2話・双子は仲が悪い
少し憂鬱な気分になりながら隣をみた。そこには先程居なかったこれまた美青年がいる。
攻略キャラ1人目であるルイ・クロリア。赤髪に緑の瞳、身長は大きく光と炎を操る正教会の司祭の1人。ちなみに俺の弟子となったのは2人目の攻略キャラであり、このルイと双子の兄ルカ・クロリア。
唯一違うのは瞳の色が赤色であり、闇と炎の魔法を操る。ちなみにこの2人の仲はとてつもなく悪い。
「それでは聖女様、僕と共にバカの元へ向かいましょうか」
「悪いな、忙しい時に。もしあれなら私一人でもいけるぞ。ルイ、お前はルカと仲が悪いと聞いている。会いたくないだろ」
「いえ、大丈夫です。それに僕は聖女様と居られるだけで幸せなのですから」
俺の手を優しく引き、彼はどこか嬉しそうに、でも執着しているかのように思わせる声。
ルカが聖女である俺を崇拝するように、双子の弟であるルイは大司祭であるガイアと聖女である俺に執着している。どうやら昔助けてやったみたいだがぶっちゃけなにも覚えてない。
「聖女様を歩かせたくありませんので僕の魔法で送りますね」
ルイは俺を引き寄せ胸に抱きつかせると両手を広げる。
『飛べ』
その瞬間、俺とルイは炎の渦に体を包み込まれる。
出たよこの浮遊感。ふわってしてなんだかエレベーターに乗ってる気分だ。
「着きましたよ、聖女様。おい愚兄、貴様なんぞの為に我ら愛しい愛しい聖女様を連れてきてやったぞ。有難く思うならその命を持って死ね」
「は?殺すぞ愚弟が。ソラ様、そんな輩に抱きついては貴方様が穢れてしまいます。早く僕の元へ」
着くなり早々に酷い口喧嘩が始まる。ガイアのやつ、これを見通してわざとルカのところにルイを送り付けたな。
瞳が違うだけの同じ顔に同じ表情に挟まれ生きた心地が全くしない。現代っ子なめんなよ、まじで内心びくびくしてんだからないつも。
「2人とも辞めろ。言い合いするなら私は帰る」
「「帰らないでください!!!今仲直りしました!」」
顔は引き攣っているが、肩を組みながら息ぴったりで同じ言葉を言う2人につい笑みが零れる。心底嫌そうな顔しながらプルプル震える手で肩を組む2人に、真顔でおれるやつは早々居ないだろ。
すると2人がふと真顔でこちらを見つめていることに気がついた。その顔は驚いて、でもどこか嬉しそうな、愛おしそうな表情をしている。
「僕、ソラ様の笑顔初めて見ました」
「僕も初めて聖女様の笑顔を見ました。とても美しく慈愛に満ちていて、心の底から愛おしさを感じる」
「え、、がお、、?私はいま笑ったのか?」
その問いに2人は不思議な表情をしながら頷く。
辛い時も悲しい時も、嬉しい時も幸せな時も、どんな時であろうと表情を崩せないキャラだったはず。唯一崩れたのは主人公と戦い浄化魔法をかけられた時か、主人公がこちら側に染まりつつあるときだけ。
まさか、な。ガイアがこちら側にきたらそれこそHappyENDを迎えてしまうでは無いか。
「ルカ、お前はガイアの所に戻れ。私とルイの闇魔法はお前には耐えれない」
「かしこまりました。愚兄、聖女様に無礼を働くなよ」
ルカを睨んだと思ったらこちらに飛び切りの笑顔を向けた瞬間、ルイの体は炎に包まれて消えた。
ガイアの元に行ったのであろう。
全く、双子だというのにこの2人は仲が悪い。俺とガイアみたいに闇と光の両方を操ることが出来たのなら、きっとここまで仲は悪くならなかった筈だ。
正教会にとって闇魔法所持者は処分の対象。持っているだけで大罪人として咎を背負わされる。
闇魔法所持者だとしても処刑の対象外になり得るのは、光魔法も操れる者、そしてその光魔法と闇魔法所持者の弟子になったもの。
ただこの場合、弟子になって処刑を免れたとしても正教会の司祭たちは忌み嫌い殺そうとする。そんな理不尽からルイを守りたくて弟子にしたのだが、まさかその双子の弟がその正教会の司祭だとは最初知らなかった。
「愚弟がご無礼を働き申し訳ございません。それでソラ様、僕になにか御用ですか?」
そういえば何も伝えずにここに来た事を忘れていた。それなのに普通に受け入れてくれるのは少し嬉しい。
へにょって言葉が似合いそうな表情をしているルカ。眉を下げ捨て犬みたいな顔してるくせにぎこちない笑顔。
そんなルカの頬にを両手で挟む。
「師匠が弟子に会いに来た。あ、、もしかして迷惑だったか?」
「滅相もありません!!!!そろそろ僕の方からソラ様に会いに行こうと思っていた所です!!」
「いや、それはやめて。ルカが来るだけで正教会の全員が戦闘態勢に入るし、私はお前の師匠なのだから家族だろうと全員ねじ伏せなければならない。それは勘弁してほしい」
ガイア以外は俺にとって取るに足らない存在だが、ガイアは別だ。アイツは俺よりも強い。出来れば敵にしたくはないが、ルカは俺の弟子だから守る義務がある。
さっきの顔と違い、どこかキラキラして嬉しそうにニマニマと笑ってる。
「僕やっぱり、ソラ様のこと大好きだし愛してるし誰にも渡したくないです!」
見えないしっぽをフリフリしながら、ルカはまた嬉しそうに笑った。
純愛ならいいけどヤンデレにはならないでくれ。切実にそう思った瞬間だった―――。




