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緑の聖女は転生先を間違えられたようです~植物スキルで、それなりに楽しくスローライフをしてます  作者: 楊楊
第四章 故郷へ

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46 神聖ネフィス教国 3

 ~冒険者レッド視点~


 神聖ネフィス教国の聖都スズキタウンに来て1ヶ月が経った。本当に驚かされることばかりだ。

 魔族たちは私たちが習ったような野蛮な種族ではなかった。それどころか、私たちよりも文明が進んでいるのではないかと思ってしまう。悪く言えば人が良すぎるとは思うけどね。


 スズキタウンに到着した私たちだが、最初から魔族に受け入れられたわけではなかった。魔族たちも同じで、人間である私たちを危険な種族だと思っていたからだ。

 しかし、王であるグリューンや緑の聖女様が色々と取り計らってくれた。魔族たちと交流を深めるために聖女様の発案で、私たちは新たに開校した神官養成学校の講師をすることになった。

 難しいことを指導するのではなく、簡単な読み書きを教えたり、ちょっとした魔法を指導するものだった。


 それがきっかけで、私たちは魔族から信頼されるようになった。

 ブルーは回復魔法を生かして魔族たちの治療をしたり、ゴールドは商会でも働くようになった。ブラックは、なぜか魔族たちに訓練指導しているしね。

 私はというと、国の中枢を担う文官の仕事もしている。それにしても、国の重大事項を決める仕事にここに来たばかりの私が就くなんてと思ったが、それもすぐに納得した。そもそもの話、機密情報なんてない。


 それもそのはずだ。この国には税金がなく、公共事業なんかはすべて寄付で成り立っている。王であるグリューンも質素な暮らしをしているし、特に寄付金の使い道がない。他に集落がいくつかあるようだが、それぞれの自治に任せているので、何も口出しをしない。困ったら助けるというスタンスなので、もめ事なんて起こる余地がないのだ。


 今も各集落の代表を集めて会議を行っていたが、ものの10分で終了して宴会が始まってしまった。

 それはそうだろう。毎年恒例の視察で訪れる集落の順番を決めただけなのだから・・・


「みんな元気で何よりだ。持って行ったほうがいい物はないか?」


「酒だな。みんな自分たちで作ったサツマイモからできた火酒を楽しみにしているからな。料理は豪華なものを用意して待っているよ」

「こっちはヨル様さえいれば何もいらん。ネフィス様の神殿とは別にヨル様の(やしろ)が完成したからな」

「ウチは果実酒を多めに持って来てくれ。みんな楽しみにしている」


「だったら先に持って帰れ。フリンに用意させよう」


 そんな光景を見ていたら自然と涙が出てきた。

 私の本名はレイチェル・ワイズ。今は亡きライトール王国の地方領主の一人娘だ。ライトール王国が侵略国家オーダスト帝国の属国となったのが5年前。当初はそのまま領主を続けていたお父様は、重税に反対したことをきっかけに領主を解任された。帝都で閑職に追いやられて、飼い殺しの日々が続いている。そんな時、私に結婚話が舞い込んだ。

 集めた情報によると結婚相手は碌な奴ではなかったが、お父様は断ることができず悩んでいた。それならばと思い、私はブラックと共にお父様公認の家出をしたことが冒険者になったきっかけだ。


 今、目の前で楽しそうに酒を飲んでいる魔族たちは、幼い頃にお父様が領民たちと一緒に酒を酌み交わしていた光景を思い出させる。決して豊かな領ではなかったけど、領民との仲も良く、何度もあの日に戻りたいと思ったものだ。

 そんなことを思っていたら聖女様に声を掛けられた。


「どうしたんですか?レッドさん」

「いえ・・・少し昔のことを思い出してしまって・・・私は元領主の娘で・・・」


 聖女様は優しい。なぜか話す予定もなかった自分の過去を気づいたら話していた。


「そうだったんですね・・・辛かったでしょう?」

「はい・・・でも今は幸せです。仲間もできましたし、冒険者になってよかったと思います。それでいつかは、また父のような領主になりたいかなって思ってます。まあ、無理かもしれませんが・・・」

「だったらできる範囲でお手伝いしますよ。グリューンさんも協力してくれると思います」

「そ、そうですか・・・その時が来たらお願いします」


 その日、私は決意したのだった。



 ★★★


 今日は久しぶりにパーティーメンバーで集まって報告会をすることになった。まあ報告会と言ってもただの飲み会だけどね。

 この飲み会を主催したのは私だ。みんなに私の計画を聞いてもらおうと思ってみんなを集めた。多分、反対されると思うし、「シーカーズ」は解散になるかもしれない。


 お腹が落ち着いてきので、話を切り出そうとしたところ、突然ブルーが話を始めた。


「申し訳ないですが、私はパーティーを抜けてここで修業をしようと思っています。この町に来て、私は信仰の真の意味を理解することができました。ここで神官の資格を取り、いずれはネフィス様の教えを広げようと思っています。ですので、皆さんがこの町を離れる時がお別れの時です」


 えっ!!いきなり、そんな話をされても・・・


 そう思っていたら、今度はゴールドが話を始めた。


「俺もこの仕事が終われば、パーティーを抜けさせてもらう。実はソマリ姐さんの上司であるシャム商会長から業務提携の話を取り付けたんだ。商人として、一花咲かせようと思ってな。それとブルーはここで抜けるんだろ?俺はギルドで報奨金を貰ってからパーティーを抜けるから、ブルーの分は俺が貰っていいか?投資と思ってくれ。損はさせないぜ」

「ちょっとゴールド!!報奨金は辞退しないわよ。布教活動にはお金が必要だしね。貴方がここまで持ってきなさい。どうせ、この町で仕入れをするんでしょ?」

「流石は教会を追い出された神官様だ。がめついな・・・」


 二人がパーティーを抜けるということは、もうこのパーティーは終わりだ。

 この際、私も自分の計画を話そう。


「私にもみんなに話したいことがあるの・・・」


 私はパーティーメンバーに自分の計画を話すことにした。

 お父様が私の結婚話を断れなかったことにも関係するのだが、お父様は魔族たちから奪ったノーア荒地の領主として打診があった。ノーア荒地は以前はノーア平原と呼ばれていたのだが、作物が育たなくなり、いつしかそう呼ばれるようになった。

 帝国としては、魔族から無理やり奪った土地であるため、プライドから簡単に放棄することはできない。なので、無駄に防衛力を強化しているのだ。最近はこの防衛費が帝国の頭を悩ませている。そこで帝国は誰かに責任を被せることを思いついた。ライトール王国出身の貴族を領主に据え、防衛費を大幅に削る。それで魔族に土地を奪われても、その領主の責任にできるからだ。


 そんな理由で、ライトール王国の貴族で力の弱い男爵家のお父様に白羽の矢が立った。別にお父様でなければならないことはない。ある貴族から、私の結婚を条件にその話をなかったことにしてくれるとの申し出があったのもその頃だ。


「聖女様のお力があれば、ノーア荒地でも十分やっていけると思うのよ。まだ聖女様に話はしていないけど、元々は魔族たちの土地だし、そこを上手く交渉すればいいわ。みんなに協力を頼もうと思っていたけど、無理そうね・・・」


 私が話し終えると、ずっと黙っていたブラックが声を上げた。


「私には三人の目的が一致しているように思います。ブルーもゴールドも新しい領地で布教活動や商売を始めればいいのではないでしょうか?お嬢・・・レッドなら、税金を安くしてくれるかもしれませんしね」


「そうですね。私は構いませんよ」

「俺は税率次第だな。お嬢様、よろしくお願いしますぜ?」


 どうやら、このパーティーをしばらく解散しなくてもいいようだった。

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