12.舞踏会に行きましょう
2020.10.03.誤字脱字を修正しました。内容は変わっていないので、よろしくお願いします。
あの作戦会議からしばらくは何事もなく過ぎたが、そんな私の所に何通か舞踏会の招待状が届いた。
私も来春から学園に通う身なので、そろそろ舞踏会で社交に慣れておかなくてはいけない。だいたい皆は去年あたりから舞踏会などに出席して、社交に慣れる準備をしていたようだが、以前の私は身体が弱くすぐ疲れて具合が悪くなるのと、人見知りもあって、王宮主催の舞踏会以外は出席していなかった。
しかし、私もそろそろ舞踏会で社交慣れしておかないとマズイだろう。
私は、まずはエミリーが出席する舞踏会に一緒に行こうと考えていた。
エミリーが行くということは、エスコートはお兄様だ。それに双子のカールも出席するはずだ。オスカー様はわからないが、ほとんど舞踏会に出た事がない私にとって、お兄様たちが居る方が心強い。
そんなことを考えていると、エミリーとカールがやってきて、
「一緒に舞踏会に行きましょう」
と私を誘ってくれた。
「レイ様の都合を聞かないといけないから、レイ様が学園から帰るまで待たせてね」
とエミリーに言われ、そうだ私もエドワード殿下に都合を聞かないとマズイよな、と思いながら、
「そういえば、私が行かない舞踏会ではエドワード様はどうしていたのかしら?誰か他のご令嬢をエスコートしていたの?」
と不思議に思い、エミリーに聞いてみた。
「そうね、今まではエドワード様もあまり舞踏会には出席されてなかったし、出席する時は誰もエスコートされてなかったわ」
とエミリーが言うので、エドワード殿下も私と一緒で、あまり舞踏会が好きではないのだなと思ったのだった。
エミリーのところもだいたい私と同じ所から招待状が来ている。
二人でどこの舞踏会に出ようかと話をし、いくつか選んでおいた。
夕方になりお兄様がお帰りになって、私とエミリーとカールが居る応接室にやって来たが、オスカー様と、なんとエドワード殿下も一緒にやってきたので驚いてしまった。
私は思わず、
「エドワード様も一緒にいらしたのですね」
と言うと、
「来てはいけなかったか?」
とちょっとムッとして睨まれたので、
「いえいえ、ちょっとびっくりしただけですわ。私もエドワード様に、舞踏会に一緒に出席していただけるかお聞きしたかったので、ちょうどよかったですわ」
と言ってにっこり笑顔を向けると、
「そうか」
と素っ気なく言われ、目を逸らされたので、
(あら?ひょっとして照れてる?)
と思い、ちょっとからかってみたくなって、
「エドワード様、怒っていらっしゃるのですか?」
と上目づかいに覗きこんで聞いてみると、
「うっ…、怒っては、いないから、大丈夫だ…」
と顔を赤くしてしどろもどろになって焦っている。
(うふふ、あ〜、なんか可愛い!ギュッとしたい〜)
そう思った私は、さすがにみんなの前で殿下に抱きつく訳にもいかないので、クルっと後ろを向いてエミリーに抱きついたのだった。
「ちょっとシルフィ? どうしたの?」
とびっくりしてエミリーが私に言うので、エミリーにしか聞こえないように、
「エドワード様、可愛すぎてギュッてしたかったけど、さすがに出来ないから、代わりにエミリーにギュッてしたのよ」
と抱きつきながら私が言うと、ちょっと呆れた声で、
「別にエドワード様にギュッとすればいいじゃない。エドワード様も喜ぶんじゃない?」
と私にだけ聞こえる声でそう言ったが、
「だって、さすがにみんなの前では恥ずかしいもの」
とエミリーから腕を離し、小声でそう言うと、
「じゃ、二人きりの時にギュッてしてあげなさい」
とエミリーに言われ、二人でヒソヒソ話していたら、
「なんだ?いきなり二人でコソコソと。俺たちには言えないことか?」
とエドワード殿下が、またちょっとムッとして私達に言うので、
「女の子には、秘密にしなければいけないことが、たくさんあるのですわ」
「これは男子禁制の女子トークです」
と言うと、
「なんだ、それは?」
とちょっと呆れた顔をされたので、エドワード殿下の耳元で、
「今度二人きりの時に教えてさしあげますわ」
と囁くと、ビクっとして私の顔を見て、また赤くなるのだった。
私とエミリーが選んだ舞踏会には、お兄様とエドワード殿下がエスコートしてくださることになり、オスカー様とカールも出席することになった。
まずはアンダーソン家の親戚筋のゴードン伯爵家の舞踏会だ。
ここの舞踏会はそれほど規模も大きくないらしく、私が出席するには丁度いいだろうということだった。
エドワード殿下もここの舞踏会には初めて出席するらしい。
「エディが来るなんて、ゴードン家はびっくりするだろうな」
オスカー様はそう言ってエドワード殿下を見るが、
「シルフィが行くのだから、俺が行くのは当たり前だろう。シルフィを一人には出来ないからな」
そう言って私を見るので、
「ありがとうございます。よろしくお願いいたしますわ」
と、とびきりの笑顔を見せると、また赤くなってパッと目を逸らすのだった。
(うわ〜、なんだ、この純情少年は!)
私はそんな殿下が無性に可愛くて、頭をクシャクシャっと撫でまわしたくなるのをグッと堪えるのだった。
最近のシルフィは、よく俺に話しかけてくるし、笑顔を見せてくれて、とても可愛らしくなったとエドワードは思う。
以前は気軽に話しかけたり、近づいたりすると、怖がられるのではないかと迂闊に近づけなかった。
今日もシルフィの笑顔にドキッとさせられて目を逸らせば、さらに可愛い顔で上目づかいに覗きこんでくるものだから、焦ってしどろもどろになってしまった。
そう思っていると、いきなり後ろを向いてエミリーに抱きつき、二人でヒソヒソ話している。
絶対、俺のことを話しているだろうと思い、
「いきなりコソコソとなんなのだ?」
とちょっとムッとして言うと、
「男子禁制の女子トークです」
なんて、訳のわからないことを言うから、
「なんだ、それは?」
と呆れて言うと、今度は俺の耳元で
「今度二人きりの時に教えて差し上げますわ」
と囁かれ、ドギマギしてしまう。
耳元で囁かれるのは、こんなにもドキドキして、心臓をギュッと掴まれたようになるのかとびっくりして、また顔が赤くなるのがわかった。
舞踏会のエスコートも、シルフィが出席するなら、どんな小さなものでも俺がエスコートするつもりでいたので、そう言うと、
「ありがとうございます」
と、また笑顔を真っ直ぐに向けてくるので、あまりの可愛さに顔を背けてしまうのだった。
読んでいただいて、ありがとうございます。