決意
ふぅと一つ息を吐く。
仕事を一段落させ邸へと向かう馬車の中で、アレクダレンはジャケットのポケットに手を入れる。
すると手触りの良い感触を指に感じ、それを取り出す。
カティからお礼にと贈られたハンカチだ。
青紫色のカンパニュラに指を滑らせると、少し眉を下げるもその目元は柔らかい。
寝不足で倒れるくらい忙しくしていたのに、気を遣わせてしまったかもしれない。
けれど、ロザリアにデザイン画を見せている時のきらきらと輝いていた瞳を思い出すと、胸の奥がじわりと熱くなる。
未だ、緊張はしているものの、自身の意見ははっきりと目を見て伝えてくる。
真っ直ぐ向けられる意思の強い眼差しはアレクダレンの胸に気づかぬ内に、ゆっくりと確実にその存在を残していた。
目の前で倒れた時は心底心配した。
目を覚ますまで側にいたかったが、そんな事も出来るはずもなく、それでも居ても立っても居られず、翌日には店に行ってしまう程に。
マダムから心配ないと聞き、ゆっくりと休んで欲しいと思いながらもカティの顔が見たかった。
お礼にと届いた手紙とハンカチを広げた時に焦がれている自分の気持ちを知った。
ハンカチのカンパニュラを見つめながら、ころころと変わる表情のカティを想う。
また頑張り過ぎていないだろうか。
仕事が好きなのだろう。本当に楽しそうだった。
ペン羽で額を撫でているかもしれない。
癖だと話してくれた時の気まずそうな顔を思い出してふと口元が緩む。
ロザリアの帽子が仕上がれば、きっと会う機会もなくなるだろう。
その前にこの気持ちを伝えなければ。
どんな顔をするだろうか。
早く会いたい。
邸に到着すると、ロザリアに満面の笑顔で出迎えられる。
「おかえりなさい、お兄様!カティの帽子が仕上がったそうなの!早速明日届けてもらうように頼んだのよ!」




