歓迎
遅くなりました。
半年ぶりというなんともいえないペースでまだ7話目……。
申し訳ないです。
連れてこられたのは、とても大きな屋敷。目隠しをされて移動していたから何処かわからないが、時計はあの時から10分ほどしか進んでいない。車で移動していたが、大臣の家からは近いようだ。
ここには数人の大臣がいる。市川さんは拘束されていないところを見ると、やはり総理側の人間なのだろうか。
最初から違和感が体に付きまとっていたのだ。国を裏切るような行動を起こすために動いているのに、わざわざ家に呼ぶなんておかしかった。一番不可解な点は、他の大臣が他人の家に盗聴器を仕掛け、市川さんはそれがわかっていて私たちを呼んだことであった。
市川さんへの不信感は募るばかりであった。
大臣同士で何かコソコソと話している。その隙を伺い緑が声をかけてくる。
「市川さんは白だ。他の大臣のうち2人も白だ」
それだけそれだけ言うと口を閉ざし、大臣たちの後ろ姿を見つめていた。
しばらくすると市川さんを含め3人が残り後の人たちは帰っていった。ドアを見つめ、足音が聞こえなくなると同時に大きくため息をついた。
「まったく、なんて人たちなのかしらねぇ。私利私欲のためだけに動いて、根が腐ってるわ」
「まぁまぁ、そう言うなよ。元はいい人だったんだからさ」
ポカンとする私。見定めるような視線を向ける緑。
しばらく愚痴を言っていた女の人が、大きく息を吐き、こちらに向き直った。
「驚かせてごめんなさい。私たちはあなたたちの味方です」
市川さんは私たちに2人を紹介した。
陸奥清子さん、50歳。今の政策に反対し続けている一人だという。
豊川晃さん、50歳。陰ながら反対を示し、反対運動の指揮をしているらしい。
頭が追いつく前に矢継ぎ早に告げられた事実を飲み込み、パンクしてしまいそうになりながらも、なんとか理解する。それでも違和感は体をつきまとう。
「市川さんを含めあなたたち3人は、どうしてこのような危険な目に合うよう誘導したんですか? もし、風に何かあればどうするつもりだったんですか?」
いつもと違う圧迫感のある声音に驚いたが、不思議と怖くはなかった。
「私たちの疑いを晴らすために利用させてもらったのよ」
きっぱりと言い切りニヤリと笑みを浮かべる。
「君達もも僕たちをを利用すればいいさ。お互いが駒であるというのは、それだけ動きやすいということだ」
頭の回転が速い人たちなのだとなんとなく思った。そして、この人たちなら止められると確信した。
「反政府組織、ヤマトへようこそ。僕たちは君達2人を歓迎する」
市川さんのいつもと同じ笑顔の奥に悲しさが見えた気がした。