協力者
「あの、詳しいことを知りたいので、場所を変えませんか?いい場所があるので…」
私は大臣を緑もいる家へと案内した。
「お帰り…なんで大臣がいるんだ!?」
予想した通り驚きを見せる緑に今までの経緯を話し、市川大臣にも緑のことを紹介する。私たちは市川大臣と向かい合うように座り、さっき言われた言葉の意味を尋ねた。
「そのままの意味だ。今この国がどんな状況にあるか知っているかい? 」
緑は力強くうなずき、私は俯いてしまった。大臣のあの言葉をそのままの意味として受け取ると、今この国を止めないと、核戦争が始まってしまうという意味だからだ。残虐なあの行為をしようとしているということになるのだ。それが許せなくて、血が滲みそうなほど唇をかむ。だが、緑にポンポンと頭をなでられ、少し気分が落ち着く。そして私は顔を上げ市川大臣の顔を見つめる。そして、震えそうな、消え入りそうな声で返事をして、言葉をつなげる。
「あなたのことは、まだ信用してません……。ですが、本当にこの国を止めたいというのなら私の言葉を信じてください」
こんなことは何の革新にもならないと分かっている。でも、この人が嘘をついてもつかなくても私には何のデメリットもない。もしあるとするならば、この国を止めることが難しくなる。それだけ。どのみち困難なことなのだ。少しくらい難しさが変わっても、何も問題ない。
だけど、この人は懐に持っていた銃を置き、そのほか危険なものを机の上にだし、私たちに渡してきた。私たちに向けてきた目は真剣そのもので、ひしひしと感情が伝わってくる。
「何でも、君の言うことを信じよう」
力強く頷く姿を確認し、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
あたしが見てきた未来を、ここまで来たことをすべて話した。
話を聞き終えた大臣は、驚いた様子でしばらくかたまっていたが、我に返ったようで肘をつき俯きながらしばらく考える。
その間にあたらしいお茶を入れ、大臣が顔を上げるのを待った。
大臣はゆっくりと顔を上げると、緊張したように顔がこわばっていた。もしかしたら恐怖と戦っていたのかもしれない。
「テレビの向こう側の出来事が、今……未来で起ころうとしているのか…?」
尋ねてきた声は震えていて、歳に似合わぬ声音だった。
「このままだとこの国はまた、同じ過ちを繰り返してしまいます。誰も喜ぶ人なんかいない、誰もが悲しみに身を染める、悪魔のような時代が……!!あれほど先人が起こしてはならないと、あってはならないと言ったはずのあんな悲劇が……。この国だけではなく世界中がです。私はこの目で見てきたからこそ、身をもって体験したからこそ、今こんな風にいえます。実感がわかないのは仕方ないかもしれませんが、私はこの過ちを止めるためにここに来たと思っています」
どこか漫画の世界の、きれいごとを言うような主人公だと、不意に思ってしまった。格好悪い…と…。
だけど、それでも、止めたい悲劇がある。格好悪くても、何だろうと、未来を止めるためなら、どんな姿になってもいい。
どんなことだって、できる気がした。
遅くなり申し訳ありません。
やっと投稿できて一安心です。