邂逅-02
「花江さん?」
美咲も彼女の様子を変に思ったか、そう尋ねると。
宮越花江は、自分のアルターシステムを繋ぎ合わせる。
浮き上がる梵字。放たれる光。先ほどまでの乱舞と同じく、巫女装束へと姿を変えた花江――
プリステス・炎武は、一瞬で手に持った刃【滅鬼】を振り切り、ナオの首を刎ねようとした。
――しかし、乱入者は彼女だけでは無い。
上空より落下する物体――否、人物。その者は炎武の振り切った刃がナオの首を刎ねる前に、その切先に蹴りを叩き込み、衝撃を一帯に放った。
震度五は観測されたろう。しかし炎武と、落下してきた人物――アルタネイティブ・セイントは互いに睨み合い、動いた。
炎武が左手だけを滅鬼から離すと、腕にまとわりつく豪炎。
炎をまとわせた左腕を強引に振り込むと、セイントは自身の左腕を振り切り、せり合った。
「邪魔だアンタっ! ヴァンプはアタシが殺す――ッ!!」
「聖堂教会のプリステスか。ヴァンプにどう恨みがあると」
「死んだアタシのママは――ヴァンプを恨んでたッ! 娘のアタシが、ママの悔いを全て解消させる、その為にアイツを殺さなきゃッ!」
「やれるものなら」
「やるってぇ――のぉおッ!!」
セイントとせり合っていた拳を強引に押し込み、吹き飛ばした炎武。
「セイントが!」
「迫り負けた!?」
驚きを口にするナオと七海。しかし迫り負けたわけでは無く、あえて距離を取る為に力を抜いたセイントは体勢を崩す事無く空中で一回転し、着地と同時に駆け抜ける。
炎武の右足を取ったセイント。炎武を投げ飛ばすと左足を振り込み、その腹部を蹴り付けた――ように見えたが、滅鬼の柄でそれを受け止め、弾き返す。
「な、何が……」
「ボクが聞きたいよっ! あのお姉さん何!?」
「お母さんがヴァンプを恨んでたって言ってるけれど、ナオは身に覚え」
「無いよ、無い無いっ! ボク、プリステスに会うの初めてだしっ」
「な、何にせよ止めないと!」
美咲とナオが表情を合わせて頷くと、アルターシステムを構えようとする。
しかし、二人の行動を遮る様に――またも闖入者が、三人ほど現れる。
セイントが振り込んだ拳を止める、青の戦士。
乱舞の振り込んだ刃を真剣白刃取りで受け止める、赤の戦士。
そして二人の間を持つように立ち塞がる、一人のシスター。
「お止めなさい、アルタネイティブ・セイント。そしてプリステス・炎武」
シスター、プリステス・クラージュは、両手を合わせ、祈る様に淡々と言葉を放った。
赤と青の戦士は、いったい何事かと言う表情を浮かべながらも、互いに対峙している相手への休戦を視線に込めた。
「――チッ、邪魔が入り過ぎたわね」
「丁度良い。己も活動限界が近い」
プリステス・炎武――宮越花江は、アルターシステムを取り外し、フンと鼻を鳴らす。
茶髪のルーズカールとユーネックのシャツ、そして何よりギャル系の化粧を施した顔が浮かべる殺意の籠った表情が、何より印象強く感じた。
アルタネイティブ・セイント――豊穣志斎も、アルターシステムを取り外す。
先ほどまでの高身長だが端麗な顔立ちをしていた美女から、豪傑で屈強な男性が姿を現した事に、美咲は何より驚いていた。
「プリステス・クラージュ。そちらの飼い犬は酷く手癖が悪いようだが」
「あら、聖邦教会の犬に言われたくありません。沈静化したとは言え、聖邦協会と聖堂教会は相容れぬ存在同士。本来ならば炎武の行動も止める必要は無かったのです」
プリステス・クラージュ――シャルロット・サール・クラージュも、秋音高等学校の制服をまとい、スカートを叩く。
「うーん。よく分からないけど、止めて良かったんだよな?」
「じゃねぇのか。俺も知らねぇ。やり合いたきゃ、俺達が帰ってから勝手にやっとけ」
そしてその場にいる誰もが知らぬ二人の戦士――アルタネイティブ・レッドとアルタネイティブ・ブルーも、アルターシステムを取り外し、変身を解いた。
ボーイッシュな風貌の少女――久野優奈。
志斎と同じく二メートル近い大柄な少年――菊谷荘司。
「ありがとうございます。四六のアルタネイティブと協力するのは、初めてでございますね」
シャルロットがぺこりとお辞儀をすると、荘司はそっぽ向きながら、優奈は同じくお辞儀を返す。
「えっと、俺は防衛省情報局第四班六課所属、アルタネイティブ・レッド、久野優奈」
「同じく、アルタネティブ・ブルー、菊谷荘司だ」
「ホントゴメン! ――お前ら全員拘束する!」
突如、黒塗りのワゴン車が四台ほど現れ、スライドドアを開け放ち、中から銃器を装備した男たちが姿を現す。しかし一人だけくたびれたスーツを着込んだ中年男性が顔を出し、笑顔を振りまいた。
「や、どうも。僕は先ほど紹介があったレッドとブルーの上司、秋山志木だ。君たちアルタネイティブとプリステスに、ちょっと事情聴取させて貰いたいんだよね」
「えー、ボクはヤだ」
ナオだけが率先して断るも、しかし志斎が首を振った。
「いいや、ここは協力しておこう。……秋山志木。貴様、その手に持つ液体は」
志木は右手に、試験管にも似た容器を持っていた。朱色の液体が入っている事は分かるが、プリステスの三人には、その内容は理解できなかった。
「同行してくれるね。――聖邦協会の代表として」




