アクアツアー・点検中
カイトが間違ってセイレーンを放したころ、ミクは園内をさ迷っていた。
「どうしよう。これ、完全に迷った・・・よね?」
右に曲がるのを忘れていたミクは、当然のことながら迷子になっていた。
パスポートの案内図を見ても、大体の方向しかわからない。ジェットコースターからアクアツアーまでの道筋はあるのだが、そこまでの戻り方すら忘れてしまったのだ。その時、放送が入った。
『ミクさん・・・ひょっとして方向音痴・・・?』
そう言ったのは、聞いたことがない少年の声だった。
『らしいわね。しょうがないわ~このアタシが、ミクちゃんに道案内してあ・げ・る』
ウフフ。といいながら説明するモナカはありがたいのだが・・・かなり気持ちが悪い。
『ミクちゃん、ジェットコースターから右に行かないで真っすぐ進んだわね。なら本来なら真っすぐ戻ればいいんだけど、ミクちゃんはかなり複雑な迷い方をしているのね。』
『ホントだ。ミクさん、絶対変なところで曲がったんですね』
本当のことを言えば、かなり突っ込みたいことが沢山ある。それでも、ここで突っ込んだらそっちに話がそれていくような気がして、聞けずにいた。
『アタシのナビゲートをよく聞いて、それに従ってちょうだいね。まず、そこから真っすぐその方向で進んだらしっかり看板があるから、そこを左に曲がってちょうだい』
そこに着いたら、また指示を出すわ。そういって、放送は切れてしまった。
「えっと。このまま真っすぐで、いいんだよね。そっから指示を出すって言ってたけど、信じて・・・いいんだよね?」
_調整室_
そこには、モナカとグレイ、そして少年の姿があった。
「キョウ君!行きなり出てくるから、びっくりしたじゃないの!」
「あ、キョウお帰り~ねぇ、どうだった?カイトの方は」
「すみません。モナカさん。そしてただいま。グレイ。今回はセイレーンを放ったみたいだよ。
・・・まぁ、カイトさんは間違ったみたいですけど」
やっぱり間違えてたか~というグレイの反応を見て、キョウはおかしそうに笑った。
「ってことは、ミクさんを迷子にして到達時間を遅らせたのはグレイの仕業なんですね」
中らずと雖も遠からず。本当は、フォンにお願いしてやってもらったのだ。まぁ、そうなるようけしかけたのはグレイだったが。
「ねぇ、それより、聞き捨てならないことを聞いたんだけど。セイレーンですって!?」
今までセイレーンの誘惑に勝てたものは居ない。だから、カイトがお気に入りのミクにセイレーンを使うなんて、予想もしていなかったのだ。
「ミクちゃん・・・大丈夫よね?」