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d+d【先行公開版】  作者: Hilde
【先行公開版】第三章 戦闘 - Battles -

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欺瞞 - Deception - 1

◯シオン国・エルサレム市・首相官邸・会議室


軍議のために、シオン国の閣僚と国防軍の上層部が集まっている。

その末席に、カストルム共和国営業担当ヨハンの姿もある。


シオン国首相イツハク・ベンダビッド、国防軍の面々を労う。

「昨日は遅くまで、カナン蜂起の対処に当たってくれたそうだな。

諸君の速やかな対応のおかげで、テロ攻撃から国民を守ることができた」


シオン国防相エフラム・ハザノフも頷く。

「初動対応が的確だったおかげで、民間人の被害が出なかった。

戦死した兵は、国を守った英雄として手厚く葬ろう」


「ご配慮、感謝します」

シオン国防軍参謀総長以下、頭を下げる。


参謀総長、ヨハンに声を掛ける。

「仙道士部隊隊長の迅速な第一報により、テロ攻撃に即応できた。

砲撃支援もよくやってくれた。敵騎馬隊の7割は、市街地に到達する前に撃破されたと報告を受けている」


ヨハン、笑みを浮かべて一礼する。

「お役に立てて何よりです」


シオン国家治安相レオニード・カプラン、嘆息しながら頭を振る。

「しかし──

無事に鎮圧できたから良かったものの、やはりカナン人どもは野蛮な殺人者だ」


首相、頷く。

「現存する脅威を殲滅しなければならない。我が国は完全勝利を目指す」


国防相、会議室の壁掛け時計を見上げる。

「予定より早いが、始めよう」


各閣僚が着席し、軍議が始まる。


最初に、ヨハンが控えめに手を挙げる。

「僭越ながら、私から発言してもよろしいでしょうか」


国防相「許可しよう」


ヨハン「まだ新聞には出ていないと存じますが、

昨日、世界連帯構想の緊急特別総会が開かれ、カナン地区の加盟決議が審議されました」


「なんだと…!」

閣僚たちが一様に驚愕する。


ヨハン「しかし、我がカストルムの姻戚国である白銀国が反対し、否決となりました。

カストルム共和国大統領の妹君、白銀国エリーザ皇后陛下が代表団に反対を指示され、事なきを得ました」


首相、胸をなでおろす。

「皇后陛下のご英断に感謝せねばならんな」


参謀総長、顎に手をやる。

「…もしや、カナン地区の蜂起は、緊急特別総会に合わせたものか?」


ヨハン「世界連帯構想の加盟国は、国境に魔道士協会(ギルド)の防壁が築かれます。そのため、国境の拡張を狙った蜂起と考えられます」


国防相、冷や汗をかく。

「…危ないところだったな」


シオン国防軍主席祭司エイラム・カリマンが手を組む。

「カナンの国家など、未来永劫、存在させてはなりません。

カナン川からノストルム海に至る一切の土地は、神によってシオン人のみに与えられたもの」


シオン国家治安相レオニード・カプラン、声を上げる。

「そうだ。カナン地区が国家になるなど、我らの存亡の危機だ」


ヨハン「…もう一点、申し上げます。

こちらも、いずれ新聞に載ると思われますが、

カナン地区の国家元首を名乗ったのは、アッバース国のイスマイール皇太子殿下でした」


首相、目を丸くする。

「アッバース国の…あの皇太子か?」


ヨハン、頷く。


国防相が、鋭く割って入る。

「ヨハン殿は皇太子と取引があったはずだ。何か聞かなかったのか?」


ヨハン、首を振る。

「いいえ、全く…。私も寝耳に水でして、大変驚きました」


国家治安相、忌々しげに言う。

「…食えない若造だと思っていたが、裏で糸を引いていたとは…」


(──全くだ。カストルムの新型銃をカナン地区の蜂起に使わせるとは)

ヨハン、目を伏せながら、シオン国防軍上層部の顔を順に盗み見る。

(しかし、それに気付いている者は、いないようだ。

傭兵部隊隊長には、現場の噂の範囲に留めておくよう、きつく言っておかねば)


首相が、低い声で尋ねる。

「カナン地区の加盟決議は、再び行われるのか?」


ヨハン「日程を改め、再討議されることになりました」


閣僚たちが、顔をしかめて見合わせる。


ヨハン、安心させるように笑みを浮かべる。

「しかし、何度採決されても──結果は変わりません」


国防相「頼もしいな」


参謀総長が口を開く。

「…しかし、再討議の日に、再びカナン地区で蜂起が起こる可能性がありますな」


ヨハン、頷く。

「その可能性は高いです。

再討議の日程が決まり次第、皆様にお知らせいたします」


国防相「頼むぞ。その日に向けて警戒態勢を取らねばならんからな」


参謀総長と副参謀総長が頷く。


ヨハン「かしこまりました」


ヨハン、恭しく一礼しながら、

(アッバース国に来週納品する新型銃3000丁も、再討議の日に使われる可能性が高い。

そうなれば、さすがにシオン国に隠し通すことはできないだろう。

シオン国とアッバース国、どちらにも角が立たぬよう立ち回らねば…)

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