乙女ゲームの世界だった
私はお父さまに手を引かれて屋敷に帰った。
でも私の頭にはさっきであった少年のことがずっと残り続けている。
そんな時胸元のネックレスが淡く光った。
「大丈夫。クリスには幸福な未来が訪れるはずなのよ?」
優しい声が私の胸に響いた。
私はベッドに倒れこんだ。
「ひぃ!フィオナ様のどれすぅぅぅ!」
大きな声がしたからドアの方に目をやった。
「マーサ!」
私の侍女マーサ。
「フィオナ様のドレスは大事になさってください!そしてこの服に着替える!」
私はマーサに服を脱がされ綺麗な薄紫色のネグリジェに着替えさせられた。
「まぁさのおにぃ!」
「なんですって!こんな子はこうです!」
マーサは微笑みながら私に微風を当てた。
微風!?
「なにっ!?なんなのその今の風っ!」
私はマーサの手をつかんで聞いた。
「なにって魔法ですよ?ここは魔法の国、『アイスシティー』なのですか?」
当たり前のように続けるマーサ。
魔法。アイスシティー。
聞いたことある。
でもそれはどこ?
「痛いっ!」
私の頭に激痛がはしった。
なに!?
「痛い。助けてマーさっ!」
私はそう叫び、倒れた。
*
「起きて?起きなさい。」
綺麗な声。
落ち着く声。
「おきなさい!クリスティーナ・ローズティア!」
「はいぃ!」
目を開けると目の前には_
「女神様ぁぁぁぁ!?」
美しい女性が立っていた。
「クリス。と呼べせてもらうわね。」
「はい。」
「まず私は人の生を司る女神なの。」
「はぁ...」
「あなたを殺してしまったのはね、私なのよ。しかも、『乙女ゲーム・MagicM♡princess』の悪役令嬢に...」
ん。
乙女ゲームの、ヒロインではなく。悪役令嬢?
「反省しているのよ...だから私の魔力を少し貸してあげるわ。生き続けてね、クリス_」
*
私は目を覚ました。
頬が冷たかったから拭うと手が濡れた。
「クリすぅぅぅ!クリス!」
「「「「「「「「お嬢様ぁぁぁぁ!」」」」」」」」
「ひっ!」
水色の瞳を潤ませたお父様とたくさんの侍女たち。
「倒れるなんて。心配したんだぞ!」
私がつぶれそうなほど抱きしめてくれるお父様。
「「「「「「そうでずよぉ!」」」」」」
鼻水だらだらの侍女たち。
「みんなぁ!私は大丈夫だよ?」
「フィオナ様も予想言ってましだぁぁぁぁ!」
マーサ。
マーサはお母様に拾われた孤児だったっけ。
この屋敷、公爵家侍女たちは皆お母様に助けられた人ばかり。
お母様は病弱だったのに大丈夫。大丈夫。って無理してたんだよね。
「大丈夫だよ?ほら元気!」
私は元気元気と立ち上がろうとしたがベッドに座り込んでしまった。
「ごめんごめん、足に力はいらないわ!」
笑い飛ばすもみんなの涙は止まらない。
「も~大丈夫なのにぃ~」
私が困った顔をするとお父さまが何かを思い出したように立ち上がった。
「こ、国王に呼ばれてたぁぁぁぁ!」
「えっ」
私たちは固まった。
「国王に呼ばれたなら早くいかなきゃ!」
お父様の格好はシンプルな白いシャツに青色のズボン。
「マーサ、カレン!お父様の用意してあげて!サユは場所の用意!ユキは手土産の準備_」
私はてきぱきと指示を出していく。
「「「「「はい!」」」」」
わたしを置いてみんなが部屋から出ていく。
静まり切った部屋は少し寂しい。