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地球鎮守府  作者: 山内海
地獄門の変
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第二十四話 帰還

第二十四話 帰還



帰還




 ここは『魔獣の森』。

 星陵学園の広大な敷地の約半分を占めている。

 学園に通う学生や教師の中でも、特に規格外の体躯をもつ外星人や、そもそも地球の環境に適合出来ない体をもつ外星人が生息している。

 地球の環境に適合出来ないのに、どうやって『生息している』かというと、『義体憑依』という、銀河惑星連合(略して『銀連』)ではわりとポピュラーな技術が用いられている。

 人体を模した、『義体』と呼ばれるアンドロイド(機械化されているものが一般的)を、人工天体『エレヒ』や、近傍の星から遠隔操作し、その義体で学校に通うのだ。

 エレヒに滞在して操作を行う場合がほとんどだが、からだの小さい外星人が生命維持装置コミコミで義体に直接乗り込む場合もある。

 魔獣の森の深奥部には義体のコーディネートやメンテナンスを行う施設がある。

 施設には、小型の宇宙港が隣接している。

 この宇宙港に小型のシャトルが到着した。

 星陵高校生徒会会長ヤシン・アンシャール・ミスマル

 星陵高校生徒会副会長ヤシン・キシャール・シタテル

 以上二人のレムル人と、外見的には地球人だが、この『島』では、あまり見かけることのない、カタギではない人達風の出で立ちをした四人の男と、これまた水商売でもされていそうな、ギンギラギンのお姉さんが一人。総勢7人がシャトルを出迎える。

 シャトルのハッチが開き、戦鎧姿のエリドゥ・アギラがステップを降りてくる。

 エリドゥの後ろには、胸元が些か開きすぎなシャツに、腰のラインが生々しく一望できるタイトスカート、その上から白衣をひっかけた姿の、星陵高校外星人校医ヤシン・ラハム・タキリが続く。


「エリドゥ!母上!ご無事の帰着、何よりでございます」


 ミスマルが元気に出迎える。しかし、タキリは鬼の形相でミスマルを睨み付ける。


「アンシャール、…、今は『ミスマル』でしたか。地球防衛の大任、共に果たすことが出来たこと、まずは喜びましょう」


 言葉も声も穏やかで気品あるものだか、怒気溢れるその顔からは、今にも火が吹き出しそうである。

 ミスマルとシタテルの後ろに控える五人の男女は、その迫力に気圧され、思わず後ずさる。


「シタテル嬢さん…、大丈夫っすかね?タキリの姐さん、ありゃ相当オカンムリですぜ」

 

 チンピラのなかでも頭だった一人が、シタテルに声をかける。


「大丈夫です」


 エリドゥと再会の抱擁をしながらシタテルは答える。


「アンシャール…」

「はい」


 母親の怒りの前に、精一杯の作り笑顔も吹き飛び、ミスマルは泣きそうな顔になっている。


「二度です」

「二度、お前は、親の目の前で死にました。それが、どれ程の罪か、お前にはわかりますか?」

「母上…、」

「自分の命を、生きることを、軽々しく扱う者は、他者の命をも同じ秤にかけることになります。その様な志で他者を救うことなど、自己の陶酔でしかないのです」

「は、母上…、」


 ミスマルは言葉を失い、俯き、涙を浮かべる。

 その姿をみたタキリは、今まで必死に取り繕っていた怒りの仮面を維持できなくなり、ミスマルに駆け寄ると上から覆い被さるように抱き締める。


「アンシャール!怖かったでしょう。辛かったでしょう。ごめんなさい」


 二人は抱き合いながらいつまでも泣いていた。


「りゃりゃ、りゃみゃみや」


 そんな親子の姿を横目にエリドゥはチンピラ達に話しかける。


「へい、親分、一足先に来ておりやした」

「みゃみゃみゃみゃ、にゃー、」

「へい、ナムジン兄さんに許しをもらい、カチコミ用の義体にしてもらいやした。あっしら五人、しばらくは、ヤシン一家の警護をさせていただきやす」

「にゃにゃみゃ!」

「へ?あ!あぁ、浩平さんでしたっけ、へい、要人警護っすね。『地球皇帝』ですか、了解しました」

「皇帝!?浩平さんが?」


 シタテルは目を丸くする。


「いやー、例の銀連の査察官の入れ知恵なのか、対外的にはそうしておくようにと、ナムジン兄とうちの親分とで、決めたみたいッス」

「えりりん、本当なの?」


 シタテルは地面に胡座をかいているにも関わらず、シタテルのかなり上の方にあるエリドゥの顔を見上げ尋ねる。


「ぴゃー、」


 申し訳なさそうにエリドゥは答える。


「ラガシュ、浩平さんには…」


 『空間騎士団副長』ラガシュが、エレヒからコントロールしている、チンピラヘッド風の義体に問いかけるシタテル。


「あくまでも、建前ですし、まぁ言わなくてもいいんじゃないッスか?」

「でも、浩平さんが銀連の方達と会話をする時、おかしなことにならないかしら?」

「銀連の方々にはバレバレっすからねぇ、いまさらとりつくろっても……。それにしても、シタテル嬢さんも、最近大将の呼び名は『えりりん』ですかい!天音姐さんのマブダチっすもんねえ、あっしらも、すっかり、あの姐さんに惚れ込んじまって、地上勤務も、天音姐さん一目見たさで引き受けたようなもんスよ」

「びゃびゃ!」

「へ?姐さんには近づくな?へい、心得ておりヤスよ、おい!バンジィ!サイオゥ!ガウマァ!ジンカン!俺はタキリの姐さんと、下エレヒの役所に行ってくるから、大将と、学校の中見回ってこい!」


 ラガシュはタキリをミスマルから引き剥がし、なだめながら地下への入り口に向かっていった。


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