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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
第四章【災い殺しのプリステス】

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カラミティ、企みます。-06

 伸ばされた手を見据えて。


美咲は、その手を取りたいと、そう思った。


自身の体にまとわりつく、この触手を邪魔だと思った。



――そうしたら、何だか無性に、ムカムカしてきた。



今まで自分の心に存在し得なかった【感情】が胸の中を渦巻いて、自身を捕える触手を『バラバラにしてやりたい』と思ったのだ。



そう思った時には、体から鋭い風の刃が顕現され、自身の身体を捕えて離さぬ触手を、切り刻んでいた。



変身もしていない、ただの少女である筈の、神崎美咲が放つ虚力がそれほどまでに多く、アルターシステムの補助無しに、虚力の変換を可能としたのだ。



「な――!」



 驚くカラミティへ、二人は視線も寄越さない。



切り離された触手。その触手に締め付けられていた部分を軽く触れ、少しだけ痣になっているだけだと確認した美咲は、花江へと向け、言い返すのだ。



「花江さん。私、貴女にムカついている事があるんですっ!」


「何さ!? 言ってごらんっ!!」



 息を吸い込み、覚悟を決めて、そうして真っ直ぐな視線を向けて、叫ぶ。



「……花江さん毎日毎日、アタシに首筋チューしてるけど、その度に花江さんのオッパイがブルンブルンって、アタシの胸に押し付けられて……そんなのエッチな気分になるに決まってるじゃないですかッ!


 なのに中途半端な首筋チューされたら、毎日毎日欲求不満で悶々としてて、でも隣で花江さんが寝ているから自分で慰める事も出来ないし!?


 少しは私の事満足させてくれる気にならないんですか!? この――ヘタクソォッ!!」



「へ――ヘタクソぉ!? 毎日私の舌使いで喘ぎ声上げてるアンタが何言ってんのよッ!?


 だったら前に『もっと激しい事してあげようか?』って聞いた時頷けば良かったじゃねぇーのぉ!?


 それを拒否しといてその言いぐさはないっしょぉ!?」



「君たち何の話を」



「オ・ト・メ・ゴ・コ・ロっ!! を理解して下さいっ!!


 そう言う時は花江さんから無理矢理そういう事をするべきでしょう!? それで満足させるべきでしょう!?


 そんな乙女心も理解できないから、花江さんはおーバーカーさーん、なんですよっ!!」



「、ッカーっ!! ッ、カーッ!! アタシ今、チョー! ムカついてっからね!


 待ってなさい美咲っ! 今日はアンタ寝かせないから覚悟しなさいよぉっ!?」



「やれるものならやってみてくださいー! でもその前にやらなきゃいけない事あるでしょーっ!?」



「あーそーよ! 分かってんじゃないこのバカ美咲っ! 分かってんならっ!」



「はい! 今……お答えします!」



スゥ――と。深く息を吸い込んだ美咲は。


その瞳から涙を流しながら笑みを浮かべ、そして声高らかに……叫ぶ。





「私も、花江さんが、大好きィ――イイイイッ!!」




 その叫んだ【愛情】をエネルギーに変え。


エネルギーはさらに暴風として顕現され。


美咲の身体全体をまとって、触手の災い――フォビドゥンをバラバラに切り刻んで、消滅させ。


彼女はフォビドゥンが消滅する前に空へと跳び、手を伸ばし、乱舞の元へと、身体を投げた。



空を跳ぶ美咲の、その小さな体を抱き留めて。


そしてギュッと、きつく抱き締める炎武。




「……アタシ、アンタを愛してる……ずうっと、一緒に居ましょう。美咲」


「はい……私も初めて、生きていたいって、思えました……花江さん……大好き……愛してます」



 互いの想いを伝え合い、体内を駆け巡る【愛情】のエネルギー。


二人は唇と唇を重ね合わせ――互いのエネルギーを混ぜ合わせた。


無限に有ろうかと勘違いするほどの虚力が、二人の体内を駆け巡り。


二人は自分たちを睨み付ける男へと、視線を寄越した。




「神崎美咲、宮越花江……っ! 君たちは、殺すっ! もう、システムなんかどうでもいい……君たちを殺して、この世界を崩壊させてやるっ!」


「もう、アンタなんか怖くない」


「はい――花江さんと一緒なら、何でもできます」



 炎武は、その左手の中指に装着したアルターシステムを取り外すと同時に、光が弾ける様に、自身の変身を解いた。


取り外した指輪を美咲へと差し出し、二人で視線だけの意思疎通を済ませる。


美咲は左手の中指にアルターシステムを取り付けて、手を拳にして左隣に立つ花江へと伸ばし。


花江は右手の中指に装着されたままのアルターシステムを、美咲へと向けて伸ばした。


合致する、二人の取り付けたアルターシステム。


二人は、互いの手首を捻り、アルターシステムがカチリと音を鳴らした瞬間、宝石部から梵字が浮かび上がった。



『変身っ!!』



 二人が叫ぶと、二人の装着したアルターシステムから光が放たれる。


光は二人の姿をプリステスへと変貌させていき、最後に二人でそれぞれの滅鬼を掴むと、その刃をカラミティへと向けた。



宮越花江――プリステス・炎武。


神崎美咲――プリステス・乱舞。



「さあ、来なさい。カラミティ!」


「これが、私たちの力です!」


「ほざけ――っ!!」



 カラミティは、自身の周囲に何十本もの岩の刃を顕現させ、刃を一斉に二人へ向けて放っていく。


乱舞によって生み出された暴風の渦が自身と炎武の周囲へ展開され、刃を全て弾き飛ばした後、彼女の肩を蹴って炎武が跳んだ。


空を舞う炎武。彼女は手に持った滅鬼の刃を横薙ぎに振り込むと、手に持った岩の剣で防ぎ切るカラミティ。


そんな彼から見て左方に、いつの間にか乱舞が駆けていた。


カラミティの顔面を思い切り蹴り付けると、そのまま彼女は暴風を眼前へ集中させ、まるで砲弾のように、彼に向けて放出する。


暴風の砲弾は彼を五十メートル程遠くへ吹き飛ばす。だが彼は一度着地をすると同時に地面を蹴り、隆起した地面が岩の槍として二人へと襲い掛かる。


 地を蹴り空へと飛びあがって槍を回避すると同時に、視線と視線を合わせる二人。



「美咲っ!」


「はいっ!」



 一瞬の意志疎通。炎武の構えた滅鬼の峰に足を付けた乱舞がさらに空高く舞い、その滅鬼の刃をカラミティへと振り下ろした。


その刃を、左手の甲で受け止めたカラミティであったが、その左手は虚力の増幅により切れ味を増していた滅鬼に切り裂かれる。



「があ……っ!」


「花江さん、トドメっ!」


「あい――よぉっ!!」



 痛みで一瞬、動きを怯ませたカラミティ。


炎武は、全身にまとう虚力を豪炎へと変換させ、その豪炎をカラミティに向けて送り込んだ。


彼の身体を蝕んでいく豪炎。カラミティはまるで溶けていくように消失していく自身の身体を見据えながら、恐怖の表情を浮かべるのだ。



「ぼ、僕が……消える……! そんな事、そんな事、有っていいはずが、無い……!」


「有っていいの。だって」


「私たちプリステスの仕事は、貴方たち災いを、滅する事ですから」


「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ!! 消えたくない――消滅したくないよぉおおおお!!」


「それが本性、か」


「貴方は……知恵を付けてしまったが為に、消えたくないって感情を覚えてしまったんですね」


「だから、アンタは美咲を利用して、自分がいつでも蘇る事の出来るシステムを、生み出す必要があった……ホント、悲しい奴」


「あ、あははははは、あはははははははははははああああああああああああああああああああっ!!」



 カラミティは、もうすでに彼女達の言葉を聞いてなどいない。


ただ現実を直視する事を恐れ、彼は嘆きの爆笑を叫び上げる他、やる事など無いのだ。



「一思いに殺してあげる――アタシの恨みを込めて、ね」



 カラミティが朽ち果てる前に。


彼女は、地面に体を預けて悶え苦しむ彼の顔に向けて。


その刃をただ、突き立てた。


それ以降、叫び声は聞こえない。


沈黙したカラミティの亡骸は、次第に黒い霧となり、消えていく。



――今この時。


宮越花江は、自身の復讐を、果たすことができたのだ。

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