不治の病
「きゃ……」
すぐに口を男の太い腕で塞がれた。
「静かにしろと言ったはずだ。静かにするか?」
グラスは黙って頷く。男はグラスの首元に剣を突きつけて連れていき、そのまま部屋を出た。
「あの、どこへ?」
「我々の主の元だ。」
「?」
マリーのことだろうか?一瞬、そう思ったが、違う気もした。連れていかれる。王城の外にでる。そこにいたのは公爵だった。
「公爵様?」
それも若い頃の公爵である。ここは過去である。未来に居る人物が居てもおかしくない。ちなみにこの時代にいるのは国王は前国王である。
「お前が、奇跡をおこせる聖女か?」
「は、はい。」
「なら……」
公爵はひざまづいた。
「?!」
「頼む!助けてほしい!」
「!?」
☆☆☆
その頃、リヒトはグラスが心配になったのでグラスの部屋へと向かった。扉をノックする。
「グラス。眠っているか?」
「………」
嫌な予感がした。リヒトは扉を開ける。
「?!」
そこはもぬけの殻だった。リヒトは慌ててグラスを探す。
☆☆☆
「公爵様!頭を上げてください!頼みとはなんでしょうか?!私に出来ることのでしょうか?!」
「お前は奇跡をおこせるのだろう?」
「はい。」
「私の母を救って欲しい。」
「?!」
そうして、グラスは公爵の母の元へと連れて行かれる。そこはスラム街だった。みすぼらしい家の中へと連れていかれる。その女性はベッドに寝ていた。
「母は不治の病なのだ。」
「それならどうしてこんな事を?攫って来ずとも頼まれれば私は……」
「少々手荒な真似をしたことは謝ろう。しかし、こうするしかなかったんだ。」
「?」
「母は既に死人となっているのだからな。」
「?!」
そうえば聞いた事がある。公爵は幼くして母を失ったと。
「ならば、このベッドで眠っていらっしゃるのは一体?」
「公的にはだ。」
「!」
「私の母は身分が低かった。そのため、祖父は母をよく思わなかった。そのために公的に死人にしたのだ。」
「……そんな。」
「気に入らない母をそうやって追い出した。」
「そうだったのですね。」
「それで、母を、治す事はできるのか?」
グラスは公爵の母を見てみる。
「……尽力は尽くさせていただきます。」
そういって公爵の母を治そうと光を手から出す。しばらくして女性が、目覚めた。
「……あ、アルトなの?」
「!母様。」
「ここには来てはいけないと言ったはずです。ゴホゴホ。」
「医者を、いや、聖女を連れてきた。」
「……無駄です。私の病は治らない。」
「そんなことは!」
「ええ、治りません。」
「?!なん、だと?!」
公爵はグラスの言葉に、絶句した。そして、剣をグラスの首元に添える。
「尽力をつくすと言ったはずだ!」
「ええ、ですから、病は気からです。お母様がそのようでは治るものも治りません!!」
「「!」」
グラスは更に力を使う。蒼い光が、公爵の母を包み込んだ。
「母様、どうですか?少しは楽になりましたか?」
「ええ、少しだけ……ゴホゴホ!」
「母様!」
「はあはあ……」
グラスは力の限りをつくす。しかし、それとは裏腹に母は良くならない。
「貴様、もし、母様になにかあれば貴様を殺す!」
「アルト……私のことはもう……」
「いやだ!母様!!」
「諦めないで!!」
グラスはそう語りかける。そうして、力の限りを使い尽くした。
「はあはあ……」
グラスは一気に脱力する。腕にも足にも力が入らなかった。
「母様!」
公爵の母親も動かない。
「嘘だ!貴様!母様に何をした!?」
グラスは公爵に蹴飛ばされる。
「死刑だ!処刑する!!」
公爵はそう無慈悲な決断をした。




