24 黄金イベント?そんなのあるわけないだろう!
ダンジョンの出口を目指して進んでいる俺たち。。
幸いというべきかなんというべきか、本来浅い階層では出没しないはずの強力なモンスターが出てきたとのことで、多くの初心者冒険者たちが出口へ向かって引き返しているところだった。
その人波に便乗して、俺とアリオスは出口へと向かっていくことができる。
あんなハイテンションなモンスターでも、思わぬところで役に立つこともあるんだな。
まあ、代わりに多くの冒険者の夢とか希望とか将来設計とか、いろんなものをぶち壊した気がするけど。
……とはいえさ、冒険者なんて危険な職業はやめておいた方がいいんだよ。
だってソールイーター先生は命までは奪わなかったけど、冒険者なんて続けていたらいつモンスターに殺されるか分かったものじゃないからね。
俺なんて、すでにアリオスとゴブリンで2度も殺されたんだよ。
俺の場合は特殊だから本体が死ななければたぶん死ぬことはないだろうけど、普通の人間は一度死んだら、イコール人生のお終いだ。
だから、君たちは冒険者なんて命懸けの仕事をしないで、町や村で危険からは縁遠い生活をするべきなんだ。
何々、俺の考え方が年寄りすぎるだって?
人間、生きていてこその物種よ。死んでしまったら、意味がないからな。
だから、例え地味な生き方でも、長く生きてこその人生ってものでしょう。
と、ソールイーター先生でやらかした出来事を、適当な美談っぽくねつ造しておこう。
「その方が俺らの精神衛生的にいいしな」
(だよなー)
周囲の冒険者たちの痛々しい姿に耐えられなくなって、俺たちは自分に都合のいい自己解釈をするのだった。
なお、この後も数フロア階段を下りていった。
途中で3人の女性だけでパーティーを組んでいる冒険者がいて、彼女たちは女戦士に、魔法使い、そして神官っぽい服を着ていたからヒーラーと思われる女性だった。
彼女たちの顔には、なぜか怯えと焦燥が浮かんでいるけれど、一体あれは何だろうねー。
ハハハー、俺分かんないやー。
そんな彼女たちはホーンラビットに襲われていた。
たぶんホーンラビットってかなり弱いモンスターだと思うけど、盾を持って女戦士が必死になって防御している。
"何かのせい"で精神的にかなり追い詰められていたのが原因のようで、その動きはひどく鈍く、ホーンラビットの体当たりを防ぎきれずに女戦士が尻餅をついて地面に転がる。
「クッ、ウッ、アアッ、来ないで」
なんてエロイ声を上げる女戦士。
その後ろで魔法使いの女の子が魔法を詠唱しているけど、こちらも精神の問題のせいか呪文を唱え間違えて、魔法を何度も不発させていた。
ヒーラーの女の子なんて、手にした杖を握りしめてガタガタと小刻みに震えている。
そして白い神官服を着ていたけれど、下半身のあたりがちょっと黄色く染みになっていた。
これはアレだ。ソールイーター先生が、いたいけな女の子相手にやらかしてしまったんだ。
あまりにも怖くて、出しちゃったんだね。
で、あまりにも苦戦しているようだったから、そこに銅の剣を持ったアリオスが割って入って、奴はあろうことにもイケメンオーラ全開であっさりとホーンラビットを一撃のもとに切り捨てた。
「皆さん大丈夫ですか?」
なんて白く輝く歯を見ながら、奴は女性パーティーに語り掛けていた。
……なんて黄金イベントはなかった。
うん、ただの俺の妄想だ。
本当にそんなことがリアルであったら、俺の嫉妬の炎が大爆発して、炎魔法でこのフロアごとアリオスの奴を始末していただろう。
例え俺と同じ人格であろうと、そんな黄金イベントが起こったら許さんぞ。いや、むしろ俺と同じ人格であるからこそ、余計に許すことができん!
もっともそんな都合のいいイベントなんて存在するはずがない。
でも俺たちの目の前では、実際にホーンラビットに襲われている女だけの冒険者パーティーはいた。
ただし女戦士はガチムチの筋肉ゴリラみたいな女で、しかも目の毒にしかならないビキニアーマーを着ていた。
体中の筋肉がむき出しになっていて、それを見るだけで見ている側の目が腐ってしまいそうな怪筋肉。
これで顔が美人だったら許されるのだが、暗黒街で黒い服を着た強面のお兄さん方でも裸足で逃げ出しそうな、超極悪面をしていていた。
「フンガー」
そんなゴリラ女戦士は、鋭い角で突撃してきたホーンラビットの一撃を盾で受け止める。
そしてゴリラのような雄叫びを上げると、盾を振り上げてホーンラビットの体を吹っ飛ばした。
「ウオラー、死にさらせー!」
そのあとガリガリの骨のようにやせ細った魔法使いの女の子が、不健康極まりない見た目に反して突撃。
手に持っていた杖を振り下ろし、ホーンラビットの頭を粉砕していた。
杖の一撃で頭を粉砕されたホーンラビットは、ドパッと音を立てて、血肉を周りに飛び散らせて死亡。
(ウゲェー、グロやめてー)
しかし魔法を使わない魔法使いがここにいたよ。ただし彼女が童貞かどうかは知りたくもない。
なお、女魔法使いは恐ろしく病的な肌の色をしていて、こちらも美人でなかった。夜に出てきたら、悪霊退散って叫びながら、全力で逃げ出したくなる顔してる。
モンスターになってしまった俺がそう思うくらいだから、大概だよ。
「これ、今日の晩御飯にしましょう」
そして最後に、白と青地をベースにした神官服をきたヒーラーの女の子が、頭が粉砕されてなくなっているホーンラビットの体を、怖がりもせずガシリと掴んで持ち上げていた。
衣服は白と青がベースの服のハズなのに、なぜかそこら中が血で赤黒く染まっている。あと、顔や髪にも乾いた返り血がついてるんですけど。
ホラーで、物騒極まりないヒーラーさんだ。
「ガハハハ、今夜は肉だー」
「ククク、肉だ、肉」
「おいしくいただきましょうね」
女冒険者パーティーはそう言って、満足そうな声を上げていた。
――ソローッ
そんな見るだけで危険極まりない女冒険者パーティーを見たせいで、俺とアリオスは自然と彼女たちから逃げるように、進む方向を大きく迂回することにした。
「ああいうのには、関わらないのがいいな」
(賛成、目をつけられたら地獄に連れていかれそう)
幸いにも俺とアリオスは女冒険者パーティーに目をつけられることなく、この場はなんとかやり過ごすことができた。
しかし、人間って怖いね。
ソールイーター先生なんて、あの女冒険者パーティーに比べたら全然可愛い方だよ。
いやマジで。




