柊一真・五日目・01「予感」
「なあ、柊。お前、天音嬢達と新しい部活作ったんだってな?」
休み時間、後ろの席の磯谷が話しかけてきた。
さっそく磯谷のアンテナに引っかかってしまったわけだ。
「まあな」
「いったいどんな部活なんだ?」
「ただ部室で、雑談するだけのつまらない部活だよ」
まさか〝機関〟に対抗するための部活だなんて、言えるわけがない。
「ふーん、なんとか機関と戦う部活だって訊いたんだが? 違うのか?」
「…………」磯谷の奴、もしかして知ってて訊いてきてるのか?
「部員全員が超能力者なんだろ? 知ってるぜ。テレパス、透視、未来予知、時間操作」
磯谷は俺を試すような目で見つめてくる。
「あはは、超能力? そんなのあるわけないって」
俺は笑って誤魔化した。
桜木さん達が超能力者なんてバレたら、大変なことになる。
「……あるわけない? あるけないなんて、あるわけないだろ!」
「え? 磯谷どうした? なんだかおかしいぞ」
「ごめんごめん。ついムキになったちゃったよ。あはは、悪かったな柊。部活がんばれよ」
そう言って磯谷は一方的に話を打ち切った。
磯谷の奴、超能力があると信じているのだろうか。
超能力を否定した時の真剣な表情はちょっとおかしかった。
それにしても磯谷はなぜ超能力のことを知っていたのか?
能力のことは部員以外は知らないはずだ。
なんだか嫌な予感がする。
部室に入った瞬間、どんよりとした重い雰囲気が押し寄せてきた。
天音はまだ来ていないようで、桜木さん姫宮、神崎が下を向いたままただ押し黙っている。
俺は戸惑いつつも椅子に座った。
そして重苦しい空気の原因を知るためにみんなに訊ねる。
「何かあったのか?」
「「…………」」
無言だ。俺の問いに誰も答えようとはしない。
あの桜木さんまでも反応をしてくれない。
昨日までは楽しく話していたりしたのに、この急変ぶりはいったいなんなのだろう。
とんでもない大事件が起きたのだろうか?
もしかして、超能力者だということが外部に漏れたのか?
だが超能力を信じる奴がどれくらいいる?
ほとんどの奴はただの冗談だと思って信じないだろう。
信じるとすれば〝機関〟の奴ら。
そうだとしたら、この重い雰囲気も納得出来る。
本当に〝機関〟の奴らが来たら、俺達は捕まりどこかに監禁される。
超能力を軍事利用するために、どこかの研究所で人体実験をされるかもしれない。
俺には能力が無いから、助かるかもしれない。
だが、三人は捕まったら終わり。
「桜木さん、いったい何があったんですか? 俺になにか出来ることはないんですか? なんでもします、だから相談事があるなら言ってください!」
俺は自分の正直な思いを口にした。
「…………」
桜木さんはゆっくりとした動作で顔を上げた。
姫宮、神崎も俺のことを見つめている。
「桜木さん!」もう一度俺は呼びかける。
「……柊君、一緒に屋上に来て貰えますか?」
「わかりました」
俺は頷く。二人だけで話をしたいということだろう。
だが、能力がバレた話なら姫宮や神崎にも関係がある。
四人で話し合った方が、良いと思うのだが。
違うのだろうか?




