第11話 特務機関MISTEL
通常の二話分ぐらいの量にはなりましたが根気よく読んでくださいm(_ _)m
修正済み
夕飯が出来上がり皿にパスタを盛り付けそれぞれの席に並べていく。アルは冷蔵庫から白ワインを取り出しグラスに注いでいく。
完成されたパスタはバジルとニンニクの香ばしい匂いを放つ海鮮物をふんだんに使ったジェノベーゼパスタのようだ。
「へえ、今日の夕飯はパスタなのね。久しぶりに食べるわ」
「お気に召していただけたなら幸いです」
「エルフィーネさんも早速乾杯しましょう」
「ええ、そうね。音頭をとるのは誰がする?もちろん私は遠慮するわね」
「ここはアルが音頭をとればいいのではないでしょうか?」
他の二人はもっぱら音頭をとる気はないようだ。
「仕方ないですね、僕がやりますよ」
音頭をとるにも何について言うか迷うがここは無難に境界都市へたどり着いたことでいいだろう。ワイングラスを持ち上げ音頭をとる。
「境界都市に無事到着したことを祝って乾杯!」
「「乾杯!!」」
無事到達出来たか怪しいところであるがそれを言うのも無粋なことだろう。乾杯したことをきっかけにそれぞれ食事を始める。
今日の夕飯はアルバートお手製のジェノベーゼパスタだ。ジェノベーゼにはじゃがいも、輪切りのイカ、丸々と大きなエビがパスタに盛り付けられている。
(バジルとニンニクのいい香りがの鼻腔をくすぐる。まずはソースとパスタだけで楽しむ、パスタを巻き口の中に入れると爽やかなバジルの風味が口の中で渦巻く!そこにニンニクのガツンッとした旨みが後から追いついて来て程よい味になる。
次はエビと一緒に口に入れる、噛んだ瞬間エビから溢れ出るエビの旨みを含んだ水分とぷりっぷりのエビの身が味覚、触覚、嗅覚、全てが旨みと感動に満たされる!僕はそのまま嚥下して一息つく)
「ああ.....上手い、この前のバトルバイソンの肉々しい美味さも良かったが海鮮物独特のこの旨みもまた捨て難い」
(食材の旨みに満たされた口内をリフレッシュするため僕はワイングラスを手に取る。
ワイングラスに注がれた白ワインを僕はスッと優しく口に運び入れる。
口に含んだ瞬間白ぶどうのさっぱりと柑橘系に似た風味が口の中を駆け巡る!飲み込むとひんやりといい喉越しで白ワインの爽やかさと久しぶりに飲む美味さに草原を駆け巡るそよ風のような)
「なかなか良いワインですね」
「結構料理に合うわね、甘口のおかげでスッと軽く飲めるのもいいわ」
「食中酒として良いワインを選びましたね」
各々が白ワインに対して感想を述べる。
話題は白ワインからアルの種族のことへ変わる。
「アルって見た感じもそうだけどエルフなんだよね?」
エルフィーネは始めてアルの名前を呼ぶ。
「始めて僕の名前をまともに呼びましたね」
「そりゃあ君の師匠の前で弱腰くんなんて呼べないでしょ?」
「それは納得」
「それで話戻すけどアルはエルフなんでしょ?」
「ええそうですよ」
「それで私疑問に思ったんだけどさ、アルの師匠を見た感じ、魔法系の人じゃないと思うから消去法で近接戦闘系の人だと思うんだけどそれだとアルが師事してるのが疑問に思えてさ、エルフって放出系に分類される魔法が得意だけど体内で魔力を練り合わせて身体強化する闘気に分類される近接系の技は不得意とする種族でしょ?なのになんでアルバートさんに師事してるのかなぁって疑問に思ったんだ」
(結構鋭いところ突っ込んで来たな)
これといって隠すことは無いので正直に説明する。
「ああその事ですか、エルフィーネさんが疑問に思うのも分かりますよ。僕エルフに見えますけどこれでも一応竜族とエルフの混じりモノなんです。なのでこんな見た目ですけど竜人が得意とする魔力錬成も扱えるんですよね」
「それなら納得した。ハーフの子だと見た目だけではどちらの親の適正を引き継いでいるか分からないからね」
「まっそういうことです」
「ちなみにアル達は何で戦う流派なの?」
「僕達は龍錬流魔闘術を扱いますよ」
「へぇ龍錬流魔闘術と言えばアースガルズ龍王国で古くから続く正統派武術じゃないか、弱腰くんって以外にも出来るタイプだったんだね」
「エルフィーネさん言葉漏れてますよ」
「おっそれは済まないね、私も少し酔いが回ってるようだ」
「そんなに気にしてないからいいですけど」
「弱腰くん夜はまだまだ長い、どんどん呑むぞ!」
こうしてエルフィーネさんの宣言により団欒とお酒を楽しみつつ会話に花を咲かせるのであった。
長らくお酒を飲んで語り合い時間は深夜を回ろうとしていた。
「弱腰くぅんわ〜なんでぇ〜そんなに酔ってないのぉ?これでもぉ私ってぇ結構お酒つよつよなんだよ?」
エルフィーネは思考回路が回らなくなるぐらいベロンベロンに酔っている。
よくもまぁそんなに他人の家で酔えるものだ。彼女の危機管理能力は息をしているのだろうか?
「だからあれほど飲むのやめましょうって言ったじゃないですか、そりゃエルフィーネさんは人間にしたらお酒強い人ですよ?でも僕達竜人族は毒やアルコールに対して高い分解能力があるからお酒に強いんです」
言動や行動にこそ現れてないがこれでも僕も結構酔っている状態なんだ。
「弱腰くぅんにぃ〜負けるうなぁんて屈辱的すぎるからまだ飲むの!」
「いやどんな理屈ですか、もう5本も空いてるんですよ?それもエルフィーネさんが六割ぐらい一人で飲んでますからね?そんなに飲んだらそりゃベロンベロンにもなりますよ」
(今日僕が楽しみに買ってきたワインはエルフィーネさんが大半を開けて飲んでしまった、ちょっと悲しい.....せっかく買って来たのにほとんど飲まれた ...また時間がある時に買いに行くか.....)
アルは楽しみにしていたお酒が一晩で消えてしまい少し虚しくなる。
「でも負けたくないの!」
「いや変な意地を張ってないで今日は帰った方がいいんじゃないですか?明日平日ですし仕事あるんじゃないの?」
「くそっそれを言わえたら言い返えせなあい、今日はぁ〜諦めて帰る」
そう言いエルフィーネさんはテーブルの上で眠り出す。
「ああもう、寝ないでくださいよ。ほら肩貸しますから行きますよ」
「うん」
アルはエルフィーネの肩に腕を回しエルフィーを立ち上がらせる。
「師匠、僕はエルフィーネさん送ってくるね」
「ええわかりました。ですが今日会ったばかりの女性に手を出してはいけませんよ?」
「いや何故そうなる!?僕そんなにタイプに見えないよね?そこでそんな不意打ちで突っついて来ないでくださいよ。ちょっと僕そんな風に師匠から思われていたって傷つきますからね?」
「ふふっ私も結構酔いが回ったようです。冗談ですよアル、私もこれにて失礼しますね」
「了解師匠、おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
アルバートと言葉を交わしエルフィーネに肩を貸しながら彼女を家に送るべく家の場所を尋ねる。
「エルフィーネさん部屋どこですか?」
「うん?あぁ私の部屋わぁ〜そこ!」
エルフィーネさんは酔いながらビシッと僕の部屋の真右隣のドアに指をさす。
(真隣かよ!!)
思わず心の中でツッコんでしまう。
「エルフィーネさん玄関に着きましよ。これから後は一人で行けますね?」
「あぁもうしんどぉい吐きそう.....ベッドまで運んでぇ〜」
「ちょっ!?リバースされたらシャレになんないですからね!?早く家開けてください!鍵どこにあるんですか?」
「はぁい、これ〜」
たどたどしい口調でエルフィーネはポケットに手を突っ込み鍵を取り出す。
「家入りますからね?本っ当にいいんですね?」
「うん、いいよぉ」
「あぁもうこの人酔ってるにしろもう少し警戒とかしないのかよ!?それに男手に囲まれた状況でよく頭回らなくなるまでお酒飲んだな」
本来入るべきではないのだがやむを得なくアルはエルフィーネを引き連れて彼女の寝室に入る。
「エルフィーネさん鍵は閉めてポストの中に入れときますからね?」
「うん、りょ〜か〜い」
それを言い終わると彼女は電源が切れたかのように一瞬で眠りに着いた。
「本当この人も不用心すぎてこっちの心が持たないよ.....」
アルは彼女の部屋を出て鍵を閉め、玄関ポストの中に鍵を入れ自分の部屋へ戻るのだった。
「あぁ僕も結構飲んだからしんどいなぁ、それでもエルフィーネさんに比べたらマシなんだろうけど」
部屋に戻ってからすぐにシャワーを浴びて、風呂場から上がり終わると着替えてすぐに寝室に直行しベッドの大海原へとダイブする。
「ああもう、ほんとなんだったんだろう。エルフィーネさんは本当に警戒心無さすぎだよ.....僕みたいな女性免疫皆無の人種だって世の中にはいるんだよ!?それを分かってるのかなぁ、こうもう少し気を引き締めてくれないとメンタルが悶え死んでしまう.....」
ダイブしたベッドの上で先程のことを思い出してしまい足をバタつかせ悶える。
「はぁ、彼女の距離感には困るけど今日が初対面の僕に頼ってもらえたのは少し嬉しかったかな」
その後もうだうだと悶えていたアルであるがお酒を飲んでいた影響もあってそのまま睡魔に抗えずベッドの上で眠り着くのだった。
翌日いつもより少し遅めに起きたアルは早速洗面台に向かい顔を洗う。
「ふぅ、昨日は久しぶりに多く飲んだな....いつも多くても一本しか飲まないからちょっと胃がムカムカするなぁ、それに口の中お酒臭くないかな?そこは清涼食品系食べて誤魔化すか」
洗面所からキッチンに向かい朝食を作る。
昨日作って残っているジェノベーゼソースを食パンに塗りウィンナーを輪切りにして上からチーズを被せトースターの中に入れ焼く。
パンを焼いているうちにお湯を沸かしテレビを見る。
「グッドモーニング境界都市の皆さん!月曜日のニュースをお送りするぜ。最初のニュースは最近巷で再燃していることについてだ!」
「先週もらアメリカ大使館前にて異界融和反対派による抗議デモが連日行われいます」
「いやあまさか今になってまた騒ぎ出すなんて驚いたねジェームズ!」
「ええ異界が繋がり五年も経った今、落ち着いた様に見えましたが彼らにとってはまだまだ認めることは出来ないのでしょう」
熱血タイプとクールタイプの凸凹コンビがニュースの司会者を務めている。
「へぇ、やっぱ少なからず反対する集団はいるんだね.....この街ができて五年、地球とアースガルズは切っても切り離せない関係まで来ているのに今更何がしたいんだろう?」
アルがニュースを見ている間にお湯が沸きパンが焼けたようだ。ティーポットに紅茶の茶葉を入れお湯を注ぎ、なんちゃってピザトーストをトースターからお皿に移し朝食を摂る。
なんちゃってピザトーストを食べ終えニュースを見ていると玄関がノックされる。
玄関を開けるとアルバートが来ていた。
「アル起きていたようですね。30分後には組織に向かおうと思うのですが大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。30分後エントランス集合でいいですか?」
「ええそれで結構ですよ」
「それでは30分後に」
アルバートと集合時間を決め洗い物の片付けと組織に向かう準備をしているとあっという間に20分が過ぎ慌ててエントランスまで降りる。
「お待たせしました!」
「いえいえまだ5分前ですから大丈夫ですよ、それでは出発しましょうか」
アルバートと共に車に乗り特務機関MISTELへと向かう。
20〜30分程、車で移動し普段一般人が通る繁華街から離れた一件の建物に辿り着く。
辿り着いた建物は古びた三階建ての建屋になっている。
「師匠、ここがその例の場所ですか?」
「ええそうですよ」
合衆国と龍王国が支援し、地球各国に影響を持つ組織の本拠地には全くもって見えない。
「えっ、ほんとにここなんですか?」
「そう言ってるでしょう?さっさと行きますよ」
アルバートはそう言い建物一階の古びた扉を開ける。そうすると突如、古びた扉には魔術式が蔓延り眩い光を伴った後、扉を開けきったその先に広がるのは広々としたエントランスとなっていた。
エントランスの中は中央に受付らしきものがあり多種多様な人種の人々が慌ただしく働いている。
アル達が扉をくぐる前は廃れた街の光景が広がっていたが扉を越えた先のエントランスの窓から見える組織の外の風景は天高くそびえるビル群と遥か遠くまで伸びる青空が広がっていた。
「師匠....これ、時空間魔術の応用で空間同士を繋げる"ゲート"の一種ですよね?」
「ええそうですよ、組織の居場所を特定されないための工作のひとつでしょうね」
敵対者に本陣を特定されないために術式難易度が高い亜空間系の術式を込めた扉を用意するとは予想外だ。時空間系統に分類される亜空間魔術を人が通れる程のゲートとして運用するのはかなり高い技術を要求する。それに加え入口と出口の距離が離れれば離れる程術式難易度は高くなる。それをこの組織は維持し、職員が誰でも扱えるように数を揃えることも含めこの組織の大きさを物語っている。
「ほらさっさと"ボス"のところに行きますよ」
アルバートに先導され長い廊下を歩き一番最奥の扉の前に立つ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
「いやそうは言ってもこれから三年間は所属する組織の長に挨拶するんですよ?緊張するなって方が無理ですよ」
「まあまあ落ち着いて深呼吸してください」
心を落ち着かせるべく深く息を吸いゆっくりと息を吐き出し、精神を安定させる。
「ほら落ち着いたでしょ?それでは行きますよ」
アルバートが扉をゆっくりと開けると広々とした部屋の奥にはジーパンにラフなTシャツを着た金髪の無精髭を生やした一人の男がいた。
「君たちが龍王国から派遣されて来た二人だな?俺がここのリーダーをしているアダム・ジェイソンよろしく、ようこそ特務機関MISTELへ」
彼ことアダムはアル達を歓迎してくれる。
彼と所属する部門について詳しく話をしようと話始めた途端、盛大な音と共に扉が開かれる。
「遅れてすみませんッ!!」
勢いよく開かれた扉らと一緒に突如一人の人物が部屋に入ってくる。
「うん?」
「おや?」
「えっ!?」
「えっ、弱腰くん?」
そこに現れたのは大急ぎでやって来て息を切らしたエルフィーネの姿があった。




