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5話『お別れ』

(……なんで、先輩…………)


周りには沢山人が居る。


先輩の友人や血族の人達だ。


皆表情が暗い、それ程に先輩は愛されていたのだろう。



「此度は、お集まり頂き---」


優しそうな中年の男性が話している。


先輩のお父さんだ。



精一杯明るく振る舞おうとしているが、笑顔が少しぎこち無く、無理をしているのは明らかだった。


そうして、彼が話をしていると、突然私の意識が落ちた。



---------------------------------------------------------------




「……?」


気が付くと私は真っ白な空間に立っていた。


周りを見渡すと、一緒に居た友人や先輩。宮野先輩の親戚の人達も居る。




(ここは……)


僕が困惑していると、一部の人達が騒ぎ出し、私の後ろの方を指指す。


不思議に思いながら振り返ると思わず目を見開いてしまう。



「…あー、………」



宮野先輩が居心地悪そうに立っていた。


あの傷だらけの先輩じゃない。

顔色を見るだけで分かる、生きている。


私が呆然としていると、血族の集団の中から2つの人影が飛び出した。


先輩の両親だ、彼等は先輩の名前を叫びながら必死に走り、先輩へ近付く。


あと先輩との距離が3mほどまでに近づいた時、突然彼等の間に太い縄が現れる。


両親の手が縄を超えた時、見えない壁が現れた。

壁は彼等を優しく包み込み、跳ね返す。


だが、彼等は諦めずに壁を叩く。


そんな両親の姿を見て、先輩は辛そうに一瞬顔を歪め、直ぐに元気そうな笑みを浮かべる。



「…やぁ、父さん、母さん。……なんて言えばいいのか分からないけれど、まず、ごめん。父さん達に辛い思いをさせて。」


そう言い、先輩は頭を下げる。


彼等は先輩の顔を見詰めながら、ただ耳を傾ける。




「……本当は、もう少し生きて母さん達に恩返しをしたかったけど………無理になっちゃった。……俺さ、新しい世界に転生出来るらしいんだ。記憶は受け継いだまま、だから父さん達を忘れる事は無いから。……絶対に、………最期まで迷惑をかけてごめん。」


先輩がそう言うと両親は立ち上がり反論する。


「違うぞ小春コハル!お前は俺達に大切な思い出をくれた!」


「迷惑なんて掛けられてない!」


心が篭ったその言葉を受けて、先輩は悲しそうに目を伏せる。


「…ごめん、この注連縄しめなわのせいで父さん達の声は聞こえないんだ………けど、表情と雰囲気で、とても嬉しい事を言ってくれたのは分かる。」


そう言って、彼は笑みを浮かべる。




「……育ててくれて、愛してくれてありがとう。」


そう言って両親に頭を下げると、血族に視線を向ける。


「………御迷惑をお掛けしました、これからも、父と母を宜しくお願いします。」


そう言い、再び頭を下げる。


そして、今度は私達、先輩の友人や部活の後輩達に目を向ける。


「…悪い、先に行かせてもらうわ。」


そう、気軽に声を掛ける。


そして私に視線を向けてきた。




「……玲奈れいな、部活は任せた。」


「……はい、頑張ります。」


私は肯定の意思を示す。


すると、彼は両親に視線を向け、口を開いて何かを告げると、私の意識は再び落ちた。------------------------------------------










「……ん」


気が付くと私は葬式場に戻っていた。


先程の出来事は幻覚か、夢だったのか……そう思った。


【ガタンッ】


……が、突然泣き崩れた両親を見て、察した。


先程の出来事は本当の事だったのだ---と。



あの時の先輩の言葉を思い出した私は、決意を抱いた。






(…絶対に、全国大会に出て、優勝しよう。)


私、菅和かんなぎ 玲奈れいなはそう決めた。

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