魔狼の苦悩、胃が痛い件
『魔狼の苦悩:胃が痛い件について』
魔狼は元々、森の中で生きる“捕食者側”だった。
獲物を狩り、縄張りを守り、群れを率いる。 シンプルで、分かりやすい世界。
――あの商人少女に出会うまでは。
■ 第1段階:契約という謎文化
最初の異変はこうだった。
「護衛、お願いできます?」
魔狼は普通に思った。
(護衛?……まぁ、狩りの延長だな)
だが次の瞬間。
「じゃあ契約書こちらです。月額制で」
「月額制!?」
魔狼、生まれて初めて“紙で縛られる”。
■ 第2段階:仕事が増えるたびに文明が進む
気づけばこうなっていた。
・輸送護衛
・倉庫警備
・取引監視
・ついでに治安維持
魔狼視点:
(俺、森の頂点捕食者だったはずなんだが?)
人間視点:
「有能な警備会社」
■ 第3段階:周囲が勝手に格上げしていく
ドラゴンが来た。
リッチが倉庫に住み始めた。
ゴブリンが経理を覚えた。
魔狼の感想:
「組織じゃなくて国家では?」
しかも中心は例の商人少女。
(なんでこの人、全員雇ってるんだ……?)
■ 第4段階:ギルド案件になる
ギルドから呼び出し。
「魔王軍の動向について説明を」
魔狼:
「魔王軍じゃない」
「では何だ」
「……物流ネットワークです」
沈黙。
胃がキュッとなる。
■ 第5段階:最悪の誤解
勇者パーティと遭遇。
勇者:
「魔王の配下か!」
魔狼:
「違う、契約社員だ」
勇者:
「もっと怖いわ!!」
魔狼、頭を抱える。
■ 第6段階:胃痛の本質
魔狼の独白:
(俺はただの護衛だ) (なのに世界規模の経済圏の“管理職扱い”になっている) (そして責任だけ増えていく)
そして最大の問題。
「給料交渉する相手が、あの商人少女しかいない」
逃げ場、なし。
■ 現在
魔狼の1日:
・ドラゴンの遅刻対応
・ギルドの誤解説明
・魔物社員のクレーム処理
・商人少女の「新商品できましたー」報告
魔狼の結論:
「俺、森に帰りたい」
でも帰れない。
なぜなら森もすでに“商圏に組み込まれている”。
■ ラスト一言
魔狼は空を見上げて呟く。
「……あの人、魔王じゃないって言うけど」
「魔王より胃に悪い存在だと思う」




