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緑の聖女は転生先を間違えられたようです~植物スキルで、それなりに楽しくスローライフをしてます  作者: 楊楊
第一章 転生してスローライフ

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4 魔族の集落

 丸一日歩き続けて、やっと魔族の集落に到着した。

 一言で言うと、滅びかけの集落だ。建物はボロボロだし、住民も元気がない。やせ細っている子供たちもいる。住民の大半がゴブリナと同じゴブリン族だった。


 私たちに気づいた住民が声を上げる。


「グリューン様が帰って来られたぞ!!」

「みんな無事か!?」

「ノーア平原は奪還できたのか?」


 わらわらと住民が集まって来る。

 グリューンが指示を出す。


「皆の者、静まれ!!皆に少し話をしなければならんが、その前にまずはこれを食べろ」


 グリューンの指示で、荷車に積み込まれていたフルーツが住民に配られ、受け取った住民から美味しそうにフルーツを食べ始めた。


「旨いぞ!!」

「ノーア平原を奪還されたのだな・・・」

「あれを見てみろ。人間の女がいるぞ。捕虜かな?」


 住民がフルーツを食べ終わったところで、グリューンが話し始めた。


「悲願であったノーア平原の奪還はならなかった・・・」


 住民が一斉に絶望の表情を浮かべた。中には泣き出す者もいた。


「しかし、我らは希望を手に入れた。女神ネフィス様のお導きにより、緑の聖女殿が降臨されたのだ。紹介しよう。ミドリ・スズキ殿だ」


 住民から戸惑いの声が上がる。


「に、人間が?」

「どういうことだ?」

「騙されてるんじゃないのか?」


 住民の声を無視し、グリューンは続ける。


「ゴブリナ、説明を頼む」


「分かりました。皆さん、聞いてください。遥か昔、女神ネフィス様は私たち魔族を創造され・・・」


 遥か昔、女神ネフィスは様々な魔族を創造した。

 手先が器用で集団行動が得意なゴブリン、力が強いオーク、伝説のドラゴンなんかを生み出したそうだ。因みにグリューンは肌が緑色なだけで普通の人間のような容姿をしているが、ゴブリンの両親から生まれたらしい。こういったことは稀にあることで、能力が高く代々指導者になるみたいだった。因みに細かく分けるとホブゴブリンというゴブリンの上位種になるそうだ。


「そんな私たちに試練が訪れたのが10年前・・・」


 10年程前から世界規模で気候変動が起きたそうだ。

 それによって、農地が激減し、争いが絶えなくなり、戦闘力の低いゴブリンたちは元々住んでいたノーア平原を人間に奪われ、作物のほとんど育たないこの荒れ地に移り住んだ。当初はゴブリンだけだったが、他国などから追い出された種族も合流して、今の集落が形成されたという。

 厳しいながらも、何とか協力して頑張ってきたが年々状況は悪化する一方で、一か八か一族の存亡を懸けて、ノーア平原を奪還するために軍事行動を起こしたそうだ。


 魔族やこの集落の成り立ちがよく分かるいい話だが、住民のウケは良くない。


「また始まったよ・・・」

「ゴブリナちゃんはいい子なんだけどね」

「ネフィス様の話になると止まらなくなるんだよね」


 これまでゴブリナに接してきて、いい子なのは間違いない。

 ただ、少しズレたところがあり、女神ネフィスを崇拝している。だから、女神ネフィスに遣わされた設定の私には、最初から好意的だったんだけどね。


 空気を読んだグリューンがゴブリナの話をそれとなく軌道修正する。


「ゴブリナ、我々には時間がない。早く聖女殿の話を頼む」

「失礼しました・・・こちらの聖女様は奇跡の力をお持ちです。このフルーツも水も聖女様が生み出されたものです。さあ、聖女様!!奇跡の力をお見せください!!」


 ゴブリナが打ち合わせにないことを言い出した。

 私はグリューンに確認する。


「すまないが、ここに植えてくれ・・・」

「は、はい・・・」


 私はスキルで「水の木」と「フルーツの木」を出現させ、「成長加速」で大きくする。

 すぐに「水の木」の根本の水瓶から水が溢れ出し、「フルーツの木」に様々なフルーツが生った。赤ドラと白ドラの思いが伝わってくる。


(レベルが上がったみたいだよ)

(収穫量が増えたよ。1日に1回収穫できるよ)


 それはラッキーだ。これなら当面の食料危機を救えるかもしれない。


「1日に1回収穫できます。喧嘩しないようにみんなで分けてくださいね」


 住民たちから歓声が上がる。


「俺たちは助かったぞ!!」

「ありがとうございます、聖女様!!」

「聖女様、バンザイ!!」


 住民たちは口々に私への感謝を口にする。中には跪いて私を拝む者もいる。

 褒められ慣れていない私は、戸惑ってしまう。


「あのう・・・私のスキルは全て女神ネフィス様にいただいたものです。感謝してもらって有難いのですが、本当に感謝すべきはネフィス様だと思いますよ」


 私だって感謝してもらって悪い気はしない。

 でも、この力は女神ネフィスにもらったものだ。


「ああ・・・ネフィス様・・・ありがとうございます」

「ネフィス様は私たちを見捨てなかったのね」

「聖女様、ネフィス様、ありがとうございます」


 そんな雰囲気の中、ゴブリナが言う。


「皆さん、聖女様の髪に注目してください。私たちゴブリンと同じ緑色です。これは私たちゴブリンを・・・」


 私は髪が緑色になった以外は、鈴木みどりの容姿のままだ。それに服装も死んだ時に着ていたパンツスーツのままだ。転生といえば、美少女に生まれ変わるのが定番なのに・・・

 でも、この危機的状況なら女神ネフィスが転生を急かしたのも理解できる。女神様には女神様の事情があったのだろう。


 興奮冷めやらぬ中、グリューンに声を掛けられた。


「聖女殿、感謝する。あのまま軍事行動を継続していたらと思うとゾッとする。我も好き好んで戦争がしたいわけではないのだ。これからもよろしく頼む」

「いえいえ・・・できるだけのことはしますよ」


 その日は宴が開かれた。楽しい宴だった。

 住民も打ち解ければ、いい人ばかりだった。私はこの世界に転生させてもらった女神ネフィスに深く感謝した。

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