3話
遠くから、風に乗って微かながら女の子たちの笑い声なんかが聞こえてくる。西原は腕時計に目を向けた。時間的には、そろそろ昼休みの頃なのだろう。西原は、校舎の方ではなく植物園がある方に向かって歩き出した。植物園の方は、緑豊かでベンチや小川などもある。何度か来て分かった事だったが、植物園に居る生徒たちはまだ口が柔らかい。だが、雰囲気としては余所者を受け入れないという頑なな姿勢ではある。と、いうよりも群れているので迫力がある。
さくさくと芝生を歩いて行くと、大きな木の下に背の高い女子生徒と小柄で線の細い女子生徒の2人立って居た。何をしているのか、西原は気になったが盗み見するのはよくないと思い、そっと素通りしようとした。だが、ふと聞き慣れた声を聞いた気がして足を止めた。
小柄な女子生徒が一生懸命に何かを言っているようだったが、背の高い女子生徒は首を横に振るばかりだった。その女子生徒は長い髪を背中に垂らしていて、それが風でさらさらとなびいている。
見覚えのある後ろ姿に西原は、木の影に隠れて、様子を伺っていた。そして、小柄な女子生徒が、小走りで去っていくと背の高い女子生徒は、西原の居る方に歩いてきた。バレたのではと思ったがそうではないようで、木の根本に座ると上を見上げて溜め息をついていた。
「…おい、そこで盗み見してた西原駿樹さーん、出てきなさい。今はあたしだけよ」
フルネームで名前を呼ばれた西原は、大人しくすぐに女子生徒の前に姿を見せた。




