4-2:背中”ヘル&ヘヴン” ●
部屋に帰りついたウィルは、さっそく一日の疲れを癒すべく、シャワータイムに入っていた。
帰る前に何をしていたかというと…おじいさん達の宴会に巻き込まれていた。
「いやぁ~ムソウがいて助かったッス…」
ただでさえ、酒には弱い自分だ。また倒れるまで飲まされるところだった。
しかし、
「”東国武神”か…」
小さく、そう呟いた。
世間の情報に疎いウィルでもその称号を持つ者の凄さは知っている。
……なんか、思ったよりめちゃくちゃフレンドリーだったな…
”朽ち果ての戦役”で、多大な戦果をあげた生きた伝説ともいえる人物。
”東国”の名家である”東雲家”の当主に認められた場合にのみしか与えられない、絶対にして無二である”最強”の称号
しかし、戦役時、主君を見捨てて生き残った”卑怯者”とも聞いた。
中立地帯では、「忠義とは名ばかりで薄情な奴」「強いだけで自分本位な男」という噂もある。
……まあ、おじいさん達は噂は関係ない、って仲良く飲んでたッスけど…
出身も不明で、とにかく謎が多い。
そういう人間だ。
……ていうのは、全部エンティさんからの受け売りか…
しかし、酒の席で見た元”東国武神”の姿からは、
……なにかを隠して生きていて…生きることを自分への罰としているかのような。
ウィル自身も、噂のような人物と、感じることはできなかった。
酒を煽りながら、彼は呟いた。
―――俺様、なんで生きてんのかね…―――
ボソリと、何気ない呟きだったが、とても印象に残っっている。
ただ、強い…それだけではない。
”強さ”と、”何か”を持ち、ここにいる。
それが分かれば、とウィルは、頭からお湯をかぶった。
自分は強くなりたい。
そのために、彼から学べるものがあるような気がした。
……明日、直接会って話してみようかな…
そんなことを考えていると、艦内通信の呼びアラームが鳴った。
相手を確認すると、
……エンティさん?こんな時間になんスかね?
すぐにウインドウの”応答”の部分をプッシュ。
風呂場なので、音声のみで。
『―――あ、やっほ~。お風呂中に失礼~』
「どうしたんスか?まさか残業要請ッスか?ヘトヘトなんスけど…」
『うんにゃ、日ごろの感謝をば、ちょいとね』
その言葉にウィルは固まった。
残業、と言われるより戦慄した。
「これは…世界の終わりも近い、ということッスか…!?」
『どういう意味ぃ?』
「いえ!なんでもないッス!」
『じゃあ、感謝と終わりを同時に送ってあげる。せいぜい楽しみ、苦しむがいいわ。あ、先いっとくけどおさわり禁止だから。さわったら殺すから。そんじゃね~』
一方的に通信終了。
……一体なんだったんだろう?
と、ウィルが思っていると、
「―――ウィル。ここですか?」
その声が背後からきた。
●
へ?、と振り向く。
浴室は外側からは見えないが、内側からは不審者対策のため、扉の外にいる人間のシルエットが見えるようになっている。
ウィルは、独特の浮き沈みの少ない声音と、長い髪の影が映ったことから、
「あれ? アウニー―――」
ル、といいかけて、ふと不思議に思う。
なぜ、あんなにもシルエットに身体のラインがくっきり?
服のヒラヒラした部分すらない。
もしかして、……服着てない?
……いやいや。そんなはずないじゃないッスか~。ハハハ。
やばい、あまりにナチュラルにアウニールの裸体を想像してしまった!
静まれ邪念。察知されれば、彼女は唯一の境界たるドアを吹き飛ばして、殴りにく―――
「―――失礼します…」
アウニールは、普通にドアを開けて入ってきた。
●
「どわぁぁぁぁっ!?」
ウィルは電光石火のごとく湯船に宙返りダイブ。
予備動作すら感じさせない、自分でもよく分からないぐらい理想的な瞬発力だった。
「…ウィル、飛び込みの練習でもしてたのですか?」
背後からアウニールの声がする。
いつもどおり、なんの変わりもなく静かなまま。
「ちょ、アウニールさん!何をお考えになりながら入ってきたんスか!?」
ウィルは、背を向け、顔を真っ赤にして叫んだ。
「いえ、ウィルにお礼をしたくて来たんですが?」
「お、お礼…?」
「前の都市での騒動で、貴方は身を挺して私を守ってくれました。そのお礼がしたいと思って…」
ウィルはなんとか冷静になろうと努めた。
しかし、お礼という言葉を聞いた時点で、思春期の少年特有のなピンク色な妄想ばかり浮かんでくる。
彼女は、今、服を着てない。
裸体でこの場に乗り込んできた、ということはけっこうやばい状況なのでは?
いやむしろ、チャンスが来たということか?
すなわち、
……これが”階段”を登る時ッスか!?
エンティに、隠していたエロ本が見つかった時、
―――まあ、男の子だからね。でも、”大人の階段”登る時って不意にくることもあるから、その時は男をみせないとダメだよ?このエロガキ―――
と薄ら笑いで言われたのを思い出す。
ついでに最期の一言に反論できなかったのも。
……どうする、ウィル=シュタルク?
ていうか、
「―――あっと!?ちょい待って!アウニールさん、お願いですから腕引っ張らないでください!?」
すでにアウニールに、浴槽から大根のごとく引っこ抜かれそうになっていた。
「何故ですか?よくそうに浸かっていては、背中を流せません」
浴槽のふちにしがみつき、必死の抵抗を試みるウィル。
「やっぱりそのために風呂場に!?ていうか、ちょっいたたっ!力つよっ!?マジで肩の関節が引っこ抜けるぅ!?」
「つべこべ言わず、さっさと出てきてください」
無駄な抵抗の末、ウィルの身体は浴槽から引きずりだされてしまった。
当然、
「大丈夫…これで何も見えないッス。完璧ッス…」
目はつぶっていた。
「……何をしてるんですか?」
そんな声が聞こえる。
近い。おそらく目が合ってる状態だ。
「しっ、今、心を静めてるところッス…」
アウニールはその様子をみながら、首かしげる。
そして、ウィルの考えを推察し、
「……まさか、私が裸だと思っているのですか?」
「大丈夫!セーフッス!もったいないけど…」
「…あなたの勘違いです。私は服を着ています」
「へ? そ、そうなんスか…?」
「そうです。ですから目を開けて姿勢を戻してください」
この状況自体が問題だとは思うが、とりあえず、そういうなら目を開けてもよさそうだ。
……アウニールがウソをつくとも思えないし。
そして、開かれたウィルの視界に最初に飛び込んできたのは、
「―――こ、これは…!?」
言っていた通り、アウニールの透き通るように白い肌の大半は隠されていた。割合にして5割くらい。
彼女が身に着けていたのは、ダブルフロント型ポリエステル100%素材の―――”西”で俗に”スク水着”であった。
……ある意味、もっと危険ッスよ!?
伸縮性に乏しいため、アウニールの華奢でしなやかなスタイルがいい具合にひきしめられており、身体のラインをより強調させている。
普段着も結構ミニスカっぽくて、目のやり場困ったが、これはまさに別格の破壊力を持っている。
しかも、湯気の立ち込めるこの場では、気温の高さと湿度にさらされ、白い頬がうっすら赤く上気しており、
……普段よりもエロいんですけどぉ!?
しかし、冷静に考えて、こんな絶滅危惧指定の水着をなぜ彼女が着ているのか?
それはアウニールの口から語られた。
「エンティが貸してくれました。少し胸周りがきついですけど、これならウィルとお風呂に入っても恥ずかしくありませんから」
……こっちの恥ずかしさが考慮されてない!?
(・ω・)<フルさんスランプ中らしいので、先にできてたイラストで更新。




