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9 スキル『並列存在』

 説明しよう。

 並列思考、並列意思、並列存在なんていう胡散臭さ満点のスキルを獲得している(シャドウ)は、魂の乗っ取り(ソウルハック)を使用した結果、作り出した野郎の魂を乗っ取ってその体を支配することに成功した。


 ここまではよかった。

 よかったんだけど、最初に挙げたスキルが確実に影響しているようで、なんとシャドウの俺と、野郎の体を乗っ取った俺が、別々の人格に分かれて存在するようになった。

 どうなってるんだこりゃ?


「畜生、俺も人間になりてえー!」

(ハッハッハッ、いいぞこの体は。前世と違ってまだ10代の若さだ。腰痛とは無縁で、顔は脂ぎってない上に、ルックスもいい。鏡があれば顔も確認できるんだが、前世の若い時の俺ほどではないにしろ、それなりにイケメンレベルがありそうだ)

「なん……だと。クソが、ハゲちまえ、太れ、デブになれ!」

(ハッハッハ、何を言ってるのか全然わからないなー)


 さて、シャドウと人間で、別々の人格に別れてしまったけど、意識は共有しているらしい。

 人間の俺から見た周囲の光景は、シャドウ側の俺にも見えている。

 ついでに五感も微妙にリンクしているようで、人間の側の俺からも、シャドウの触覚しかない感覚を感じ取ることができた。


 とはいえ、

「体が別々になった上に、まさか同じ人間の人格が2つに分かれるとか、なんて冗談なんだ」

(そうだ、この偽物野郎がー。俺が乗っ取るつもりだった体を返しやがれー!)

「うーん、このままどっちも斎藤一樹を名乗るのもあれだよな。……よし俺はカズキの名前のままでいくから、お前のことはシャドウって呼ぶとしよう」

(ちょっと待て、俺もカズキだから、貴様のことをカズキとは認めんぞ!)

「うるさい奴だな。人間になれなかったからって、グダグダ文句を言うなよ」

(ムガーッ、腰痛なしのスマート体型になったからって、性格悪すぎだぞ!お前なんかが俺と同じ存在であるはずがない!)

「だよなー。俺もお前と同じ人間だったとは思いたくないわ。いや、今のお前って人間でなく、モンスターのシャドウだけどな」


 感覚は互いに共有しあっているものの、同族嫌悪というか、並列存在スキルがありながら、俺たち2人の相性は最悪だった。

 人間になった俺は、人間になれずにシャドウのままでいる俺を、バカにしていた。



 ところで、人間側の俺は考える。

 この野郎のステータスはどうなっていたかな?

 ここがどこか分からないけれど、まずはステータスを確認して、それから……


「あれっ?」

(どうした、人間?)

「シャドウ、大変だぞ」

(何がだ?……あっ、そういうことか)


 並列存在スキルのせいで、互いの意識もある程度共有してしまう。そのせいで互いに考えていることまで見通せた。


 さて、人間側の俺が困ったことは、ずばりシャドウだった時に利用できた鑑定スキルが使えなかったこと。


「鑑定、鑑定、鑑定ー!」

 何度も鑑定スキルを使おうとし、何も起こらないので叫び声まで上げている。

 でも、シャドウだった時には当たり前のように覗けたステータスを見ることができなかった。


(クックックッ、鑑定とはこうやって使うものだよ)

 人間の俺が戸惑っている間に、シャドウの俺はこれ見よがしに鑑定を使用する。


 その結果出てきた情報は、

≪ステータス

 名前 アリオス ラグネス

 種族 人間

 職業(クラス) 剣士(ソードマン) 

 レベル 12

 スキル

 剣術Lv2、体術Lv2、短剣術Lv1、盾防御Lv1、剥ぎ取りLv1≫


 シャドウの俺の感覚を通して、人間の俺にもその情報は共有された。


「クッ、シャドウに頼らないと自分のステータスも確認できないとか、なんだよこの屈辱感は……」

(クックックッ、人間にこのレベル1000越えのシャドウ様と同じことができるわけがなかろう。アッハッハッハッハッ)

「グヌヌヌッ、同じ人格のくせして、滅茶苦茶ムカつく」


 ソウルハックを使うまでは同一人格だったのに、シャドウと人間というまったく別の存在に分かれてしまったせいで、人間の俺とシャドウの俺の相性はひどいものだ。

 なんでこいつ、こんなに性格が悪いんだ?

 お前なんか、俺じゃねえ。


 しかし、そこで人間側の俺は少し考えた。


 瞼を閉じる。


(あ、バカ野郎。目を閉じるな。真っ暗だ。イヤダー。暗いのイヤー。せっかく太陽の光を何日か何十日か、とにかく前世以来久しぶりに見れたのに、暗いのはイヤダー!)


 効果覿面で、周りを見えなくなった途端に、シャドウの俺は慌てふためきだした。


「いい様だな。

 しょせん貴様は人間である俺様と違って、目玉のついてないただの影だ!」


 ……っていうか、人間の体になってからシャドウの体を眺めてみると、太陽の光が遮られてできる影のように、黒い姿をしている。


 ただ光を遮る物がなくても存在していて、しかもウネウネと蠢いていて、なんというかキモい。


(キモい言うな!)

「いや、かなりキモいぞ。さすがに虫ほどじゃないけど」


 俺の前世は、ゴキブリを見つけたら悲鳴を上げるし、虫なんて生物は地球上から全滅してしまえと本気で思っていた人間だ。

 キモいのは嫌だ!



 なお、シャドウは影のような姿をして、地面の上に広がっている。

 その形はまるでアメーバみたいに広がっている。

 ちょっと試しに端っこに行って体の一部分を持ち上げてみたら、体自体はものすごく薄っぺらかった。

 まるで布か紙みたいだ。


「まあ、昆虫に生まれ変わらなかっただけマシだよな。シャドウの俺」

(……うん、そこは素直に認めるわ)


 性格悪い奴だけど、意外なところで素直だった。


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