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3-1:”親愛”なる者たちへ【Ⅱ】

 3人の反応は迅速。

 同時に、等間隔に横並びになり、片膝をつきひざまづく。顔を伏せ、”王”の許しか、自らが発言するまで、絶対忠誠を示すその姿。

 ”王”は、玉座につく。

 赤を基調とし、それを中心に白布と、金色の細い金属装飾がライン状に巡る、”永久”を表現する象徴的デザイン。第2装束はさらにその上から、ふくらみのある追加の布地、そこから伸びる左右合計6本の帯。その先端に取り付けられたメビウスの輪。こちらは”無限”を表現する。

 つまり、”王”は西国における”永遠”と”無限”の体現者、決して滅ぶことのない、絶対たる存在であることを証明している。

 それらの装飾が施された、”西国”で最も権威ある礼服を纏う”王”は、眼下で忠誠の姿勢をとる3大戦力に向け、面をあげよ、と許可を下す。

 謁見が開始された。


「我が親愛なる三勇よ。此度の貴殿らの招集は、”知将軍”からの発案である。よって、”知将軍”からの言を始めよ」

感謝を(ヒア)。では、恐れながらこの”知将軍”より言をつかまつる」

 ウィズダムは、立ち上がりさっと手を横に振る。その動きに従い、大小さまざまな空間ウインドウが表示される。内容は、

「―――まず、技術部の進展状況についてお話申し上げる。現状では、次期主力機競争が先端を行く様子。特に浮遊機関の小型化に着手する動きが多い傾向にある。苦心が見られるが、実装されれば”東”との戦いにおいても大きなアドバンテージを得られることが期待されております」

「ほぅ、興味深い話じゃのう」

「すでに実用化に向けた試運転を行われた模様。これを―――」


 指揮者の振り下ろしのごとく振られた指の動きに従い、一回り巨大なウインドウが出現する。

「―――第8技術部によって建造された、空戦試作機”スレイヴニル”。直接目にし、試作機ながら高い水準を備えている、と評価しております。この競争における実質的な勝者、といえるやもしれませぬ」


 しかし、とウィズダムは言う。


「問題は運用中の戦闘記録にあるゆえ、”最速騎士”の言をお許し願いたい」

「よいぞ。言を許す。”最速騎士”前にでよ」


 ”王”の言葉を受け、リファルドが立ち上がる。その表情には、いつもの天然な好青年の面影はない。人々が尊敬し、下位の騎士が目標とする、毅然にして精悍な風格にあふれていた。


感謝を(ヒア)。私から申し上げること、それは未確認の人型機動兵器の存在にあります。確認されたのは2機。どちらも飛行能力を有しており、戦闘能力も”スレイヴニル”の比ではなく、ほぼ完成されたものでした」

「戦闘記録を確認しましたが、”東”の機体と見るには、あまりに形状が似通っておらず、所属がつかめない状態にあります」

「”東”は、地上戦に特化した機体が主力になります。空戦仕様の開発は現状では考えにくいかと」

「”中立地帯”の技術による可能性も考えはしたものの、やはりあの水準までの機体が完成されているならば、代表たるものの耳にも入っているはず」

「して、代表のヴァールハイトはなんと?」

「中立地帯の機体ではない、とのこと。あの者は、中立の支持者ゆえ故意にバランスを崩しかねない虚言を言うとは考えにくいので」

「しかし、”最速騎士”は、現に見ておるのじゃ。その姿を、そのまなこに。ならば、それは事実といえるじゃろうのう」

「今後。この機体の活動に注意し、情報収集に努めてまいります。詳細は後ほどの報告をいたしましょう」

「うむ。そうせよ」

「すでに第8技術部では、”スレイヴニル”の『発展型』の開発に取り掛かっているとのこと。実戦配備も、遠くないとのこと。今後の技術展開については・・・いろいろいざこざもあるかと」

「技術部は競争意識が高すぎですからね」

「奴ら、”協力するぐらいなら死んだほうが増し”とまで言い出す始末であるからな。まったく、インテリ共はこれだから・・・」

「ふふ、難儀じゃのう”知将軍”。しかし、それもまた技術革新を進める1つの姿。今後も心せよ」

「はっ。失礼ながら、もう1つの件もお話ししたい」

「なんじゃ?」

「今回の試作機運用にあわせ、別の技術部からの依頼もあった様子。我が手元に書類が届いたのは、最近ではあるため、緊急を要する案件であったと」

「して、内容は?」

「”機械戦力開発推進案サーヴェイション”とのことであったが、詳細の確認は今後行っていく所存」

「ふむ、技術部は時折、子供のようじゃのう」

「それに伴う課程でトラブルが生じ、結果として我が精鋭部隊”知の猟犬シヤン・ドゥ・シャッス”と”両翼デュア・フリュー”が衝突した模様」

「ほぅ。”魔女”よ、言を申せ」


 これまで、聞くばかりであったユズカに発言対象が移る。

 ”両翼デュア・フリュー”は、彼女の直属の精鋭。常に彼女とともにあるなら、その行動の理由もその口から語られなければならない。

 ユズカは、感謝を(ヒア)とはじめる。


「今回の衝突については、必要なことでありました」

「”西国”の精鋭たちが互いに戦いあうことが、必要であったと?」

「いえ、ただ過程において巻き込まれたのが・・・私の”友人”であったのです。深い、絆ゆえ立場はあれど、部下を使い、このような事態に奔ってしまったこと、謝罪の言葉もありません」


 3大戦力とは、”西国”をもっとも最優先とすべき存在。それが、私情に奔っていては成立しない。本来なら、この事態はユズカの失脚もあり得るものである。


「―――それは、”西国”の民か?」


 ”王”の問いには、いえ、とすぐに答えた。


「―――”西国の3大戦力は、王の下にひとつであり、争ってはならない。互いを信じ、互いを助けあえ。生涯の友であれ”―――」


 ”王”は、”王の掟(レーグル・ロワ)”を呟いた。

 3人は、再び膝をつき、顔をふせ、忠誠をとる。


「・・・先代―――父上の言葉じゃ。3大戦力は”西国”を支える者たち。そして、それは我が親愛なる民によって支えられておる。いずれもなくして、この”王”はない。国とは、民によって創られているのだ。良かれ悪かれ、それは絆によってつながっている。それを失うことは我が苦痛である」


 なら、と”王”は、3人に向け、それぞれを言い放つ。


「”魔女”ユズカよ」

「は」

「此度の衝突の件、深き絆にもとづくものであるゆえ、不問とする。しかし、今後注意せよ。そなたも我が親愛なる友であることを忘れるな」

感謝を(ヒア)・・・」


「”知将軍”ウィズダム=ケントニスよ」

「は」

「此度の報告、しかと受けた。そなたなくして、この国は立ち行かん。頼むぞ」

光栄に(ヒア)


「”最速騎士”リファルド=エアフラムよ」

「は」

「今回の件、貴殿の活躍は聞いておる。”若きもの達”の光としてあり続けよ」

了解に(ヒア)


「みな、”西国”のため、己が力を奮うがいい。これにより謁見の終結とする!」

 ”王”は、玉座から腰をあげ、高らかに告げた。



 西国に多数存在する技術部。その中でも、ここは特殊な場所だった。

 他とは違い、機体の開発を徹底するわけでもない。

 なら、何をしているかと言われれば、誰も知らない。

 技術部の全貌は、実を言うと“知将軍”ですら、把握しきれていない。有益な開発を行えば、名声が響く。その逆は、無名のまま消えていく。そんなものだ。

 この技術部も、知る者は少ない。あまりに無名で謎が多い。周りから見れば、気にならない程度の存在感。

 それでも不思議と、ここが存続しているのは、”知の猟犬シヤン・ドゥ・シャッス”の隊長として、リバーセルを輩出した場所であるからだ。

 そのリバーセルは、今この場所に帰ってきていた。


「―――こっぴどくやられたものだな、リバーセル」


 男は、端末を操作しながら、そう呟いた。


「・・・・・手練れにあってな」


 そう返したリバーセルは、今特殊な機械で構築された半円柱型のベッドに入っていた。

 その中は、金色の気体とも液体ともとれる、何かで満たされていた。


「身体強化を施したお前と同等だと言うのは、正直信じたくないものだがな。こちらのプライドもある。とはいえ、それが世の中の厳しさになるか?勉強だな。お前もワタシも」


 ベッドの中に気泡が浮かぶ。


「妙な奴だった・・・まるで、俺の検術を初めから知っていたような動きをしていた・・・」


 リバーセルの何気ない、その言葉に、男の手が止まった。


「・・・どんな奴だ?」

「装甲付きのジャケットを着て、ウェーブがかかった髪をしていた。火傷痕もあったか・・・」


 ・・・・・まさか、”奴”か・・・・・


「どうした、心当たりがあるのか?」

「・・・いや、気にするな。お前の調整にはもう少しかかる。それまで、そこから動くな」

「どれくらいだ?」

「20日は念を入れる」

「なに、20日もだと?”イヴ”はどうする?俺は一刻も早く―――」

「―――早死にしたいのか?」


 う、と言葉に詰まるリバーセル。


「お前に施した技術は難しいものだ。不安定なまま無理をすれば、いつ細胞崩壊を起こしてもおかしくない。信用できないというなら、そこから飛び出して、その辺を散歩してきてみろ」

「・・・・・わかった。一度なくした命をくれたのはあんただ。逆らういわれはない・・・」

「それで結構。”イヴ”の件だが、一応代理を申請しておいた」

「代理だと・・・?」

「ああ、『リッター小隊』にな」

「あのナルシスト野郎か・・・奴に手柄をやるのはどうにも気に食わん」

「馬が合わないのは知っている。しかし、実力は確かだ。この際、藁をつかんでみるのも悪くないだろう。もう眠れ、調整がはかどらん」


 フン、とリバーセルは、不機嫌をあらわにしつつも、目を閉じた。

 

 ・・・・・”イヴ”、俺にはお前が必要だ。必ず迎えに行く・・・必ず、だ・・・・・


 時は進み続ける。

 新たな流れを、自然につくり、進み続ける。 

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