3話
西原が手にしていたサンドイッチをかじりたかっただけのむつは、すぐに新しいサンドイッチを箱から出してパクついていた。
「お前…これ、どうすんだよ」
「それはもういいや。アンチョビ?何か好きくないもん…普通のでいいや」
ぱりっとしたレタスを食い千切りながら、むつはふんふんと頷いている。西原はむつが食べ掛けたサンドイッチを口に運んだ。
「あー微妙」
「でしょ?はい、オレンジティーだけど」
紙コップを受け取り、ストローに口をつけた西原は、はっとしてすぐに離した。飲んではいないものの、むつが口をつけたものに、口をつけた事を気にしたのだった。ちらっとむつを見るも、むつは気にした様子はなかった。
「で、お前の方で進展は?」
「ない。ってか、あんまりまだうろうろ出来てないのよ。さっきみたいに呼び出されたり、誰か側に居たりしてさ」
「何で呼び出されたりしてんだ?」
「なんつーか…伝統?気に入った人のパシり希望者よね。意外とあたしってばモテるらしい」
むつが困ったように言うと、西原は納得したように頷いていた。学生の頃もむつは気付いてなかった様だったが、そこそこモテていたのだ。




