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d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第三章 戦闘 - Battles -

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白銀国 - Silver Empire - 1

◯白銀国・ジルバーブルク・銀冠宮・謁見の間(日替わり・午前)


この世界最大の大陸、アルテラシア大陸。そのやや西方に位置する帝国、白銀国。

大陸中央山系の西麓に連なるシュヴァルツベルク山脈に、世界唯一のミスリル鉱脈を擁し、武具の名産地として栄える首都ジルバーブルク。

鍛造の響きに包まれた活気ある工房街を見下ろし、静かに威容を保つ皇宮──銀冠宮。


その謁見の間に、緊張した面持ちのアヴェスが足を踏み入れる。


高い天井を支える梁は太く均等に並び、装飾は最小限に抑えられている。

継ぎ目のない石の壁面には、絵の代わりに武具が掛けられている。

ミスリルの全身甲冑が年代順に並び、鏡のように磨かれた曲面がアヴェスの姿を映す。


アヴェス、中央に敷かれた絨毯の上を進み、玉座の前で足を止め、礼を取る。

「白銀国皇帝陛下に、我が意をお伝えすべく参上いたしました。

バラトール共和国のアヴェスと申します」


レオン・ヨーゼフ・アルブレヒト・フォン・ジルバーブルク──壮年の白銀国皇帝が、静かにうなずく。

「君が来た理由はわかっている。

リートゥス名誉教授のご子息が、世界連帯構想の特別総会で演説したと報告を受けている」


アヴェス、視線を上げる。


皇帝レオン、アヴェスの翡翠色の瞳をじっと見つめる。

「その瞳、リートゥス名誉教授にそっくりだな。

まるで、名誉教授が私を(いさ)めに来たようだ」


アヴェス、口を開く。

「…世連におけるカナン地区の承認決議は、貴国の反対により、否決されました。

──貴国は世連創設当初からの加盟国であり、初代理事国の一つでもあります。

そのような貴国であれば、次の再討議では賛成を頂けるのではないかと、お願いに参りました」


皇帝レオン「世連の調印式には、私も出席したのだよ。

リートゥス名誉教授も存じ上げているし、世連の理念にも共感している」


アヴェス「──では、なぜ」


「この件は、我が国は賛成することになっていたのだが──」

皇帝レオン、玉座の肘掛けを指で叩く。

「私の与り知らぬ所で、そのような結果となってしまった──我が国の問題だ」


アヴェス、思わず顔を上げる。


皇帝レオン、静かにアヴェスを見つめる。

「カナン地区の民の窮状には、私も心を痛めている。

──ここは私に任せてくれないか?」


アヴェス「では、再討議では賛成して頂けますか?」


皇帝レオン「約束しよう」


アヴェス、胸に手を当て、お辞儀をする。

「心より感謝いたします」


皇帝レオン、アヴェスのリュケイオンの制服に目を留め、懐かしそうに眺める。

「私も、リュケイオンの学生だったのだよ。もう30年近く前のことだが。

世連創設に奔走しておられた頃、名誉教授と言葉を交わしたこともある。

名誉教授は、父上の示した道を歩いている、と語っておられた。

君も、父君の背中を追っているのだろうね」


アヴェス、しばらくうつむく。

やがて、言葉を探すように口を開く。

「──父が遺した道は、人類の宝だと思っています。

私は父の道を拡げ、灯りを灯したい。

暗闇を彷徨う人たちが、そこを目指せるように」


アヴェス、再度お辞儀をする。

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