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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
第三章【災い殺しのプリステス】

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シャルロット・サール・クラージュ、参ります。-03

 秋音高等学校の四時限目、その授業が終わると同時に、クラスメイト達が席を立ち上がり、学食へ向かったりお弁当を取り出していたりする。


昼食の時間だ。美咲もカバンの中に入れておいた花江特製のお弁当を取り出し、包みを解こうとした時。



「美咲様。もしよろしければ、屋上でお昼ご飯をご一緒しませんか?」



 美咲と同じく、お弁当箱を手に取りながら、声をかけてくるシャルロット。「はい、いいですよ」と立ち上がった美咲。


その二人に、幾人かクラスメイト達が付いて来ようとしたが――



「うふふ。美咲様との初デートですので、今日だけは二人にさせて下さいな」



 ユニーク交じりの断りを入れて、二人で屋上へと向かう。


屋上緑化になっており、その作られた自然の中にある簡易的なベンチに座り込んだ二人。他には誰もいないので、気兼ねなくお弁当を開いた。


美咲が開いたお弁当箱の中身は、半分は白米が敷き詰められていたが、残り半分は野菜炒めと肉巻きポテト、卵焼きが入っており、彩り良いお弁当となっていた。


対してシャルロットのお弁当は、ハムとタマゴのサンドイッチだ。キチンと切られたパン、そしてパンに挟まれた食材が食欲をそそる様だった。



「あら、美咲様のお弁当は大変美味しそうですね。お母様の手作りでしょうか」


「えっと、私お母さんは小さい頃に死んじゃってて……これは、その……お、お姉ちゃんのお手製、かな」


「それは、大変失礼な事を訪ねてしまい」


「あ、大丈夫ですよ。シャルロットさんは、自分で作られてるんですか?」


「うふふ、シャルロット、と呼び捨てで構いませんよ、美咲様。私は毎朝、自分で作っております」


「へぇ。女の子みたいで、すごいなぁ」


「日課にしてしまえば、簡単ですよ。美咲様もお姉様のお手伝いから始めて、挑戦してみてはいかがでしょうか」


「け、検討します。じゃあ――頂きます」


「本日も、清らかな身体で居る為の糧、頂戴致します」



 互いに言葉は違うものの、食材や作ってくれた者への感謝を口にしながら、昼食とした。


朝ごはん以降何も食べていなかった美咲は、そのお弁当をぺろりと完食し、そしてお弁当箱に蓋をした。



「ふぅ――ご馳走様でした」


「美咲様は、食べるペースが大変早いのですね」


「あはは、お腹空いちゃって」


「健康的で真、良い事だと思います。――私も、ご馳走様で御座います」



 ペコリと、弁当箱に向けて綺麗な礼をしたシャルロットは、その口元をウェットティッシュで拭い、そして美咲の口も新たに用意した一枚で拭った。



「むぐ……す、すみません」


「いえいえ。食後のケアも、女性の嗜みですよ」



 うふふ、と微笑んだシャルロットは、弁当箱をベンチの横に置いて、美咲を見据えた――その時だ。



「おや……美咲様。首筋に、赤い痕がついてますよ」


「ぎぇっ!?」


「虫にでも刺されてしまったのでしょうか?」


「そ、そそそそ、そそそそそそ、そうですねえ! む、虫かもしれませんなぁ!」


「うふふ。何だか口調が変わってしまわれておりますよ、美咲様」



 口元を抑え、上品に笑うシャルロットと、冷や汗を流しながら、何とか誤魔化せたかと焦る美咲だったが。



「……本当に、悪い虫がいるものですね」



 シャルロットは、小さく呟くと。


美咲の左肩をギュッと握り、美咲の顔と自身の顔を、近づけた。



「あ、あの……、どう、しましたか?」


「ねぇ、美咲様。美咲様は毎日、その悪い虫とこんな行為をされているのですか?」


「こ、こんな行為……?」


「そう――こんな行為です」



 シャルロットは、美咲の首筋に小さく口づけ、チュッ――と音を奏でた。



「ひゃう……っ」


「誰にされているのでしょうか。思い人でしょうか。何にせよ、いけない事です。うら若き乙女だと言うのに」


「や、やめ……っ」


「ん――ちゅっ、ぷはぁ」



 美咲の制止を聞かず、舌を這わせ、唇で吸い付くシャルロット。その右手は美咲の胸元を弄っている。



「ふふ、控えめのお胸です事……可愛らしい」


「や、止めてくださいっ、人が来ちゃいますっ」


「誰も入れません。先ほど鍵をかけておきましたから」


「そ、そんな、なんで……」


「私、実は美咲様を愛してしまったみたい……美咲様のお顔、お声、その華奢なお体、そして何より存在そのものを」


「う、嬉しいですけど、私、私には……」


「もう我慢なりません。美咲様、私の全てを、受け入れてくださいまし!」


「ひぃ――っ」



 今まさに。秋音高等学校のセーラー服を脱ぎ捨てようとしていたシャルロット。



そんな彼女達の元へ――一人の女性が駆けつけた。



「なにやってんだこの似非シスタァアーっ!!」



「ぶびゃぁっ!」



 上空から、シャルロットの頭部へと肘打ちを披露した女性。その肘打ちをモロに受け、頭を抑えるシャルロット。


美咲はポカン……と言う擬音が似合う表情で、その二人を見据えていた。


シャルロットは涙目になりながら頭を抑え「な、なに!? 何事ですか!?」と慌てている。



「何じゃねぇよ、こっちが何だよ、バカじゃないの!? 何アタシの可愛い可愛い美咲をたぶらかそうとしてんの!?」



 シャルロットに向けて罵声を浴びせる、一人の女性。女性は美咲にとって見慣れた人物だった。



「は――花江さん!?」


「やっほー美咲。今このバカに変な事されてたでしょ。ホント、アンタはマジで無防備なんだから」


「あの、一体どこから……」


「色んな建物の屋根から屋根を跳んで、ここまで来た」


「花江さんって人間ですか……?」


「虚力を有効活用すればこんなもんよ。――それより」



 未だに膝を折り、頭を抑えるシャルロットを、ギロリと睨み付けた花江は、ハンッと彼女を鼻で笑った。



「久しぶりじゃない、サール・クラージュ。まさかアンタが応援だなんてね」


「まさか、美咲様の仰られていたお姉様とは――貴女の事だったのですね、野蛮人」


「野蛮人とは失礼ね。私、宮越花江と言う名前がありましてよ~?」


「そのワザとらしいお嬢様言葉はお止めなさい!」



 罵声と罵声の応酬。共に睨み合う二人。その姿を見据えながら、美咲は気になった事を聞いた。



「あの……お知り合い、ですか?」


「美咲。コイツはシャルロット・サール・クラージュ。――プリステスだよ」


「へぇ、プリステス……え」



 聞きなれた、その単語が示す意味を感じ取って。



「――ええええええ!?」



 彼女は思い切り、その場で驚きの声を上げた。



「花江さん。美咲様がどうしてプリステスの事を?」


「アタシが巻き込んじゃったの。アンタも気づいてるかもしれないけど、この子は常人より十倍近い虚力があってね」


「ほう……そうですね。アルターシステムをお持ちです。――という事は、花江さんの代わりに美咲様がプリステスに変身を!?」


「そーよ。文句ある?」


「大有りです! 一般人を巻き込むなんて、何を考えていらっしゃるのですか!?」


「将来有望だよこの子。何せ名有りの災いを討伐してるし」


「だとしても非常識です! 美咲様はごく普通の一般市民! それにこんなに可憐で清楚、戦いの『た』の字も知るべきで無いお方です! そんな方に戦いを強いるなど……!」



 議論はヒートアップしている。落ち着いて話をさせようと、その間に美咲が割って入る。



「あ、あの。私が立候補したんです。花江さんが戦えないのなら、私が戦いますって」


「美咲様……何て甲斐甲斐しい方なのでしょう……花江さん等と言う野蛮人には、到底見合いません!」


「あのさー、好き勝手言わないでよ。でもこれで、アタシがただ美咲を巻き込んだんじゃないって分かったでしょ?」


「いえ、待ってください。つ、つまり、美咲さんの首筋にあるキスマークは、貴女が美咲さんから虚力を得るための行為を――!?」


「あー、分かっちゃった? そそ、そういう事。美咲が彼氏と毎日エッチしてるわけじゃないから、安心していいよ」


「は――破廉恥ですっ、破廉恥ですこの野蛮人っ! 美咲様は甲斐甲斐しくも、貴女の代わりに戦うばかりか、体まで差し出していたと言う事でしょう!? 貴女はそれでも人間ですか!?」


「アンタ鏡って知ってるー!? ジョークで人の事言えないって意味なんだけどさぁ!?」



 ダメだ、止まらない。美咲はオロオロしながら二人の争論を聞いていた。



「大体普段から貴女の事が気に食わないのです! なぜ日本人なのに髪の毛を茶色に染めてそんなアメリカかぶれなのですか! 貴女だって自前が良いのですからそんな風にしなければいいのに!」


「うっさい、このクレイジーサイコレズ! よりによって美咲に一目惚れするとか良い目してるよ! けどアンタにはマジで美咲は渡さないかんね!」


「この田舎芋女!」


「似非シスター!」



 だがそれも、だんだん聞くに堪えない喧嘩となっていって。



「あの……ちょっと静かにしてくだざぁああああいっ!!」



 美咲は、今まで出した事が無い、喉が枯れる様な叫びをあげる事で、ようやく二人の喧騒は収まった。

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