宮越花江、守ります。-07
その日の夕食は、カップラーメンだった。
手早く食べられて、そして何より疲れた体を癒すにはこれが一番! と、花江が提案したものだ。
カップラーメンは、美咲の大好物の一つだ。花江が来る前は、コンビニ弁当、スーパーの惣菜、カップラーメンとローテーションを組んでいた程である。
電子ケトルからお湯を注ぎ、待つ時間は三分。
その時間を二人は椅子に座りながら、語らいの時間に使った。
「……ねぇ、美咲。美咲にとってアタシ、疫病神、だよね」
戦いに巻き込んで、命の危険に晒した。
そんな存在を、疫病神と呼ばぬ筈はない。
「えっと……普通なら、そうだと思います」
素直に答えた美咲の言葉に、少しだけ頭を垂れた花江。
「でも――花江さんは、それ以上に、その」
「……何?」
「私……両親が死んでから、人と接するのが怖くて、誰とも関わらないようにしようって、思ってたんです。
そんな生活をしていたら、誰からも相手にされなくなって、そして、いざ変わろう、変わらなきゃって思っても、決意なんか出来なくって……」
「なんで、決意が出来なかったの?」
「怖かったんです。新しく出来た大切な人が、両親のように、急にいなくなるんじゃないか……死んでいくんじゃないか。そう思ったら、一歩、踏み出せなかった」
でも、と。
彼女は微笑みを浮かべて、花江を見据えた。
「花江さんは、私を変えてくれました。
一人じゃ何も出来ない私に、服を買ってくれて、髪型を整えてくれて、そして――
あんなにダサくて、外の世界を映さない眼鏡を、取っ払ってくれた」
私一人だったら、絶対に出来ない事だから、と。美咲はそう言いながら、胸に手を置いた。
「そんな花江さんの事を……私、家族のように、愛しちゃったんだと思います。
大切な、私のお姉ちゃん。
だから私は、この力を得られて、花江さんを守れて、恐怖なんか――後悔なんか、ありません」
そう言った美咲の言葉を。
お湯を入れて三分経過した事を知らせるアラーム音すら聞かず、ただ胸に噛み締めた花江。
花江はボロボロと涙を流しながら、自分の行った行為を、今ようやく誇る事が出来たのだ。
「ありがとう……ありがとう、美咲……!」
「こちらこそ。さぁ、食べましょう、花江さん」
「うん……うんっ」
涙を浮かべながらも。
花江はニッコリと笑みを見せて、カップラーメンの蓋を開けた。
久々に食べたカップラーメンの味は、酷く塩っ辛い。
花江はそう実感しながらも、塩っ辛さを、心の底から楽しむのだった。




