攫われた聖女
翌朝の事である。朝起きたグラスはいつものように訪れた人々に奇跡を起こす。
「はい、これで大丈夫ですよ。」
その日は早く終わった。終わったグラスが部屋へと戻ると、そこには公爵がいた。
「うむ!今日は早かったな。」
「あ、はい。何かご用でしょうか?」
「決まっているだろう!遊びに行くぞ!」
「え?!」
こうして、護衛の包帯男と3人で街に出ることになった。リヒトは仕事で忙しいから来れなかった。
「案内頼むぞ!」
「はい。」
街を案内する。と、言ってもグラスもあまり詳しく知っているわけではない。なにしろ自分が生まれる前の世界なのだから。
「あまり詳しくなくてすみません。」
「いや、いい。お前と共に遊べる事が何より嬉しい。」
「……そうですか。」
「うむ!」
しばらく街を見て回ってとある道に出た時だった。
「きゃー!泥棒!!」
ひったくり犯が走ってくる。
「ルーク!」
「はい!」
ルークがそれを難なく捕らえる。
「ありがとうございます。」
「いえ。」
「よくやった。」
「はっ」
「!貴方は、聖女様?!」
それは過去に奇跡を受けにきた患者だったらしい。
「あ、いえ、その。」
「聖女様のお連れの方でしたか!ありがとうございます!」
「あ、はは……」
グラスはなんとか取り繕って騒ぎにならないように務める。だが、そうもいかず、
「聖女様!?」
「聖女様だ!!」
「アルト様!行きましょう!」
「そうだな!」
3人は走って逃げる。路地裏へと逃げ込んだ。
「それにしても慕われているのだな。」
「あ、いえ、そんなことは……」
「謙遜するな。」
「あ、はい。て、きゃ?!」
「グラス?」
アルトとルークが気がつくとグラスの姿は消えていた。
「グラス?」
辺りを探すが見当たらない。
「しまった!ルーク!探せ!」
「しかし、主を置いていくなど……」
「緊急事態だ!」
しばらく2人はグラスを探したがみつからなかった。屋敷に戻る。
「……私のせいだ。」
「主、いえ、俺のせいです。」
「公爵様、帰られましたか!」
そこにリヒトがやって来た。
「すまない、リヒト。お前の主を……」
公爵が謝ろうとするとリヒトが
「ええ。知ってます。郵便受けにこんな物が……」
「手紙?」
リヒトがそれを読み上げる。
「︎︎゛聖女グラスは預かった。返して欲しくば北の森で待って、マリー。︎︎゛」
「!またあの女か!」
「はい。」
「北の森へと急ぐぞ!」




