表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/94

夏の到来

かの有名な詩人の四季の趣を詠った詞の中にも雪陽花という言葉は存在している。


冬の雪



春の花



夏の太陽


これらは最も趣が有る景色として古来より人々に愛でられてきた。その価値観は今も尚受け継がれている。


そして終わりが始まったあの日

66年前の12月4日

雪が降りしきるそんな夜だった


一夜にして都市の交通網は半壊し、経済はストップ。歴史上最大の死者、行方不明者を出した未曾有の大災害


その戦禍は約一年以上続き、突如として終わりを向かえた。


人々はその一年間の事を


「四季」改め


「死季」と呼ぶ



そして今再び、この地で死季の夏が始まろうとしていた。


絶対零度を耐え


戦火の開花を生き抜いた先で


生命は灰燼と化す


雪陽花の刀身は青色へと変化し、持ち手が小刻みに震える。内蔵された魔力がリミットを迎え、俺に解放を懇願する


アルルスカーレットはゲートに向かってひたすらに進み続ける。


この醜い魍魎が願ったのはただ1つ


生を授かることであった


仲間の死、怨み、嘆き、褪せ

これら負のエネルギーによって生まれたアルルスカーレットはその瞬間から生を求め続けた。しかし自分を象るのはみすぼらしい骨のみ。


アルルスカーレットの嘆きは奴自身を焼き付くした。


『死季 夏』


俺は莫大な魔力を懐抱する雪陽花でアルルスカーレットの脊椎を抉る。


その瞬間雪陽花から瑠璃色の火花が散る


炎は猛々しい唸りをあげて燐火のように死の魍魎に群がっていく。


そして瑠璃色の炎はマグマの紅色と混ざり合ってお互いがお互いを焼き尽くさんとしている。


やがて炎が紫へと変わりアルルスカーレットの頭骨を焦がす。


炎の色は温度によって変化していき、赤、黄色、白、青、紫の順番で高温になって行く。

実にその温度は一万度を遥かに上回る。


「イギャァァァアァアアァァ」


軽度のダメージを継続的に与えていたマグマの炎は紫炎となった途端にアルルスカーレットの頭蓋をまるでチョコレートのように溶かす。


アルルスカーレットの悲鳴も頭が完全に溶けきったことで途絶え、俺も奴から飛び降りる。引火したら火傷なんかではすまないだろうな。



『グラ』



アルルスカーレットの灰塵がちゃんと残ってくれるのか不安になったので、炎が奴を溶かしきる前に奴を喰らう。


「それにしてもこいつも優秀だったな………やはり敵に合わせて使う魔操術を変えていくのがベターだな」


今回は物理に強いアルルスカーレットに第一段階を使ったとしてもあまりダメージは期待できなかっただろう。


間接の破壊はできても決定打に欠けていた。今後の課題が見つかったな。まずは自分の筋力強化をしてこの双剣を使いこなせるように成らなくては


「そうだっ!急がねーと!」


こんなところで道草を食っている場合ではないのだ。ゲートは未だ開いたまま。ゲートブレイクしたダンジョンのボスを倒すと強制的にゲートが封鎖されてしまう。


恐らく此方に取り残された場合次に向こうの世界と繋がるのは果てしなく先だろう。


「急げ!急げ!急げ!………あった!!」


アルルスカーレットがゲート方面へ進んでいたおかげですぐにゲートまでたどり着く。そこにはゲートを潜るオーク達の姿が見えた。


「邪魔だどけぇ!」


俺は縮まっていくゲートに身体を捻ってすれすれのところで通過する。そして行き着く暇もなく目の前のオークを雪陽花でなぶる。


首元を後ろからかっ切って不意を付かれた2体のオークが膝から崩れ落ちる。それに驚いたのはまさしく目の前で大剣を構える室伏忠信であった。


「えっ?……綾小路様どうしてこちらに……」


「あ……えーとゲートブレイクの現場に遭遇しまして……」


「あっそうでしたか………ということは………ダンジョンボスを倒してゲートが閉じられたということですか?」


「はい、そうです。ちょうどさっき終わりました。」


「お一人で、ですか?」


「はい」


その時、天井から何かが滴れ落ちて


「ジュッ」


まさか……


「室伏さん!上!」


「大丈夫ですよ」


俺の言葉を遮るように上からゴブリンが室伏目掛けこん棒を振るう。しかし元より気づいていたのか、ノールックで大振りの大剣を天井に突き立てる。


「ギャオォアォ」


ゴブリンの血が室伏の頬を掠める。それでも眉ひとつ動かさずその眼差しを此方へ向ける。


「あなたの等級はE級ですよね」


「そうですね」


「…………」


かなり怪しまれているがこの先に話せるようなことは何もない。


「室伏さん!!加勢に来ま………」


「あぁ、悪い灰崎。もう片付いた」


「そちらの方はどちら様ですか?」


「俺の友達だ」


いつ友達認定されたのかはさておき、大体状況が見えてきた。そして俺の配慮は間違っていなかったようだ。


そもそも俺がこのゲートを見つけたとき、急だったとは言え助けを呼べば済む話だった。


しかし、ハンター統括本部でのゲートブレイク発生事件、そんなことがマスコミにばれた場合その噂は瞬く間にハンター業界に知れ渡る。


最悪の場合、過失を問われるだけで終わらないかもしれない。俺はそこまで考えて今回のソロ攻略を選んだ。


まぁ何より、武器の試し切りとグラによる肉体強化が7割くらいあったが………


「綾小路様、少しお時間よろしいでしょうか………」


「構いませんよ」


あらかた口封じだろう、今回の件を公にしないという。しかしまた金の匂いがするな



次は防具でも買ってみるかぁ…………

瑠璃色は青色で

燐火は言霊みたいな奴です。こちらも青色です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ