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アルタネイティブ  作者: 音無ミュウト
第四章【聖域のアルタネイティブ】

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戦う者-02

住民の避難が完了したという旨の報告を耳に入れた秋山志木は、無線を用いて戦闘部隊に指示を出す。



「これより対エネミー戦闘を開始する。各隊員はA-1マニュアルを参照の上、作戦に参加されたし」


『α、了解』


『β、了解』


『γ、了解』



 四六の実働戦闘部隊は三中隊存在する。中隊長の返事を確認し、志木は部下に命令を出した。



「各隊の戦闘記録を念入りに取っておけ。今後のエネミー対策に役立つだろう」


「畏まりました」



 返事も行動も早かった。


 すぐに準備へとりかかった部下を端目に置きながら、彼は胸ポケットのタバコを取り出し、口に咥えて火をつけた。



――もしかしたら、この戦いでエネミーとの戦いは終わるやもしれん。



百体以上のエネミーが出現し、それらを討伐出来れば、ミューセルは別の手段を鑑みるかもしれない。



――だが逆に、ミューセルの民が結集し、地球との全面戦争へと発展するやもしれない。



今は、答えを知る術はない。であれば、多く対策を練る事は間違いでは無いと思う。



彼は不安を胸に秘め、いつの間にかフィルター近くまで吸っていたタバコの吸い殻を地面に捨てようとした所で、かつての部下の言葉を思い出した。



『課長。道端にタバコの吸い殻を捨てないようにお願いします。市民に対して顔向けができません』



 若い女性の声が頭の中に流れて――彼はタバコの箱と共に胸ポケットに入れていた、ポケット灰皿の存在を思い出し、その吸い殻を入れた。



「今隣に君がいない事が、何より不安を駆り立てるよ……野崎」



 優秀な部下だった女性の事を思い出し、志木はふとその場で、禁煙してみようかと思考した。


そんな彼の携帯電話が震えている事に気が付くのは、数秒後の事である。



 **



ロングレーザーソード同士の斬り合い。


 ブラックシェリルは、その斬り合いをしながら、ブラックワルツと視線を交わらせ、そのロングソードを弾いた。


 片手に獲物を持ちながら、二人は互いの右手に装着されたアルターシステムに左手をかざした。



〈Alter・Punch〉


〈Alter・Punch〉



 機械音声と共に、二人の拳部に小型スラスターが展開される。


 スラスターが吹かされると、その威力を内包した拳と拳が、交わった。


ガゴンッ――と、鈍い音が響く。


 拳と拳のせめぎ合いは火花を散らしていき、二人はグッと顎を引いた。


勝敗はつかない。二人が吹っ飛び、今度はブラックシェリルが一足早く、右脚部のスラスターに手を伸ばした。



「さよならだ、ワルツ」


〈Alter・kick〉



 左足で強く踏み込み、ブラックワルツの眼前まで迫ったブラックシェリルは、右脚部を思い切り引いた後、強く突き出した。


スラスターが吹かされ、威力を確かに含んだ蹴りが、今にもブラックワルツへと放たれる――と思われた瞬間だった。


ブラックワルツは、まだ展開を終えていなかったアルターパンチで、キックの射線を変え、攻撃を避けた。


そして、それと同時に――ブラックシェリルの身体は、がら空きとなる。



「ああ――さよならだな、シェリル」



 アルターパンチが、ブラックシェリルの腹部に叩き込まれ、吹き飛ばされる。


 公園倉庫へ身体を叩きつけられた彼女は、血を口から吐き出しながら――どこか清らかな気持ちで、ゆっくりと歩いてくるブラックワルツに、視線をやった。



「……流石だよ」



 小さく呟いたその時。


ブラックワルツは、今まで手に掴んでいたロングレーザーサーベルを構え、そのサーベルを――投げ放った。


投げ放たれたサーベルは、確かな威力を内包しながら、ブラックシェリルの腹部を貫き、彼女の変身を、解かせた。


青年の姿へと戻ったシェリル。しかし、彼の口は、まだ動く。


近付いてきたワルツに、彼はただ言葉を贈る。



「ワルツ――どうして、こんな事に、なったんだろう」


「お前が余計な事しなけりゃ、お前は生きられた。虚力だけ食って、生きていけただろうよ」


「それは、出来ないよ……ボクは、人間が……大好きに、なっちゃったんだ」


「だからオレを、見捨てたんだな」


「……そう、だね。でも……いいかな、ワルツ……最後に、一つだけ……」



 頷くワルツ。彼女の同意を得た事で、シェリルはただ微笑み――言い放った。



「ボクは……君を、ただ愛してた」


「やめろ」


「君を……救いたかったよ」


「やめろ……っ!」


「君にこの感情を……教えたかったよ」



 その言葉を最後に。シェリルは目を伏せ――そして、息絶えた。


胸が苦しくなる感覚を覚えて、ワルツはただその場で膝を落とした。


 胸に手を当てて、溢れ出る涙を流しながら、ただ叫ぶのだ。



「なんで、何でこんなに苦しいんだよ……! なんで――っ!!」



 雄叫びがただ放たれる。少女の叫びは公園内に空しく響き――


彼女が、その声を、聞いた。



「それは、シェリルさんがお前を。そして、お前もシェリルさんを、愛してたからだろ」



 怒りを含みながらも、ただ言い放たれる言葉を彼、ワルツの耳にも届いた。


 アルタネイティブ・レッド・ブラスターフォームは、両手の中指に装着されたアルターシステムを整えて、ただワルツの目の前に立った。



「どうだ、愛する人を無くす無力感は。苦しいだろ、怒るだろ」


「……あぁ、そうかもな」


「お前は俺に、その気持ちを教えやがった。


 ――俺は、お前を許さない」


「もう、オレにはなんにもねぇ。


 ノザキもいねえ、食い物もねぇ、シェリルもねえ……戦いしか、ねぇんだ」


「そうかよ」



 ワルツが立ち上がり、レッドの前で涙を隠すことも無く、彼女を睨む――その瞬間、二人が拳を振り切った。



「オレは全て――壊すっ!」


「俺はお前を――殺すっ!」



 交わる拳、触れ合う鼻と鼻。


二人の少女――戦士たちは、今互いの感情を抑え込む事無く、最後の争いを開始した。

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