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3話
むつと電話を終えた冬四郎は、笑みを浮かべたまましばらくは、じっと携帯を見ていた。
「何、にやにやしてんだ?」
「おぉっ‼びっくりしたっ…」
本当に驚いたのか、冬四郎は携帯を落としそうになった。だが、携帯につけていたストラップが、指にひっかかり何とか落とさずに済んだ。
「急に声かけないでくださいよ」
いつから居たのか、山上が携帯と冬四郎を交互に見て、にやっと笑った。
「これ、か?」
山上は小指を立てて冬四郎に見せた。冬四郎が見ていると、山上が器用にも小指の第一関節だけを曲げたりして見せた。
「否定はしませんよ」
「ん?これ…どっかで見た事あるな」
冬四郎の携帯についているストラップをつまみ上げながら、山上が首を傾げていた。
「そこら辺で売ってる物ですからね」
「ふぅん?」
意味ありげに頷くと、山上はすぐにストラップから興味が失せたのか、テーブルの方を指差した。
「潰れたぞ、あいつ」
「潰した、の間違いでしょう?どうするんですか?」
「その辺に転がしとけ。男だから、連れてかれる心配もないだろ?」
「かもしれないですけど…」
「優しいヤツだな」




