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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第一章 暗殺編
13/85

13.シルフィに向けられた悪意

 舞踏会当日、エドワード殿下が私を迎えに来てくれた。

 いつもは白を基調(きちょう)としたタキシードだが、今日はダークブルーが基調(きちょう)のシックな装いだ。(めずら)しいなと思いながら、そういえば私も今日はダークブルーのドレスだ。今までは、わりとヒラヒラのかわいい系のロリータ風ドレスだったが、さすがに28歳の記憶を思い出してからは、ロリータ風は遠慮(えんりょ)させてもらっている。それに、筋トレや剣術で(きた)えていたら、今までのドレスが入らなくなってしまったのだ…。入らなくなったといっても、ムキムキになったわけではなく、適度に筋肉が付いて、しなやかさが増した感じだ。以前が華奢(きゃしゃ)すぎたので、普通になったという感じだが、さすがに前のドレスはちょっとキツイ。なので、ドレスも普段着も作り直すことになったので、なるべくシンプルなデザインにしてもらった。

「ダークブルーのタキシードなんて(めずら)しいですわね。まるで(そろ)えたようになってしまいましたわ」

 と私が言うと、

「ああ、別にかまわないだろう。たまたまだ」

 とエドワード殿下は素っ気なくそう言うと、窓の方を向いてしまった。

 本当は、エドワードがレイモンドに聞いて(そろ)えたのだが、そのことはシルフィは知らないのであった。


 そうこうしているうちにゴードン(てい)に着いて馬車を降りると、ゴードン家御一同様が出迎えてくれていてびっくりした。

 まあ、王族が来るとなればそうなるのか。

 私は婚約者ではあるが、まだ王族ではない。なんだか居心地の悪さを感じて、今度からは別々に来た方がいいかしら、などと考えていると、私の考えを読んだように、

「いずれは王族になるのだから()れることだな」

 と私にだけ聞こえる声で言われた。だが婚姻(こんいん)を結ぶまでにはまだ何年かある。まず学園を卒業しなければならないのだから、早くても三年以上はかかる。

(婚約者って立場はどう振る舞えばいいのかしら?なんだか悩んじゃうな…)

 いままであまり人に関わって来なかった私は、戸惑(とまど)ってしまうのだった。

 


 エドワード殿下のエスコートで会場に入れば、ここぞとばかりに挨拶に来る人が殺到(さっとう)した。普段は、エドワード殿下に直接挨拶できる機会のない人たちもいるのでみな必死だ。

 殿下は相変わらず、氷のような目で皆を見て挨拶をする。私は微笑みながら挨拶をしたが、ずっと笑顔でいると顔が引きつりそうになった。

 ほぼ挨拶も終わり、やっと落ち着いたかとホッとしていると、

「エドワード様、いつも学園ではお会いしていますけど、舞踏会でお会いするのはお久しぶりですわね」

 そう言って、クルクルの巻き髪でヒラヒラドレスの、ちょっと気合いの入った派手なお嬢様が殿下に挨拶にやってきた。

 そのお嬢様は私をジッと鋭い視線で(にら)んできた。

(うわ〜、これは完全に殿下に想いを寄せているくちだな。私を見る視線が痛いわ)

 そう思っていると、

「キャシー・リード嬢、そうだな、舞踏会で会うのは久しぶりだな」

 とエドワード殿下が冷たく言うが、キャシー嬢は気にする様子もなく、私の存在などないもののように、

(のち)ほど私とダンスを踊っていただけますか?」

 と殿下にダンスを申し込んできた。

(あ〜、これはまた最初の曲こそ私と踊るが、その後はお嬢様たちのお相手で忙しくて、私と一緒にいる時間はほとんどないな)

 と心の中でため息をついたが、その時エドワード殿下が思わぬことを言い出した。

「キャシー、今日はシルフィアナをエスコートしなければならないので、他の誰とも踊るつもりはない」

 その言葉にキャシー嬢と私が同時に(おどろ)いた。

 キャシー嬢はまた私を(にら)んで、

「どうしてですか?いつもは踊ってくださるのに…」

 そう悔しそうに言うと

「今日はシルフィのエスコート役として来ているからな。シルフィの(そば)から離れるつもりはない」

 と、シレっと言うので、私は思わずポカーンと口を開けたまま殿下の方を見てしまった。

 キャシー嬢はそれでも、

「一人でいらしている時は、踊ってくださっていたじゃないですか。何故(なぜ)ダメなのですか⁈」

 と抗議(こうぎ)の声をあげる。

 私は隣の殿下の(まと)う空気が、少し剣呑(けんのん)なものに変わるのを感じ、

(キャシー嬢、ヤバイよ。空気読んで!)

 と視線を送ったが、まったくわかってもらえなかった。

「一人の時は、な。でも今日は婚約者を(ともな)っているんだ、少し気を利かせてくれないか」

 と、いつにも増して冷たい声でピシャリと言い放つものだから、周りにいた人たちが凍りつくのがわかった。

 その威圧的(いあつてき)雰囲気(ふんいき)に、さすがにキャシー嬢もビクッとして、

「申し訳ありません。失礼いたします。」

 と、そそくさと離れて行った。

 だが、だいぶ離れてから、もの(すご)い目つきで私の事をずっと(にら)んでいる。私は隣の殿下に、

「今日は他のご令嬢たちと踊らなくてよかったのですか?皆エドワード様と踊るのを楽しみにしていらしたのでは?」

 と聞いてみると、

「王宮の舞踏会なら来賓(らいひん)のもてなしもしなきゃいけないが、今日はお客として来ているのだ。一人の時ならいざ知らず、君と一緒にいるのに何故(なぜ)他のご令嬢と踊らなくてはいけないのだ?」

「それとも俺とずっと一緒にいるのは(いや)か?」

 そんなふうに言われて、一人で居るのをちょっと不安に思っていた私は、エドワード殿下が私と一緒に居てくれると言ったことに、なんだか胸の奥が熱くなるのを感じた。

「いえ、私もエドワード様が一緒に居てくれるととても嬉しいですわ」

 そう微笑むと、エドワード殿下は

「そうか、ならいい」

 と素っ気なく言うが、(つな)いでいた手をギュッと(にぎ)ってきたのだった。




 キャシーはとても頭にきていた。

 学園ではエドワード殿下は、振る舞いこそ皆に対するのと同じで素っ気ないが、キャシーが何か頼めば(こころよ)くやってくれるし、話しかければ応対してくれる。

 今まで舞踏会でお会いした時だって、ダンスを申し込めば(こころよ)く応じてくれた。

 キャシーは父親が言っていたように、エドワード殿下は、本当は私のことを愛してくれているのだと確信(かくしん)していた。

 今日はあのお飾りの婚約者が一緒なので、周りを気にしてあんな態度をとられたのだ。あれは殿下の本意(ほんい)ではないはずだ。

 いつもは舞踏会など出てこないのに、何故(なぜ)しゃしゃり出てきたのか。あんななんの取り柄もない、身分だけの婚約者など、早く婚約を解消して私を迎えに来てくれればいいのに。

 そんなふうに考えながら、ずっとシルフィを(にら)んでいた。

 するとエドワード殿下がキャシーの方を見た。キャシーは、

(やっぱり殿下は私のことが気になるのね)

 そんなふうに思うのであった。




 エドワードは、シルフィに害を成そうとしているのはキャシーではないかと思ったが、あんなにあからさまに敵意(てきい)を見せるものだろうかと疑問にも思う。

 ただ、あの敵意(てきい)尋常(じんじょう)ではないので要注意だなと思った。

 今日は最初にシルフィ以外とは踊らないと宣言(せんげん)したので、誰も声をかけてこないのが(わずら)わしくなくていい。今後はもう、一人で舞踏会に参加するのはやめようと、シルフィを見つめながら思うのだった。

読んでいただいて、ありがとうございます。

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