12勇者二人
俺は、アリスに駆け寄る。
アリスは俺を見上げた。
「アリス。大丈夫か?」
「ああ。大丈夫だ」
俺はアリスに手を貸す。
アリスは、その手を取って立ち上がった。
そして、俺をじっと見る。
「アルサトス。やったな」
「ああ」
「リザルトは、戻ってきてくれたのか?」
「……ああ」
「そこにいるのか?」
「ああ。俺の隣にいる」
俺は、横を見る。
リザルトが笑っていた。
アリスも笑顔になる。
そして、俺の肩越しに視線を向けた。
「アリス=ノバンだ。よろしく。リザルト」
「ああ。よろしく。挨拶が遅れてしまったな」
リザルトが言う。
「リザルトが、『よろしく。挨拶が遅れてしまったな』と言っている」
「そうか。リザルト。ルーシーも『よろしく』と言っている」
「ああ。ルーシー。俺たちは似た者同士らしい。よろしくな」
リザルトが言う。
「リザルトが、『ルーシー。俺たちは似た者同士らしい。よろしくな』と言っている」
「そうか」
アリスが微笑む。
「じゃあ、リザルトは、これからもアルサトスのそばにいてくれるのか?」
「もちろんだ。これからは、ずっと一緒だ。ただし――」
リザルトが、俺を見る。
「君たちのお邪魔虫にならないように気を付けよう」
俺は、リザルトを睨む。
「リザルトが、『もちろんだ。これからは、ずっと一緒だ』と言っている」
「おい!」
横で、リザルトが抗議する。
「俺のセリフを端折るな!」
俺は、聞こえないふりをした。
そんな俺を見て、アリスが微笑む。
「そうか。よかったな。アルサトス」
「ああ」
俺も笑った。
俺の隣には、リザルトがいる。
そして、アリスの隣には、ルーシーがいる。
俺たちは――
二人で一人前。
それでいい。
それが、俺たちだ。
◇
その後、俺たちは、町の復旧を手伝った。
けが人の手当て。
瓦礫の撤去。
避難民の世話。
そして――
ドラゴンの解体と素材の回収。
それから一週間。
町が落ち着きを取り戻したのを見計らって、俺たちは、町の皆に見送られながら、サウスザナドを後にした。
俺たちは、再び街道を北へと進んだ。
俺の横には、アリス。
もう片方には、リザルトが歩いている。
そして、アリスの隣には、ルーシーも歩いていることだろう。
四人の旅路だ。
やがて、道は二手に分かれた。
ふと、アリスが足を止めた。
「アルサトス」
「ああ」
「私の役目は終わったと思う。もう、君たちは大丈夫だ」
アリスが、やさしく微笑む。
お別れの時のようだ。
「君を無理やりパーティに誘ってしまって悪かった。ここで、このパーティは解散としよう」
アリスが、寂しそうな顔をする。
ふと、振り向いた。
「ルーシーは、だまっててくれ」
小さな声で、そう言った。
そんなアリスの様子を見て――
「アルサトス」
リザルトが、俺の名を呼んだ。
「ああ。分かっている」
俺は、リザルトに答えた。
その声に、アリスが俺に向き直る。
「アリス」
「?」
「これからも、俺と旅を続けてくれないか?」
少し驚いた表情をするアリスの手を、俺は、そっと取った。
「リザルトは俺の親友だ」
「ああ」
「しかし、アリス。君も、俺の友達になってくれないか」
アリスの頬に、一筋の涙が流れた。
アリスが、ふと後ろを振り向く。
「『わたしは?』と、ルーシーが言っている」
「もちろん、ルーシーもだ」
「それなら、問題はない」
アリスが、俺の手を握り返した。
俺は、笑った。
リザルトも笑っている。
アリスも笑っている。
そして――
きっと、ルーシーも。
俺たちは、再び歩き始めた。
四人で。
同じ道を。
◇
一年後。
王国に、魔王討伐の朗報がもたらされた。
討伐したのは――
戦士と弓の勇者。
二人の勇者だという。
その知らせに、王国中が驚いた。
たった二人だけで、魔王を討伐したというのだ。
魔王討伐には、最低でも四人。
戦士、弓使い、魔法使い、僧侶。
それが、この国の常識だった。
それを、二人で成し遂げた。
やがて、彼らは凱旋してくるだろう。
王は、真っ先に聞こうと思った。
どうやって――
二人だけで、魔王を討伐することができたのか。
(完)




