20 ソールイーター先生、悪質な初心者狩りをする
ダンジョンの草原エリアを俺とソールイーター先生で仲良く歩き続けた結果、この階ではやたら多くの冒険者がいるのが分かった。
そして上の階と同じく、この階にも相も変わらずゴブリンがいるけれど、冒険者たちはそんなゴブリン相手に戦っている。
ただ上の階と違って、この階のゴブリンたちは群れでなく、単独で行動しているものが多い。
あと額に巨大な角を持つ一角兎なんてモンスターもいた。
総じてこの階層の方が、上の階に比べて敵の強さが低いようだ。
そして冒険者が多いってとことは、ここは初心者冒険者向けの狩場か何かかな?
ただそんな場所に、ソールイーター先生がご登場あそばしたわけだ。
初心者冒険者のレベルがどれくらいか分からないけど、この階でレベル10を超えている冒険者なんて、そうそう滅多なことではいないだろう。
対して、ソールイーター先生のレベルは76。
これはあかん奴や。
RPGの最序盤で最初の街を旅立ったレベル1の主人公が、街を出た途端いきなりレベル76のモンスターにエンカウントしたようなものだからね。
『ガハハハハ、人間どもよ我が力の前にひれ伏せー!』
そしてテンションハイのソールイーター先生はレベルとスキル差に任せて、次々に初心者冒険者たちへ襲い掛かっていった。
……あのすみません。俺もあなたも元日本人なんですけど、完全にやってることがRPGのモンスターなんですけど。
だけど、俺の突っ込みなんてノリノリとソールイーター先生には全く聞こえていない。
『深淵魔法、地獄門!』
『腐敗と毒の沼地より立ち上れ暗黒の霧』
『闇よ敵をからめとれ、影の呪縛!』
次々にソールイーター先生の放つ魔法が炸裂し、その威力の前に初心者冒険者たちは完全に戦意喪失して腰を抜かしてしまう。
ただ人間相手なので、攻撃先は地面だ。今回やっているのは、あくまでも威嚇射撃(この場合は威嚇魔法というべきか?)に過ぎない。
その後はソールイーター先生が、手ずから精神汚染攻撃を仕掛けて、冒険検者たちの意識を刈り取っていった。
まあ意識を刈り取るというか、精神が犯されてるからなー。
この冒険者たち、下手すればとんでもないトラウマを心に抱え込むことになるんだろうけど。
とはいえそんなソールイーター先生の横暴に対して、シャドウである俺は手を出せないので傍観しているしかなかった。
だって、俺、視力0なんだもん。
そんな盲目の俺に、ソールイーター先生をどうにかできるわけないしー。
そんな風に考えて、俺は現実逃避していた。
(もう嫌だ、ソールイーター先生の人格が暗黒サイドすぎる)
その後初心者冒険者を気絶させまくったソールイーター先生。殺しはしていない。だけどダンジョンのワンフロアが倒れた冒険者で死屍累々と化してしまった。
殺してないけど死屍累々とはこれいかに、という惨状だ。
『フハハハハ、ワレ最強』
(最強というか、単にレベル差で圧倒していただけじゃん。これがオンラインゲームなら、悪質なPvPの初心者狩りだね)
俺だって前世では日本人だったわけで、当然オンラインゲームもいくつかプレーしている。
初心者狩りをする上級プレーヤーって勘弁して欲しいよねー。
ちなみに俺の場合、オンラインゲームでは上級とか全く関係なしで、ネットの知り合いとゲーム内でひたすらチャットしまくって、ゲームはまったくプレーしてなかった。……なんてことを、何度もしてたけど。
ネットゲだとガチ勢の対義語にエンジョイ勢って言葉があるけれど、俺の場合はエンジョイ勢どころか、チャット勢かもなー。
で、散々暴れまわったソールイーター先生だけど、散々好き勝手に暴れまわってから、ようやく冷静になってきたようだ。
『ところでワシ、なんで戦ってたんだっけ?』
をぃっ、あれだけ暴れておいて今更かよ!
(あのなー、俺たち人里目指しているのに、なんで人間相手に攻撃してるわけ?君さー、ちょっと強くなったからって、初心者狩りして暴れまわらないでくれるかなー)
『ムムッ、すまぬ……』
ハイテンション状態から落ち着いたようで、今頃になって自分のしでかしたことがまずいと気づいたソールイーター先生。
(てかソールイーター連れたままだと、俺たちって絶対に人里……というかダンジョンの出口まで行くの無理だよね)
『だなっ』
この辺りにいるのは初心者冒険者だから問題ないけれど、このままダンジョンの出口目指していったら、確実にもっと強い冒険者も出てきて、血みどろの殺し合いに発展しそうだ。
ダンジョンの出口の先には、当然人が住んでいる集落なり街なりがあだろうから、そんなところにソールイーターが出ていったら大惨事確定だ。
人間の側も、ソールイーターがダンジョン外に出ないようにと、総力戦を挑んでくるだろう。
その時は、この辺りにいる初心者冒険者だけでなく、もっと強い面々がいるはずだ。
でも俺は、戦争をするために人里を探してるわけじゃないんだ。
だから、このままソールイーター先生を引きつれたままでは不味いなんてレベルじゃすまない。
その結論に至った俺たち2人はUターンして、とりあえずひとつ上の階層にまで戻ることにした。




