2話
運ばれてくる料理は、菜々が選んでくれていたのか、むつの好む物ばかりだった。しばらくは、久し振りに会ったむつと菜々、之夫がにこやかに話していた。むつは、舐めるように少しずつ日本酒を口に運びながら、好きな鯵や湯葉何かをつまんでいた。
「…それで、お話というのは?」
会話が途切れた所で、むつは之夫の小さなグラスに酒を足しながら聞いた。
「段取りがついたと、菜々さんからのお電話で伺っておりますが…」
之夫は、うんうんと頷いた。
「むつさんは呑んでいても、仕事の姿勢を崩さないんだな…子供の頃からの付き合いのある菜々にまで丁寧な話し方をしてくれて。大人になりましたね」
「いえいえ、そんな事ありませんよ。おじ様が、いつものおじ様ではなく、朋枝学園の責任者として、いらっしゃるからですよ」
むつはくすっと笑いながら言うと、之夫のグラスに透明で少しとろっとした日本酒を注いだ。
「菜々は良いお友達とお付き合いをさせて貰ってるようだ」
「こちらこそですよ。大人になってもこうして、わたしの事を知っても菜々さんもおじ様も昔と変わらずに接してくださって…本当に感謝しております」




