聞き込みこそ捜査の基本だよな!
◆(レイジ視点)
「——ということで、腹が減っているだろうし、テリムさんの歓迎会(仮)としてご飯を食べようじゃないか!」
会議が終わって早々、所長の一声が部屋に響く。
「え、私の歓迎会?」
会議を一旦終わらせた後の俺たちは食堂に集まっていた。
有無を言わさずに連れてこられ椅子に座らされたシャスティが困惑で固まっている。
「そりゃそうだろ! ちゃんとした会は今は用意出来てねぇけど! お前も仲間だからな! 今度みんな揃った時にどーんとやろうぜ!」
「はしゃぎたいだけでしょまったく……」
「そういう美玲だってこの前のレイジ歓迎会はすっげー楽しんでたろ!」
「うるさい馬鹿陽樹!」
二人がやいやいと言い合う中、シャスティが横で座っている俺に問いかけてきた。
「あ、あの、いつもこんななんですか? なんというか、緩急がすごい気が……」
「まぁな……俺も来た時思ったよ」
いつの間にか二人のやり取りに所長も巻き込まれているようで、歓迎会そっちのけになっている。
「でも俺、この雰囲気が好きなんだ」
シャスティは目を丸くすると、ふっと息を吐いて口元を手で押さえた。
「あ、あはは、なにそれ変なの」
「いつでも楽しい、いい職場……いや、お家みたい」
そう呟いたシャスティの姿からは、初めて見た時の違和感を感じなかった。
「俺たちも仲間として行動するんだし、あんくらいはっちゃけてもいいんじゃね?」
「え、収集つかなくなるでしょ……なりますよ」
「……? いいんだよ。楽しけりゃ! おーい! いいからなんか食べようぜー!」
俺はそう言って三人の元へ駆け寄る。
「……仲間、楽しければ……いい」
小さくシャスティが何かを呟いたようだ。
背中越しのその言葉が、やけに寂しそうに聞こえた。
◆(陽樹視点)
——歓迎会後——
俺の持ってきた地図が役に立った。なんとなーくこれ、どっかで見たことあるなーと思っていたが、そうか!ベルディオの悪魔式!その位置関係?的なのしか覚えてなかったけど、ピンと来た俺の勘は正しかったらしい。これまで、進展と言えるものが無かったから、これは大発見だ!
でも、みんなの言う通り謎がまだまだある。あの後、ラーメン屋のだけ強かった理由というのも分からない、という話が軽くでてきた。進んだはずなんだがな!謎が深まった気がするぞ!
しかし、兎にも角にも調査しなきゃ始まらない。かつきは単独で、レイジは美玲とペアで調査に当たるらしい。俺はシャスティと組むことになった。リエンドの人の弟子?だったらしいし、相当すげーやつなんだろう。とりあえず、挨拶!
「じゃあよろしくな! シャスティ!」
「よろしくお願いします。稲垣さん」
よし、大丈夫そうだな!第一歩は順調だ!
「今日はもう休みだな。明日はあのラーメン屋あたりの、魔法以外の事件を探るからしっかり休んどけよ!」
「刑事事件とかってことですか?」
「おう! もしかしたら魔力の関係ない方法で何か悪さしてるかもしれないからな!」
今回の事件でもし、ベルディオの悪魔式が使われていたら、発動の時以外は魔法も魔術も要らねぇんじゃねぇかってな。
魔石を埋め込む過程がどうか知らないけど、それまでは魔力なしで事件を起こせるかもだし、調べる価値はあるな!
「……なるほど、わかりました。ゆっくり休みます」
俺も今日は寝よう。色んなとこから情報を頂戴してきたからな。さすがに疲れた。
◆
次の日、俺とシャスティは現場周辺で聞き込みを行っていた。
「お姉さん! ちょっと聞きたいことあるんだけど、いいか?」
「あら、お姉さんだなんて、何が知りたいの?」
「最近ここら辺で、変な事件とかなかったか? 失踪とか!」
「変な事件……? 特にないかなー、うーん、ごめんね、思いつかないかも」
「いや、ありがとう! 暑さに気をつけてな! それじゃ!」
このお姉さんも特に知らないか……なんも無いってことか?考えていると横からシャスティがひょっこり出てくる。
「先程の方も特に何も知りませんでしたか……あまり目立った事件はなさそうですかね?」
「それにしても、聞き込みなんてなんか古風ですね。直接警察に聞いたりはしないんですか? 所長さんがなんか知り合いだって聞きましたよ?」
確かにかつきの名前を出せば最近の事件についてなにか聞けるかも……でも、なんとなく実際に近所に住む人への聞き込みの方がいい気がしていた。
「まぁ、それもそうだけどな、現場の声っていうとちがうけど、住んでる人たちから直接聞いたら、何かわかるかも知んねえじゃん?」
「近所のうわさだとか、最近あそこの人見ないなーとかそういう違和感がカギになるかもだろ?」
「そうですか、たしかに、じゃあもっとじゃんじゃん聞いていきましょう!」
「おっしゃ!」
この後、二手に分かれて、聞き込みをしてみたが、俺の方はこれといった情報を得られなかった。困り果てて、コンビニでアイスを買って食べていると、シャスティから連絡が来た。
「いまどこですか? 気になる話を聞いたので共有したくて!」
おぉ!でかした!現在地を聞くと近くにいるというので、好きなアイスを聞いておく、買ってから行こう。
◆
「ほい、アイス。で、何を聞いたんだ?」
「はい! ありがとうございます! さっき例の空き地近くに住んでるっていうおば様に話を伺ったのですが、二丁目の家の旦那様が行方不明だそうで」
アイスを食べながら、シャスティが話し始める。
「行方不明?」
「はい、一か月近く前、飲み会に行ったきり、消息を絶っているらしいです。警察に通報したらしいんですけど、バッグなどの荷物が路地裏に放置されていただけで、他に何も手がかりがないと」
荷物だけ残されているのか、少し怪しいな……
「その路地の場所はわかるか?」
「すいません、そこまでは……」
「いや! 十分だ! かつきに連絡してその行方不明事件について調べよう!」
俺の勘がこれだと叫んでいる!またもや大発見だ!今回はシャスティの手柄だけどな!
◆
かつきとはすぐに連絡がとれた。事情を説明するとすぐに警察に取り次いでくれた。そうして、その行方不明者について調べてみると、
「この路地……残りの点のうちの一個だな……」
ベルディオの悪魔式、その成立に必要な地点のうちの一つに該当していた。しかし、ここではマンイーターを見ていない。
「なにか分かりましたか?」
「うーん、悪魔式成立の残り三地点、そのうちの一つだった」
「大発見じゃないですか! でも、そこでは行方不明になった人の荷物が見つかっただけなんですよね? 自分で大発見って言っちゃいましたけど、ちゃんと関係ありますかね」
シャスティはすこしずつ自信をなくしたのか、シルエットが小さくなっていく。
「そうなんだよな。マンイーターはここでは発見されてない……でもなにか意味があるのは確かだ」
しばらく考えていると、シャスティが何かを思いついたっぽい。頭の上に電球が見えるみたいだ。
「……あ、マンイーターがもし、術者の思うように動かなかったら……って考えたらどうです?」
「……おぉ、なるほど」
そうか!これまで、ラーメン屋の地点としての特異性ばっかり考えてたけど、術者が何がミスしていたとしたら!例えば、固定しておく予定だったマンイーターが、何らかの理由で移動してしまったとか!
もう一度地図を見直すと、路地からラーメン屋までの間に、人から隠れることが出来そうな道や廃墟がある。少しずつ移動して、人に見つからずにラーメン屋に現れるのも不可能じゃない!
「シャスティってめっちゃ頭いいな!」
「いやぁ、まぁね、そんなことないって! …………ないですよ」
ん?なんか今雰囲気が違ったような、なんというか今の頑張り屋さんで謙虚な彼女とは違って、自信たっぷりな感じが……まぁいっか!そんなこと!
「とりあえず調べてからこの情報を報告だ!」




