2話
結局、昨日は2件目でべろべろになったむつに何度も送ると言ったが、むつはうんとは言わなかったのだ。と、いうよりもすぐにでも横になりたかったようで、泊まると言い出したのだ。それで、一緒にホテルに入ったものの化粧だけどうにか落とすと、服を脱ぎ散らかしてむつはさっさとベッドに潜ると、眠ってしまったのだ。
西原はむつの服を拾い上げ、ベッドの隅に置くと、ソファーで寝たので一緒の部屋で一晩をただ過ごしただけにすぎなかった。だが、むつは何かをしたと勘違いしている。そして、それを西原が迷惑に思ったと思っているようだった。
落ち込んでいるようなむつを見て、西原は本当の事を伝えるか悩んだが、何も言わなかった。伝えるべきだったのかもしれないが、そうはせずにそぅっとむつの頭を引き寄せた。
緊張しているのか、むつが強ばっているのがよく分かるし、自分の心臓が凄く早く脈打っているのも分かっていた。
顔に手を添えて、上を向かせると困ったようにきょろきょろしたむつだったが、そっと目を閉じた。西原は、ゆっくり顔を近付けた。前はキスしようとして、邪魔が入ったが今は邪魔をする者など居ない。
もう少しで唇に触れそうになったが、西原はゆっくり離れた。ぎゅぅっと布団を握りしめているむつの手を取り、その手に唇を押し当てた。




