23 人でなしのろくでなし
俺が日本人の記憶を取り戻すまでの間に、シャドウがモグモグし続けて、影空間にため込みまくっていたアイテムの中から、なんとかアリオスの装備品を探し出すことができた。
さあ、これで全裸で逮捕の心配もなくなったから、安心して人里へ向かうとしよう。
レッツゴー。
と、俺はノリノリだったけど、アリオスからストップが入った。
「ところで防具はいいけど、俺の武器は?」
(め、目がショボショボするので、もうアイテムリストの中から探すのは嫌です)
「お前目玉ついてないだろう」
(じゃあ、頭の使い過ぎでもう無理。働けない)
「頭もついてるのか?」
シャドウはアメーバ状の姿をしている。おまけに体の厚さはほとんどなくて、まるで紙のようにペラペラだ。
目玉どころか、物理的な頭があるようには見えない。
(ファ、ファンタジー生物な俺に対して、地球の知識を持ち出してくるなよ)
「……」
なんて感じで、しばらく俺とアリオスは無言の対峙を続けるわけだった。
でもさ、アリオス用の装備を探す作業は本当に大変だったのよ。
おじさんいつまでもリストの中から細々としたアイテムを探すなんて嫌だよ。
大体俺って、前世ではサラリーマンしていたけれど、かなりいい加減な性格してたしなー。
クビにならない程度に仕事を頑張って、家に帰ったらビールを飲んで適当にダラダラテレビ見ながら冷食食べてた程度の人間だし。
「はあっ、なんでこんな奴が、俺と同じ人格なんだ?」
(そうは言うけど、お前だって俺なんだから、相当いい加減な性格してるはずだぞー)
「……」
(……)
なんだかモンスターにソウルハック仕掛けた時より、人間にソウルハック仕掛けたときの方が、並列存在の性格が悪くなる傾向があるな。
その後、俺たち2人は不毛なにらみ合いを続けた。
けれど、いつまでもそうしていられないので、再び人里を目指すべく、ダンジョンの出口目指して進んでいくことにした。
そうしてまずは、草原の中にある下へ続く階段を下りていく。
下の階では、先ほどまで俺が暴れまわっていたのが原因で、いまだに死屍累々の惨状が続いていた。
「だ、誰か助けてくれ……」
「お、お母さーん」
「うっ、うあ、ああああっ!」
……ソールイーター先生の時は、調子に乗りまくっていたから気づかなかったけど、なんだかこの階層にいる冒険者たちは、地獄に突き落とされたかのような凄惨な有様になっていた。
「……」
(……)
俺とアリオスの2人は、もちろんソールイーター先生に乗り移っていた時の記憶を持っているわけで、この惨状をしでかした犯人として、冒険者たちに気づかれないようにソーっと移動して、さらに下へ向かう階段目指して逃げていった。
……ハ、ハハハッ。
俺は悪くねー。
そう心の中で自己弁護する。どう見ても悪いのはソールイーター先生です。俺じゃないです!
俺は、ソールイーターなんてモンスターとは全く関係ない、ただのシャドウですからー。
良心がグサグサ痛むけど、悪いことをしでかした時の人間ってやつは、自分の犯した罪を真っ向から認めるか、でなければ逃げていくかのどちらかだからねー。
はっ、ハハハー。
思わず、乾いた笑いが出てきちまう。
そんな感じで、ソールイーター先生が暴れまわった階層を超えて、さらに下へ向かう階段を突き進んでいった。
「……人でなし」
(……お前もな)
すでに生命創造なんて倫理的にヤバイことを仕出かしてる俺たちだけど、ハイテンション過ぎたソールイーター先生のしでかした出来事を目の前にしたことで、互いに責め合った。
まったくもって俺たち2人は、不毛極まりないな。
その後さらに下の階への階段を見つけて降りていく。
「俺、冒険者やめて故郷に帰って畑耕すわ」
「私、安全な町で暮らしていく。手に職なんてないけれど、それでも日雇いの仕事でもして……」
この階層にも冒険者たちがいたけれど、なぜか全員が陰惨な顔をしていて、そんなことを言っていた。
これはアレだね。
ソールイーター先生のせいだね。
あの階から、ここまで降りてきた冒険者たちなのだろう。
つまり、彼らがそんなことを言っているのは、俺のせいってことか。
(アリオスの人でなし)
「本体のろくでなし」
そんな感じで俺たちはその後もギスギスとした会話をしつつも、冒険者たちの方を見ないようにしながら、ダンジョンの出口を探してさらに進んでいった。




