地球人生徒は、新生生徒会長『杉田すぎた御統みすまる』が、魔改造ゴスロリセーラー服で登校するようになり、釈然としない羨ましい思いが爆発し、自分達も地味な己の制服を何とかしようとし始めたのだ。


 かくして、学園トップのせいで起こった制服の乱れを、風紀委員会が尻拭いすることになる。


「スカートの丈、スカーフの柄、アクセサリー類…、」


 どんどん拡大解釈される校則。

 次々と編み出される抜け道。

 ますます細かくなるチェック項目。


 風紀委員会が神経をすり減らす日々は続く。

 しかも、その神経を逆撫でする者達が現れた。


 銀河惑星連合大使館のゴツイ車が、学生寮方面から門前のロータリーに侵入し、風紀委員会の立ち並ぶ校門横に、乗り付けた。


 生徒達の視線が集中する。


 

 車の助手席のドアが開き、まず降りてきたのは、シルバーのウルフヘア、レイバンのサングラス、金のピアス、黒尽くめの高級スーツに身を包んだ、キビキビとしたとした身のこなしの男。


 首から下だけを見たならば、要人警護のSPに見えなくもない。

 しかし、如何せん首から上のガラの悪さが際立ち、その筋の人にしか見えない。

 高校の門前に一番居ちゃいけない人である。


 この、若い○くざにうやうやしく手を引かれ、続いて後部座席から降りたのは、直毛白金髪、パリッとアイロンの利いた白いシャツと、腰のラインも生々しい、黒い、いささかスリットの深すぎるタイトスカートに白衣を羽織った、星陵高校外星人保健医(非常勤)ヤシン・ラハム・タキリ。

 成人したレムル人はそれ以降まったく年を取らない。

 威厳を付加しようと人工髭などを付けたり、わざわざ特殊メイクのようにシワなどを書き込んでいる男性レムル人もいるが、女性の場合、幼女、童女、少女と、後はお姉さま位しか居ない。極端に子供が少ないので、お姉さま以外は希である。

 タキリも、実年齢は不明だが、地球人であれば25歳以上には見えない。

 髪の毛がシタテルよりやや白く、背が10センチほど高い、そして胸のサイズはシタテルを大日本帝国海軍『敷島戦艦型』とするならば、タキリのそれは『ドレッドノート級』である。これ以上のサイズアップは青少年の『心のワシントン条約』に抵触する。


 ドレッドノート級に続いて車から降りたのは、前段の比較対象、敷島戦艦型シタテル姫である。

 腰まである直毛金髪で前髪はぱっつん。

 シャンプーCMで、これ見よがしにさらさらヘアーを自慢する女優だって彼女ほど美しい髪はしていない。

 やや青みがかった大きな瞳は、近づいてよく見ると瞳孔が縦長のにゃんこ目である。

 ファンタジーによく出てくるエルフ程ではないが、若干耳が尖っている。但しシタテルの場合は髪で見えない。

 北欧人に近い透き通るような肌をしている。


「…、それでね、バンジィったら、浩平お兄ちゃん見た途端真っ赤っかに、なってね、逃げ出したんだよ、」 


 おしゃべりをしながら、シタテルに続いて車を降りたのは、現生徒会長、『杉田すぎた御統みすまる』(仮)。

 この日から数日後に正式に改名が発表されるので、現時点ではまだヤシン・アンシャール・ミスマルである。

 外見年齢はせいぜい12歳くらい、金髪少女と云えばツインテール。

 と、思いきや、そのツインテールの髪を束にして耳の横でまとめる『上げ美豆良みづら』という、古墳時代から、もしかしたらそれ以前からある、古風を通り越して最先端の髪型をしている。

 尖った耳とややつり目の小悪魔ちゃん。

 最近吹っ切れて、男仕草もなくなった、学園のニューアイドル。

 スカート丈はスカートが重力に逆らって丸く広がるくらい、パンチラ上等の短さ。

 あちこちの端にフリルを付けた、まったくもって実用的ではないセーラー服である。 

 鞄には、ごてごてとにゃんこキーホルダーをこれでもかという量付けまくり、側面には『 I♥浩平』とデカデカと書いてある。


「ギリギリセーフかしらねぇお兄ちゃん、あら!風紀委員会の皆さま、朝からご苦労様ですぅ。ごめんなさいねぇちょっと寝坊しちゃいました。だってぇ、浩平お兄ちゃんったら、起こしてくれないんだもん、」


 風紀委員会の面々は、服装チェックも忘れ呆然と立ち尽くすだけだった。


 そんな、道祖神のようになってしまった風紀委員の面々を申し訳なさげに横目で見つつ、最後に車を降りたのは星陵高校生徒会参議にして、男子生徒の討伐対象序列一位、杉田浩平その人である。


 エレヒに住まう外星人は、校舎屋上のヘリポートに直接シャトルで乗り入れるので、校門は通らない。

 心臓破りの坂道を、やっとのことで登りきったと思ったら、校門で待ち構える風紀委員会に、細かい規則にチマチマ照らし合わせてダメ出しを受けていた地球人生徒達の目の前に、大中小の金髪美女を従えた、冴えない男子生徒が、リムジンから降り立ったのだ。


 これほど神経を逆撫でする事もそうそうあるまい。 


 そんな針のムシロのような状況の対象であるところの浩平は、地球人にしてはやや高めの身長であること以外、取り立てて特徴のない男である。 

 

「じゃ、わたくし職員会議遅刻してますので、ここから全力疾走しますわ」


 そう言って、タキリはバインバインと駆けていった。


「では、浩平さん、ミスマル姫、シタテル姫、あっしらはこれにて失礼しやす。」 


 銀髪の○くざ、ラガシュは深々と挨拶すると、乗ってきたリムジンに再び乗り込んだ。運転手のジンカンも挨拶をする。

 車はロータリーを一周し、もと来た道を帰っていった。


「あのー…、」


 風紀委員は意を決し、校則違反の権化ミスマルに話しかける。


 ちょうどその時、ドシンドシンと地響きと共に、天音とヴリエを肩に乗せたエリドゥがやって来た。


「いやー危うく遅刻するとこだったわね、えりりん」


 上空の風にスカートをたなびかせ、角に掴まり肩に立つ天音。

 ショートカットの髪は、天使の輪がはっきり見えるほど整えられている。

 眉が太く、快活な印象を受ける。

 これでスポーツ少女でなければ詐欺である。

 しかして、運動音痴の彼女は詐欺である。


 美少女と言って差し支えない。

 しかし、彼女の周りの女性達は、プロポーションといい顔立ちといいミス・ギャラクシークラスなので、美しさという点では、数段落ちてしまう。

 親しみやすさというステータスに、価値を見出だしていただけるのであれば、彼女だって十分渡り合えるのだが。


 エリドゥの肩に小鳥のように留まっている、もう一人、レムル人のヴリエっち。

 本名、ルタヴア・ヴリエ・イスケヨリ。

 昨日、突然生徒会室に現れ、猛烈アタックで浩平の愛人の座を勝ち取り、エレヒへの退避命令も、うやむやにしてもらった、強引グガール。

 白紫などという、アニメか関西のオバチャンくらいしかしていない奇抜な髪の色をしたほわほわの天然パーマで、普段はカチューシャを着けている。

 いわゆるジト目がデフォルトで、レムル人には珍しく泣きぼくろがある。

 普通にしてても『眠いの』と聞かれてしまう。

 実際に眠いことが多い。

 

 さて、今回の人物描写も彼で最後。


 星陵高校の悪魔、襟堂エリドゥアギラ


 現在星陵高校に通う高校生としては二番目に大きい。


 ちなみに現在確認できる世界最大の高校生は、魔獣の森に生息する、体高15メートル、体重190トン、マッコウクジラに手足を付け、毛むくじゃらにしたような姿の『ジャバウォック・タイタンパー君』である。


 一位とは大きく水を開けられているが、校舎にギリギリ入れる高校生としてはエリドゥが最大である。

 というか、星陵高校の設計思想は、エリドゥアギラが登校可能である事、というのが出発点になっているとかいないとか。


 身長は4.3メートル。

 角を入れると5メートル以上ある。

 体重1.5トン。

 角のせいで遠目に見ると鹿か山羊のようなシルエットだが、至近距離で観察すると、顔は犬に近い。

 RPGでお馴染みのドラコンにフッサフサの毛を生やしたら、こんな感じになりそうだ。

 手が膝くらいまであり、短足だか普段は二足歩行している。

 言葉はしゃべらず『ぴゃー』とか『りゃー』とか、かわいい声で鳴く。

 但し言葉は理解できるらしい。

 いわゆるチューバッカタイプである。


 外見の説明が長くなってしまったが、登校門限のベルも間も無く鳴る時刻となったので一行は各教室へと足早に消えていった。




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