16 見えない壁と、俺死す!
「ギャ、ギャウ、ギャヒー」
前回ゴブリン(メス)にソウルハックを仕掛けたことで、性転換を果たしてしまった哀れな並列存在。
というか感覚を共有しているのでシャドウの俺まで、なぜか羞恥心を感じてしまっていた。
なんだか、物凄く悲しい……。
(股下がスースーするのは我慢しようだか。最初の目的である見えない壁を確認してくれ)
「ギャウー」
俺が頼み込むと、ゴブリン(メス)は涙目で頷いてくれた。
……なんだか足をクネクネとさせていて、凄く頼りない。
風がスースーする違和感に耐えられないからだ。
でもさ、こんなことならゴブリンでなく、人間の女の子ミィナちゃんでやればよかった。
だって、人間の女の子がこんな姿を見せていたら、おじさんの中にある衝動が……
「ギャウーッ!」
なんて考えてたら、ゴブリンに怒られてしまった。
『お前さ、並列存在で中身が男なんだぞ。
しかもやらされる俺のことを考えてないだろう!』
と言われてしまった。
そうだよね。
それに並列存在の体が死ぬと、人格が統合されてしまう。
そうすると、その時に感じていた羞恥心を、本体側の俺だって記憶として持ってしまうわけだ。
うわー、オカマになってる俺の記憶なんて欲しくねー。
と、バカなことをやっている俺とゴブリンだけど、なんだかんだで当初の目的へ戻った。
――ピタッ、ペタペタペタ
ゴブリンが何もない空間に手を当てると、そこには確かに壁が存在していた。
ゴブリンの手がそれ以上先へ進むことを阻む、透明な壁がある。
その向こう側には相も変わらず草の生えた草原がどこまでも続いている。風がそよぐと、草の葉がサワサワと音を立てているのに、その壁から先へは進めない。
ついでに見た目は影っぽい謎生物のシャドウである俺も壁に触ってみたけど、やはりそこから先へ進むことができなかった。
(この壁、どこまで続いてるんだ?)
試しに壁に右手を当てたまま、そのまま横へ移動し続けてみる。
それから歩き続けて、数キロ分は歩いたと思う。
だけど、壁は途切れることなく続ていた。
(もしかしてこれはアレか。RPGの平原マップとかに存在する、それ以上先に進めない壁か?)
そんなバカなー。
と言ってしまいたいけど、ここは異世界でファンタジーな世界だからな。
魔法があって、モンスターがいるばかりか、シャドウみたいな訳の分からない生物まで存在している世界だ。
よし、これは壁だと思い込むことにしよう。そうしよう。
大体さ、俺ってあんまり頭がいいわけじゃないし、グダグダ考え続けるのはやめだ、やめ。
(よし、壁のことはもういいや。それより人里探しの旅に戻ろうぜ、ゴブリン)
「ギャウッ」
というわけで、俺たち2人は目には見えない謎の壁のことはそれ以上考えないことにし、再び人里探しの旅へ戻ることにした。
人間、深刻に考えすぎないで適当に生きるのが、心の健康には欠かせないさ~。
前世の俺も、結構いい加減な性格してたからなー。
(ハッハッハッー)
「ギャッギャッギャッー」
俺とゴブリンは2人して暢気に笑いあった。
「ゴブリンがいたぞ、仕留めろ!」
さて、暢気に笑いあっていた俺たちだけど、その後人間に遭遇した。
アリオスが装備していた皮の鎧と、似た鎧を装備した男が1人。
いかにもRPGゲームの前衛職ぽい姿をしている。ただしアリオスと違って、武器は剣でなく槍だ。
「私の魔法で先制します!」
そしてその後ろには、いかにも魔女っ娘なローブを着た女の子がいた。
顔にソバカスがある女の子で、決して美人ではないけれど、それでも朴訥とした愛らしさがある。
ところで君たちの言ってるゴブリンって、一体どこにいるんだ?
俺には分からないなー。
……
うん、わかっているよ。
単に現実逃避しているだけだって。
そして俺が現実逃避している間に、魔女っ娘がブツブツと魔法の呪文のような言葉を呟いている。
いや、あれは間違いなく魔法の呪文だなー。
ハハハ、伊達に大賢者なんて呼ばれるスキルを俺はもっちゃいないぜー。
なおゴブリンの方には大賢者スルキがないけど、俺と感覚を共有することで、女の子が放とうとしているのが風属性の魔法だと理解できた。
(てかさ、ゴブリンさんよ)
「ギャウッ?」
(生命創造した時は適当に選んだけど、いま改めて君のステータス見たら、レベル一桁の上に、スキルが何もないんだよ。確実に、やられちゃうね)
「ギャギャッ!」
「ウインドカッター!」
なんて俺たちが話している間に、魔女っ娘が魔法を完成させた。
「ギャワッ!」
(イデーッ!)
ウインドカッターがゴブリンの体に命中。剣で袈裟懸けに切られたように、肩から腹へパックリ開かれた傷ができる。
シャドウの俺には物理攻撃無効化以外に、痛覚無効スキルがあるけれど、ゴブリンの方にはない。
でも並列存在で感覚を共有しているのが原因か、痛覚無効スキルがありながら、シャドウの俺まで感覚を共有して滅茶苦茶痛くなる。
「よっしょ、とどめは俺に任せとけ!」
「ギャー!」
俺とゴブリンが痛みで悶絶する中、槍を構えた前衛の男が、ゴブリンの腹に槍を突き刺した。
「ギャ、ギャー!」
最後に断末魔の声を上げて、ゴブリンの俺が死んでしまう。
……ウゲー、イテー。イテーよ。
ゴブリンが殺されてしまったので、並列存在スキルが解除されて、ゴブリンの俺とシャドウの俺の人格が統合される。
痛さで俺的にはのたうち回っているんだけど、しかしシャドウの本能はそんな俺の意識を全く無視して行動していた。
≪ゴブリンを捕食しました≫
本職の迷宮の掃除人らしく、ちゃんと殺されたゴブリンをモグモグして食べていた。
これでダンジョン内の殺人現場は、またしても血の跡すら残らずきれいに片づけられたことだろう。
まあ、今回殺されたのは人でなくゴブリンだけどさー。
なお、この戦闘があった間、人間2人からはシャドウである俺の存在はガン無視されていた。
シャドウって、モンスターとすら認識されてない存在なのかな?
しかし、またしてもゴブリンが死んでしまったことで、俺の視力が0にされてしまった。
(許すまじ人間。俺の仇は絶対に取ってやるからな!)
今までに判明しているステータス ()内の数字は判明した話数
―――本体
ステータス
名前 カズキ サイトウ (斎藤一樹)
種族 シャドウ
職業 迷宮の掃除人
レベル 1650
・初期スキル
捕食 (プロローグ)
吸収融合 (プロローグ)
物理攻撃無効化 (プロローグ)
影空間 (プロローグ)
・武器補正スキル
棍棒術 (プロローグ)
剣術 (プロローグ)
槍術 (プロローグ)
弓術 (プロローグ)
クリティカル (5)
毒攻撃 (プロローグ)
音波攻撃 (4)
・防御補正スキル
盾防御 (プロローグ)
・身体能力補正スキル
筋力増加 (プロローグ)
防御力増加 (プロローグ)
魔力増強 (14)
聴覚強化 (4)
嗅覚強化 (4)
・感知スキル
遠視 (5)
千里眼 (5)
万里眼 (5)
魔力気配察知 (5)
感応 (5)
・体質補正スキル
粘液 (プロローグ)
増殖 (7)
分裂 (7)
不死者 (プロローグ)
・自動回復スキル
HP自動回復 (プロローグ)
MP自動回復 (プロローグ)
MP自動完全回復 (8)
・移動補正スキル
ジャンプ (プロローグ)
影移動 (11)
影跳躍 (11)
地行術 (11)
・魔法スキル
炎魔法 (プロローグ)
氷魔法 (プロローグ)
氷魔法 (プロローグ)
風魔法 (プロローグ)
土魔法 (プロローグ)
闇魔法 (プロローグ)
回復魔法 (プロローグ)
死霊魔法 (プロローグ)
呪文短縮 (5)
無詠唱 (5)
・耐性スキル
打撃攻撃耐性 (プロローグ)
打撃攻撃無効化 (7)
斬撃攻撃耐性 (プロローグ)
炎耐性 (プロローグ)
炎攻撃無効化 (プロローグ)
水攻撃無効化 (7)
氷耐性 (プロローグ)
氷攻撃無効化 (プロローグ)
睡眠無効 (4)
恐怖耐性 (12)
恐怖無効 (12)
痛覚無効 (16)
・魔眼系スキル
魔眼・発火 (プロローグ)
魔眼・氷結 (プロローグ)
邪眼・麻痺 (13)
|邪眼・石化(ストーンアイ (13)
・オーラ系スキル
隠密 (5)
威圧 (プロローグ)
王者の覇気 (プロローグ)
闇のオーラ (13)
・指揮補正スキル
指揮 (プロローグ)
眷属支配 (プロローグ)
眷属従属 (プロローグ)
・思考スキル
並列思考 (6)
並列意思 (6)
並列存在 (6)
・捕食系スキル(15話より新設)
暴食 (プロローグ)
神食い (15)
半神食い (15)
邪神食い (15)
悪神食い (15)
・日用生活
子守り (15)
・称号スキル
転生者 (プロローグ)
階層主(80階層) (プロローグ)
異界の魔王 (プロローグ)
禁忌 (13)
背信者 (13)
大魔導師 (14)
大賢者 (14)
魔導四天王 (14)
・その他
鑑定 (プロローグ)
生命創造 (7)
咆哮 (プロローグ)
死者の咆哮 (プロローグ)
・影空間の保有アイテム
薬草 (プロローグ)
木の杖 (プロローグ)
ネクロマンサーの秘術書 (プロローグ)
ドラゴンメイル (プロローグ)
魔道金属 (プロローグ)
ネクロマンサーの呪術ローブ (10)
スケルトンナイトの鎧 (10)
エルウィンローブ (10)
赤竜のマント (10)
マグマ (10)
ドラゴンスレイヤー (12)
ゲイボウ (12)
血濡れの大鎌 (12)
土 ○○Gトン (?)




