↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
第四章【アルタネイティブ・ヴァンプ】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/190

神と神-05

アルタネイティブ・ヴァンプはただ走る。


校舎の階段を駆けのぼり、屋上に居る筈の始祖・フォルネスを討つ為に。


 一体、ヴァンパイアが階段の前に立ち、咆哮を轟かせた。腕部が肥大化し、その握力を持ってして人間を殺しつくせるだろう大型。


 ――しかし。



「邪魔っ!」



 アルターシステムを繋ぎあわせ、手首を捻ると、空中に顕現された光の剣。剣は空中で速度を得て、投擲され、腹部を貫いた。


貫かれた剣の柄を殴りつけ、ヴァンパイアを討つ。この程度は、毎日どこかで、ヴァンプやセイントが行っていた。今更止まる必要など無い。


今度は三体のヴァンパイアが行く手を阻もうと立ち塞がった。ヴァンプは苛立ちを覚えて、自らの血に命じた。



「ポニー・フォームッ!」



 両手を広げ、ただ叫ぶと、全身に循環する血流を感じた。


ドクンドクンと心臓が震える感覚と共に、ヴァンプより一度衝撃が放たれ、ヴァンパイア達は僅かに後ずさった。


ヴァンプは、それまでの姿より形を変え、両腕に搭載されたナックルを、ただヴァンパイア達に振りかざした。


 押し潰される一体と、殴り飛ばされる二体。それらの消滅を確認した所で、自身が今一度【フォームチェンジ】が行えた事を確かめた。


以前、秋音市民運動場にて果たされたフォームチェンジに、ヴァンプである瀬上直哉も、セイントである豊穣志斎も覚えが無かった。


 だからこそ直哉は、今の姿に【ポニー・フォーム】と名付けた。髪型がツインテールからポニーテールになる事からだ。ちなみに通常形態は【ツイン・フォーム】だ。


しかしそんな事はどうでもいい。ポニー・フォームになれるのならば、フォルネスとの戦いにも勝機はあると、ヴァンプは決意を固め、再び走り出す。


もう、妨害は無かった。


 屋上へと続く扉を開ける事が煩わしくて、右手のナックルで殴り壊すと、夕日に照らされるような光が、ヴァンプの視線を焼いた。



一人の男が、笑みをこちらに浮かべながら、立ち尽くしていた。



 直哉に似た少年の姿。しかし悠久の時を生き続けて来た者の視線は、ヴァンプを優しく迎え入れた。



「よく来た。アルタネイティブ・ヴァンプ。我が最強の眷属よ」


「貴方が、フォルネスか」


「応とも。しかし口を慎めよ。王の御前である」


「っ、七海っ!」



 そんなフォルネスの言葉を聞く事も無く、ヴァンプは彼の背後に捕えられていた、七瀬七海の姿を見据えた。


苦しみを堪えながら足掻く彼女を見て、ヴァンプは怒りを隠す事無く、叫ぶのだ。



「七海を返せッ!」


「返せ? 可笑しな事を言うものだ。この身体は既に吾輩のモノ。貴様のモノではない」



 話は無駄だ、と。ヴァンプは地面を蹴り、フォルネスの頭部に右手のナックルを振り込んだ。


しかし、左腕で止められた一撃。そしてヴァンプの左頬を捕える、フォルネスの拳。


屋上の給水塔まで身体を吹き飛ばされ、ヴァンプは苦しみにもがいた。



「な……七、海……っ」



 だが、立たねばならない。立って、フォルネスを討ち、この争いに終止符を打たねば――七瀬七海と言う一人の少女に、幸せは訪れぬのだ。



「な、……っ、ナオ……!」


「な、七海っ!」



 そんなヴァンプ――否、瀬上直哉の名を呼ぶ七海の声が聞こえた。



「ア、タシの事、いいから……っ、フォルネス、はよ……倒せ……っ!」


「でも、七海が!」


「いい、からっ! ……なんかねぇ、アタシ、神様になれるらしいわよ……?


 丁度いい機会だから、このまま神さまになって、コイツを完膚なきまでに、ぶっ殺してやる……っ!」



 だから手を出すな、と。七海はヴァンプへ力強く言い放った。


滝のような汗を流しながらも、不敵な笑みを浮かべて。


ヴァンプには、彼女が何を言っているのか、理解が出来なかったが、しかしコクンと頷いて起き上がり、ゆっくりと、フォルネスの前へ立つのだ。



「……フォルネス」


「なんだ、我が眷属」


「お前を、殺さないといけないんだ」


「貴様には殺せぬ。神霊としての力を持たぬ貴様には、吾輩の魂を殺す事は出来ん」


「お前が何を言っているのか、分からない。けれど、七海はお前を倒せと言った。


――だから、ボクがお前を、殺す」


「そうか。愚かな眷属だ」



 ヴァンプはそれまでの【ポニー・フォーム】から【ツイン・フォーム】へと姿を戻し、地面を這うように走り出した。


フォルネスを倒す為には、一撃の破壊力も必要かもしれないが、そも攻撃が当たらなければ意味は無い。


 つまり速度を重要視した連撃こそ、奴を討つに相応しい――!


アルターシステムを繋ぎあわせ、手首を捻る。空中に二本の剣を生み出し、フォルネスに向けて射出すると、フォルネスが床より生み出した杭が、それを防いだ。


しかし防がれる事は承知の上だった。フォルネスの背後を取り、七海の眼前へ迫ったヴァンプ。


 右手に持った剣で彼女の両手を拘束する杭を破壊するついでに、フォルネスの背中を強く蹴り付けた。


 蹴り飛ばされたフォルネスの身体。空中で姿勢を正した彼は右手をヴァンプに向けると、再び杭が床より伸びて、ヴァンプの腹部と背中を貫いた。



「がぁ……、っ!」


「吾輩は貴様を殺すつもりなぞ毛頭無い。刃を引け。ならばこれまでの不敬、不問とするぞ」


「誰――がァッ!」



 何度も何度も、アルターシステムを繋げた手首を、捻る。


 フォルネスの左右上下、四方八方より生み出された無数の刃が、彼に向けて降り注ぎ、フォルネスも僅かに目を細めた。


フォルネスが器用に刃の雨を避け、杭で叩き落としとしている間に、ヴァンプに向けて飛来する一本の剣。


 柄を握り、それを振り切り、自身を拘束する杭を叩き壊すと、ヴァンプは柄を握り直した後、それをフォルネスに向け、投擲した。


着地姿勢に入っていたフォルネスに刃を避ける術は無く、腹部に突き刺さる。一瞬動きを止めたタイミングを見計らって、ヴァンプは叫ぶのだ。



「アルターパンチ――ッ!!」


〈Alter・Punch〉



 地面を蹴り、拳を剣の柄へと叩き込んだヴァンプの一撃。粉々に砕け散る剣と共に、機械音声が〈Finish〉と音を奏でた。


爆発。爆風でフォルネスは吹き飛ばされ、ヴァンプは今の衝撃で外れてしまったアルターシステムによって、変身を解除させた。



「はぁ……はぁ……っ」



 やったか――瀬上直哉は、膝を折って息を整えつつ、爆発の行方を目で追おうとした。


しかし、爆風が風によってかき消されると。



フォルネスは、腹部に巨大な穴を持ちながらも尚、立ち塞がるのだ。



「無駄だ。――何度も言うたであろう。貴様に、この吾輩は殺せぬと」


「なんで……どうして……っ」


「貴様に僅かでも神霊としての力があれば、傷と共に痛みを与える事はできたであろう。


 しかし、人間としての枠に囚われたままの貴様では、ヴァンパイアとしての吾輩に傷を付ける事は出来ても、死に直結する痛みを与える事は出来ん」


「痛みは感じなくても、お前には身体がある! 傷を付けられるなら、その身体を粉々にして殺せば――」


「無駄だ。神霊である吾輩の肉体を殺した所で、存在そのものを殺せぬ。かつて初代アルタネイティブ・ヴァンプが成したようにな。


 存在を殺せるものは、同じ位にある神霊だけだ」



 もう諦めろ。フォルネスは諭す様に、優しく言い含めるのだ。



「吾輩は貴様を最強の眷属と見込んでいる。その才能は惜しい。


 吾輩が直接手を下さずとも、貴様は神霊以外の、人間が持つ脅威を打ち破る力を持つ。それを買おうというのだ。


 何なら、吾輩が依代とする七瀬七海の身体を、貴様に許してもよい。ここまで王たる吾輩が譲歩するのだ、一考の価値はあろう?」



 身体を許す。それが何を意味しているのか、直哉には良く理解できなかった。



しかし――それが酷く気に障った。



地に転がったアルターシステムを拾い上げ、変身し――ヴァンプは覚束ない足取りでも、走り、ただ拳を握って、フォルネスへと、振り切ろうとしたが。



届く前に、幾多もの杭が、ヴァンプの肉体を、貫いた。



思考が定まらない。もう腕の筋肉に力を入れる事も出来ずに、だらりと地に向けて、下す。


コフッ、と噴き出した血と共に、視界も僅かに陰り始めた。杭は消滅したようで、ヴァンプはただ屋上の床に、身体を預ける。

 

アルタネイティブ・ヴァンプの敗北が今――決したのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。